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第8話 晴天白日
「──普通?」
その言葉を聞いてウフツは
「はい。」
と言った。そこで私は気づいた。
『ウフツ』という名前は、『フツウ』のアナグラムだ。
───それにしてもなぜそんなに『普通』に執着しているのだろうか?
そんな疑問をぶつけようとした時、ウフツがポツリと呟いた。
「この世界は、『普通』じゃないと生きていけない。僕はそう思っていた。」
しんみりとした雰囲気で、少し空気が重くなった。
その言葉を聞き、私は聞き返した。意味がわからなかったのだ。
「…え?」
「だって、さっき見ましたよね。───この世界に『矛盾』が生じ、この世から消される様子を。」
ウフツは続けて、顔を下げながら話す。
「僕は『矛盾』が起きると消されると本能的に分かっていたんです。」
その声には私に強く訴える気持ちと、恐怖の気持ちが混じって、震えた声になっていた。
しかし、私にはそれが理解できない。
私はその気持ちをウフツにぶつけた。
「──けど!今だって生きている!消されてなんか居ない!」
ウフツは涙目になりながらこちらを見ている。
「………そうです。全部無駄だったんです。──僕の『普通』に執着していた気持ちが!!」
その言葉を聞き、心が痛くなる。
ウフツはずっと、自分を押し殺して生きていた。記憶が無いフリをして。
ウフツはこの苦痛から耐えて耐えて、こんな気味の悪い世界に適応をして行ったんだ。
しかし、私はこの世界に適応出来ていなかった。この世界が気味悪いとも思っていたし、なんなら『記録』も書いてしまった。……”この世界”を変えたくて。
そんな私にウフツの気持ちは分からない。けれど、これだけは言えるんだ。
「──でも……こうして私達は出会えたんです。」
その言葉を聞き、ウフツは
「そうですね」
と震えた声でいて、しかし笑ってもいた。
この言葉を聞き、空気が一気に軽くなった気がした───。