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夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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西原衣都
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猫塚ルイ

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コメント
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うわあ、もうこの親子関係がぎゅってなる…!昴くんの「顔色悪い」→「無理すんな」の流れ、普段クールっぽいのにめっちゃ気遣い細かいし、希海くんの「ういちゃんがいい!」に押し切られて許すところとか人間味あって好き。で、最後の抱えて運ぶシーン…これ寝たふり羽衣子、どう反応すんだよドキドキするわ!次話まじ待ってる🔥
同居生活を始めてひと月程が経った夜、夕食を終えた後で羽衣子はキッチンで食器を洗いながら小さく息を吐いた。
(……ちょっと怠いかも)
ここ最近は新しい生活に慣れることで精一杯だった羽衣子。
当然疲れは出るだろうが弱音を吐くほどではないと思っていて、今日は早めに休もうとそのまま洗い物を続けていた羽衣子だけど、
「吾妻さん」
希海と風呂から上がった昴に声を掛けられ、肩がぴくりと跳ねる。
「はいっ」
昴の方に視線を移すと、じっと羽衣子の顔を観察するように細められる彼の視線に思わず逸らしそうになる。
「……顔色が優れないように見えますが、大丈夫ですか?」
「え、あ、大丈夫、です……」
体調が悪いことを言い当てられて驚いた羽衣子は咄嗟に「大丈夫」と口にするも、
「大丈夫そうには見えませんよ? 後片付けは私がやりますから、今日はもう休んだ方が良いです」
「でも、本当に大したことは――」
「大したことはなくても、いつもとは違う、そういうことですよね? 悪化したら困りますから、今日は休んでください」
「…………」
静かな口調で言い切られ、羽衣子は言葉を詰まらせた。
「熱は?」
「ないと思います」
「“思います”ではなく測ってください」
「はい……」
結局、押し切られる形で体温計を渡され測ると、表示された数字は微熱程度。
「……やっぱり少し熱がありますね」
「すみません」
「謝る必要は無いです。さ、早く部屋へ」
言って昴が羽衣子を部屋へ戻そうとすると、寝室から絵本を持って来た希海が、
「ういちゃん、えほんよんでー!」
羽衣子の元へ駆けて来た。
「あ、ごめんね、希海くん……今日はちょっと……」
部屋へ戻らなければならない羽衣子が断ろうと口を開きかけると、
「希海、吾妻さんは熱があるから今日はもう休むんだ。俺が読むから少し待ってなさい」
希海に羽衣子は体調が悪くて部屋で休むことを説明するも、
「やだ! パパじゃなくてういちゃんがいい!」
納得いかないのか、羽衣子の足元にしがみついて離れない。
「希海、我侭もいい加減に――」
普段希海に対して怒らない昴が怒りかけた、その時、
「あの! せめて、ソファーで休むので、絵本、読んであげてもいいですか? 朝、約束していたので……」
この場を収めようと羽衣子がソファーで休む提案をすると、
「……分かりました、それでは一冊だけ……すみませんが希海に読んでやってください。それが終わったら私が寝かしつけますので、吾妻さんは部屋で休んでください」
もうすぐ寝る時間の希海の機嫌を損ねない方が得策かと考え直した昴は、渋々羽衣子の提案に首を縦に振った。
キッチンから水道の流れる音が静かな部屋へ響く中、羽衣子は希海に絵本を読み聞かせ始めた。
柔らかな声に、希海が嬉しそうに目を輝かせる。
そんな二人の様子を昴は食器を洗いながら何度も窺っていた。
微熱程度だと本人は言っていたが、普段と比べれば明らかに顔色が悪い。
それに加えてどこかぼんやりしていて、声にも僅かに力がない。
(……やはり、早く休ませるべきだったか)
無理をさせたくない一方で、希海の機嫌を考えれば強引に引き離すのも難しかった。
昴は小さく眉を寄せながら、洗い終えた皿を棚へ戻していく。
そして片付けを終えるのとほぼ同時に、羽衣子も絵本を読み終えた。
「――おしまい」
「もういっかい!」
「え?」
ぱっと顔を上げた希海が、今度は別の絵本を取って来ようとソファーを降りかけると、キッチンから戻ってきた昴が抱き上げ、静かに口を開いた。
「希海、一冊だけの約束だっただろ?」
「えー……」
「もう寝るぞ」
昴のその言葉に、希海は不満そうに頬を膨らませる。
「やだー」
「駄目だ。行くぞ」
「希海くん、また明日ね」
「うん……」
昴には 半ば強引に連れられ、二人は寝室へ向かって歩き出した。
静かになったリビングで羽衣子は小さく息を吐く。
本当なら、そのまま自分も部屋へ戻るべきだと分かっているけれど、
(……あれ)
急に身体が重くなり、熱が上がってきたのか羽衣子は動けなくなる。
(少しだけ休んでから部屋へ戻ろう)
そう思ってソファーへ身体を預けた瞬間、瞼がゆっくり閉じていった。
それから暫くして、希海を寝かしつけた昴がリビングへ戻ってくると、ソファーには眠ってしまった羽衣子の姿があった。
「……吾妻さん?」
小さく声を掛けるが返事は無く、規則正しい寝息だけが聞こえてくる。
起こそうか一瞬迷ったものの昴はすぐに思い直した。
(辛そうだったし、起こすより運んだ方が早いか)
そして、静かにソファーへ近付くと羽衣子の身体をそっと抱き上げ、そのまま部屋へ向かって歩き出したところで、
「……ん」
昴の腕の中で羽衣子が小さく身じろぎする。
(……えっ)
ぼんやりした意識の中で自分が抱き上げられていることを理解した瞬間、驚いて飛び起きそうになるも、ここで目を覚ましてどのような反応をすれば良いか分からなかった羽衣子は必死に寝たふりを続けた。
やがて部屋へ辿り着くと昴は静かに羽衣子をベッドへ横たえ、布団を掛ける手付きまで驚くほど丁寧だった。