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俺―――暁真守は今日、ばあちゃん家を訪ねることになっている。
そして今日、俺には重要な任務がある。
それは―――
死ぬということ。
俺には存在価値がない。
生きているだけで不必要な存在なんだ。
そう自覚した日から、
周りが俺を慰めようとくれる褒め言葉は、俺の心を更に締め付けるだけ。
慰めてくれる人も、一人くらいしかいないのだが――…
もう嫌なんだ。
だけどせめて死んだら、努力が報われるんじゃないか。
俺はそう思って、自殺を図った。
いや、図る。
―――俺は、父さんが座る車の席の隣、助手席に座った。
もうすぐ出発の時間だ。
やっと楽になれる。
だが俺には、少し不安なことがあった。
それは、死ぬ時の恐怖。
自分で自殺を図るというのに何を言っているのかと思うかも知れないが
死ぬということに対しての恐怖心は変わらない。
同じように死んだ人の気持ちがわかればいいが
そんなことはできやしない。
―――俺は本当に、自殺できるのだろうか。
そんな余計な不安ばかりが募っていった。
そんな中、車内にはエンジン音が鳴り響いた。
これから楽しいドライブということで、家族全員笑顔で出発を心待ちにしている。
たった一人、俺だけが 浮かない表情を浮かべていた。
気がつけば、窓の外には限りない田園が広がっていた。
ばあちゃん家は恐らくこの近く。
川のせせらぎも聞こえてきた。
その川の上には、細い橋が一本通っている。
そう。
そこから飛び降りるのだ。
ここは自殺の名スポット。
俺もみんなと一緒に、幸せになりたいから―――
―――ばあちゃん家で
「まあ真守くん、いらっしゃい!」
「お久しぶりです、お母さん」
「真守くんママ、こちらこそよ」
「お邪魔しまーす」
「ええ、入って入って!」
「お菓子も用意してあるからねぇ〜」
ばあちゃん家の玄関に入った途端、家族は賑やかになった。
次々と足を踏み入れ、リビングへと向かっていく。
俺もそれに続いて、最後にリビングに踏み込んだ。
そこからはまったりティータイム。
お菓子をつまみつつ、最近のあらゆる出来事を話して楽しんでいた。
俺はずっとクッキーを食べているだけだったけど。
しばらくして、話にも飽きてきた俺は、家族に聞き出してみる。
「俺、今から川に遊びに行ってきてもいい?」
「えっ、今?」
「うん」
「まあ………飽きてきた頃かしらね」
「そうね。行ってきていいわよ」
「くれぐれも、怪我しないように気をつけるのよ?」
「はーい」
俺は返事を返し、家を飛び出した。
ここから川までは3分もかからないほどの距離。
俺は橋まであっという間に辿り着いた。
ここは人里から少し離れた場所にある。
その境界線が、この橋といっても過言ではない。
だからここには、滅多に人がやって来ないのだ。
そりゃあ名スポットにもなるだろう。
―――そして俺は、胸に手を当てる。
今から飛ぶんだ。
深呼吸をする。
ゆっくりと息を吐く。
「……(いくぞ…)」
俺は心を無にして橋の上に乗り、恐る恐る立ち上がった。
―――そこからは早かった。
“さようなら”
俺はそう言葉を残して、飛び立った。
―――
―――
みんなありがとう
さようなら
またね―――…