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MIGI♡SAKU

第9話 - 【💛＋💜】歪　-となり-

2025年04月19日

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cham

【iw】

今日は仕事の時間が合わなくて佐久間に会えなかった。

付き合いだしてからほとんど毎日会っていたから、家で過ごす１人の時間が少し寂しい。

時間をかけて口説き落として、やっと念願の恋人になれた。

いつもならなんでもない時でも連絡が来るのに、こんな時間まで音沙汰がないと何かあったのかと不安になってしまう。

俺から連絡しようとスマホを手に取った時、丁度佐久間からの着信が入った。

それだけのことに運命的なものを感じて、うきうきしながら電話に出る。

「もしもし？」

『照？急にごめんね』

普段とは全然違う遠慮がちな声も可愛い。

「ううん、声聞けて嬉しい」

今日は声を聞いていなかったから、一言声が聞けただけでも嬉しい。

これだけでも幸せなのに声を聞くと会いたくなってしまって、止まることを知らない自分の欲深さに呆れてしまう。

会いたいと伝えようとした時、俺より先に佐久間が切り出した。

『今日って会えないかな？』

こんな嬉しいことある？

同じ時に同じ事を思っていたことが嬉しくて、二つ返事で快諾した。

今は１人で外を歩いていると言うから車で迎えに行くことにして、指定された場所に着くと間もなくして佐久間が歩いてくるのが見えた。

車から降りて手を振ると、俺に気付いた佐久間が小走りで駆けてくる。

暗くて表情はよく見えないけど、嬉しそうに寄ってくる姿が子犬みたくて可愛い。

「ひかるっ！」

人通りもあるのに構わずに俺の胸に飛び付いてくる。

普段恥ずかしがってなかなか甘えてこないのに、人目を気にせずくっついてくるなんて珍しい。

頭をぽんぽんと撫でると、恥ずかしそうにありがと、と言って頭を擦り寄せてきた。

ずっとこうしていたいのをなんとか堪えて車に乗り込む。

俺の家に着くまでの間、佐久間はくだらない話をしたり歌を歌ったりノンストップで口を動かしていて、いつものことなのになんとなく違和感を感じた。

その違和感の正体は、家に入って玄関先で佐久間が抱きついてきたことですぐに分かった。

「だっこして」

甘えてくるのが嬉しくて抱きかかえて靴を脱がせていると、よく知った人物の香水の香りが鼻を掠める。

…なるほどね。

さっき抱きつかれた時は胸の位置だったから気付かなかったけど、首にしがみついている今は、微かにだけどはっきり感じる執着の匂い。

すんっと一度鼻を鳴らして、そのままリビングまで連れて行く。

「たくさん歩いて疲れたでしょ？マッサージしてあげる」

遠慮する佐久間を半ば無理矢理ソファに座らせて、佐久間を癒すための準備をする。

佐久間のために買ったフットバス、佐久間の髪と同じ色のふかふかのタオル、佐久間の好きそうな香りのアロマオイル。

喜んでくれるかなとわくわくしながら、暖かいお湯の中に希釈したオイルを混ぜていると、じっと見つめてくる視線を感じて顔を上げる。

少し離れたソファからこちらを覗き込む佐久間と目が合った。

なんでここまでしてくれるの？と言いたげな目。

口に出してくれたら佐久間のことが好きだからだよって即答するのに…

こうやって時折見せる謙虚でいじらしい所さえも可愛くて、視線の意図には気付かない振りをして優しく微笑みかけた。

「おまたせ」

佐久間の足下にフットバスを置いて、裾を捲る。

自分でやるからと言う佐久間の手を制止して、足を取ってお湯の中に入れてあげる。

「気持ちいい？」

「…うん、ありがとう」

気持ちよさそうにしている佐久間を床に座って見つめていると、こっちに来てと手招きされた。

促されるまま隣に座るとすぐに俺の肩に頭を預けてくる。

「照といると安心する」

嬉しくてにやけてしまう。

さっきまで安心できない人といたから不安なんだろう。

安心できる場所が俺の隣ってことが嬉しくて仕方ない。

甘えるのもわがままを言うのも下手くそな佐久間。

本当は甘えたくて、何でも自分を１番に優先してほしいくせに強がってしまう。

誰がお前をこんな風にしちゃったんだろうね？

でも、だからこそ俺はそんな佐久間の望みを口に出す前に全部叶えてあげる。

佐久間が俺から離れられなくなるように、欲しいものは惜しまずに全部あげる。

「マッサージするね」

佐久間の頭を撫でてから、そっと離れて佐久間の足下に座る。

温まった足をお湯から出して、ふわふわのタオルで包んであげると気持ちよさそうに目を細める。

なんでこんなに可愛いんだろう…

少しでも癒しを感じてほしくて丁寧に足を解していく。

白くて綺麗な足。

体のパーツも、顔立ちも、性格も、声も、全てが好き。

多分今日はいろんなことを考えて疲れているから、せっかく来てくれたけど無理はさせたくない。

これぐらいなら許されるかなと、小さな足を手に取って足の甲にキスをする。

「そんなとこ汚いって」

「汚くないよ、佐久間は全部綺麗」

そのまま足に頬を擦り寄せる。

「綺麗じゃないよ…」

悲しい顔しないで。

佐久間が自分自身を受け入れられなくても、俺はそんな佐久間もひっくるめて全部好きなんだから。

「綺麗だよ」

俺には佐久間しかいないんだって分かってほしい。

嫌いなところなんて１つもない。

存在ごと全部愛してる。

もう一度足にキスをすると、もう…と照れ隠しはするものの力を抜いて足を預けてくれた。

「佐久間の全部が好き、大好き」

甘えるように伝えると、それに応えるように佐久間の手が俺の頭に伸びてきて優しく髪を撫でる。

「俺も、照だけが好き」

“照だけ”

わざわざそう言うことで自分に言い聞かせている姿さえ愛しく思う。

俺のことだけを好きになろうと必死に足掻いてくれていることが嬉しい。

罪悪感なんて感じなくていいのに。

俺だって愛されることに飢えている佐久間の気持ちを利用して、今隣にいることができてるんだから。

佐久間はすぐに自分を責めちゃうから、俺が気付いてると知ったら多分離れていってしまう。

佐久間が誰を好きであろうと、佐久間の望むもの全てを与えられるのは俺しかいない。

叶わない想いごと受け止めて、本当の意味で佐久間を幸せにできるのは俺だけ。

心がどこに向いていたってこの場所を譲る気はない。

心が手に入らなくても、隣にいられるならそれだけでいい。

あいつだってそんなことは望んでないだろ？

結局はあいつも佐久間が大切で、佐久間が幸せでいられる居場所を奪うことはきっとできない。

俺達の間で揺れ動き続ける可哀想な佐久間。

俺も、あいつも、未練と罪悪感に囚われている佐久間を解放してあげるつもりはない。

苦しくなったら俺が癒してあげるから、ずっと隣にいて。

俺達が作り上げた俺達だけの狭い世界の中で、違和感を感じる暇もないくらい幸せにしてあげるね。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

足の甲へのキス：服従

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