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裸足のわたしにとって、鳥肌がたつほど冷たい地面。無言の圧と真っ暗の闇が手を取り合い、私の周りで円を描いた。スポットライトがわたしを照らしている、ここはどこだろう。わたしは誰だろう、人はいるのか、とにかく歩こう。そうすれば見つかるはず、疑問の答えが。私が闇に足を踏み込むと、闇がわたしを避けた。
近づくな!
闇がそう言ってる気がした。スポットライトはしつこくわたしについて来る。一直線、限界まで走ってみてもからなずついてくる。
「はぁっ、はぁっ」
走り続けつつ、息を要求するわたしの声が、驚くほど響いた。わたしの声以外、音はいないんだ。とか、考えてたら硬くて長い柱にぶつかった。
「…おや?こんばんわ」突然低い声、よく見ると柱じゃなくて足だった。見上げると、知らない男と目が合った。…合ったのか?男は恐怖と不気味さを感じるほどニコニコしてて、糸目だったから、目線が合ってるのか合ってないのか分からない。わたしは後ずさりして返事。
「こ、こんばんわ」
男は変なことを言った。
「君は新しくやって来た住民」
「…え?」
なんの?どこの?それより…だれ?頭が真っ白。
男は顔を近づけ、「まあそう焦らず!」と笑みを浮かべた。男が指パッチンすると、私の横にパッとしらない男の子が現れた。「この子はイロドリソラ、略してソラ君です」男がいうソラ君を、わたしは一歩近づき、ゆっくり手を伸ばすとすり抜けた。…見るだけにしよう。イロドリソラ、知らない子だ。制服を着ている。学生?丸っこいお顔で、何箇所も外に跳ねてるボサボサな黒髪、美しい黒の瞳を髪で覆い隠していた。暗そうな子だなあ。髪を切ったら瞳が新鮮に見えるはずなのに…勿体ない。すると、男はズボンのポケットから分厚い本を取りだしてページを何枚かめくる。うわっ、中から虫の死骸が。慣れてる手つきで男は声に出し文章を読む。
ソラ君は、五歳の頃から想像力豊かでちょっぴり不思議な子でした。
顔のない壁とお喋りするのは毎日習慣。
一人が好きで、コミュニティケーションが苦手。
幼稚園児から小学生そして中学生、中一のソラ君は今でも孤独。
家族もクラスで唯一優しいあの子も、寂しそうで可哀想な子供を見る目で見てました。でも、ソラ君は全然寂しくない、なぜなら〝イマジナリーワールド〟があるから。
「解説すると、〝イマジナリーワールド〟とは、想像で創られ無限に広がる世界という意味です。君だって、私にだって、ココロの中にからなず実在してます。イマジナリーワールドの建物や広さそこにいる住民も数も、人それぞれ違います。残念なことに通常の人間は行くことはできません。ですが、想像して作ることは可能です」男は片手で本をズボンのポケットに押し込み、もう片手で指パッチンをした。すると、私が見ていたソラ君が一瞬にして消えた。この男は魔法使いなのかな?本をしまい終えて男は言う。
「イマジナリーワールドはいつでもココロの中で創れる。あの建物はダメだ、危ない!これはこうしろ、美しい建物だけ!とか言うおせっかいルールなんて存在しませんから、ソラ君が気軽に想像して創れる楽しい居場所がイマジナリーワールド」男は突然両手を広げて言った。
「そう!私と君がいる此処がまさに、ソラ君が創ったイマジナリーワールド。あなたは新しい住民です!」男の明るく陽気な声が好き通り響いた。二人の沈黙を添えて。
「…理解しました?」
「言ってることはまあ分かるけど、気になる事が三つある」「ほう」
「ここって真っ暗で不気味、わたしについてくるスポットライトもね。電気をつけるスイッチはないの?」「ありません、新しくやってきた住民が最初に目を覚ます場はここだと決まっています」「二つ目、あなたは誰?」「私は〝スドシ〟と申します。あなたの案内ガイドを務めたばかりの初心者人間です」男は笑顔を崩さず答える。
「じゃあスドシさん、三つ目。わたしはどこから来たのか、自分の名前はなんなのか全部忘れちゃって、記憶喪失みたい。何か知ってる?」「いや、知りません」「そう…」「すみませんねぇお役に立てなくて」
…じゃあわたし、これからどうすればいいの?男は察したのか、「これからどうするかは、あとで話し合いましょう」と予定を創り、真っ暗の闇に同化したドアを開けた。
「わっ!」外は、予想外の光景。思わず、わっ!と言ってしまった。奇妙でメルヘンチック…!
鮮やかなナス色に染まる空が、複数の階段で埋め尽くされていた。階段と階段の隙間から女性の笑い声が聞こえる。地面にはエスカレーター、その下に街。街と言ってもただの街ではなさそう…羽の生えたドアが群れになって空を飛んでいる、屋根が巨大な男の顔。〝色々なホコリがあります〟と書かれた看板を持つホコリ屋、道端には足の生えたブドウが横たわっている。あ、女の人がブドウを踏んじゃった。…ブドウは喜んでいた。見れば見るほどおかしくて、面白い。他にもたくさんあってワクワクしたけど。今はスドシさんについて行こう。スドシさんとエスカレーターを降りて街の入り口につく。
丈夫な岩で作られた立派な門に、門番らしき人物が壁にもたれていた。