テラーノベル
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「よし!山田の婿さん!アンタは花棒担ぎや!」
別の男が、ジンの肩を掴んで叫んだ
「は・・・はなぼう・・・?」
聞き慣れない言葉に、ジンは戸惑いながらオウム返しに呟いた
「せや!これは神輿の担ぎ棒の一番先端を担ぐ者を指し、『花のように目立つ』ちゅう意味じゃ!」
——舞台のセンターみたいなものかな——
ジンの脳裏に都会でのプレゼンテーションの光景が浮かんだ、スポットライトを浴びながら、大勢の前で話すあれと同じようなものなら——
いや、いや、いや、違う、違う、そうじゃない!全く違う―
ジンの、どの人生の経験を掘り起こしても、こんな出来事と匹敵するものは全くない
「気張れよ!山田の婿さん!」
また別の男衆にジンは肩を叩かれた、その手には容赦のない力が込められていた
「ハ・・・ハイ!」
突然ドラムロールの様な太鼓が境内中に響いた
「米吉じいさんが神楽を舞い始めたぞ!」
うおおおおおおおっ!!
「開始じゃ!開始じゃ!」
「突撃じゃ!」
ジンがみんなの声のする方を見ると、一番上の高台で金色の衣装をまとった桜の祖父、米吉がなんとも身軽に祭囃子を演奏する楽団をバックにくるくる回っている
「ええ?おじいさんなんですか?あれ?!」
米吉か被っている赤鬼の面は、太陽の下で血のように妖しく輝き、その牙が観衆を威嚇するように光っている
黒地に金糸で描かれた渦巻文様の袴が米吉じいさんの体を大きく見せる
いつものさびれた感じのヨロヨロのおじいちゃんのイメージはどこへやら、太鼓の連動に合わせて米吉が勇ましくクルクル舞うたびに、手に持っている鈴は生き物のようにうねり、袖口から垂れ下がる黄金の房飾りが激しく揺れ動いた
「うおおおおっ~~~~!」
男衆の歓声が一斉に上がる、米吉の両脚が大地を踏みしめるたびに、地面が震えるような錯覚を覚えた
一方の足には黒地に金の渦巻、もう一方には薄紅色の脚絆・・・その対比が、まるで陰と陽、破壊と創造を同時に体現しているかのようだった
太鼓の音が一層激しくなる
ドンドンドンドンッ!
米吉は八十を超えた老体とは思えない跳躍を見せた、空中で身体を捻り、着地と同時に低く構える。その瞬間、舞台全体に白い煙が立ち込めた——いや、煙ではない、神聖な何かが、この空間を満たし始めている
誠一郎がジンの耳元で叫んだ
「山田のじいさんの神降ろしが相図や!」
「始まるぞ!」
「出陣じゃ!!」
「婿さん!しっかり踏ん張れよ!」
「落としたら、一生の恥やぞ!」
そして気づけば、あっという間にジンは神輿の下に押し込まれていた
巨大なえんじ色の神輿が頭上に迫る、金色の装飾が朝日を反射して、眩しいほどに輝いている、
その時、担ぎ棒がジンの肩にドスンッと食い込んだ
コメント
2件
米吉おじいちゃんの舞いで、皆の士気が高まった✨️ 伝統のお祭りの始まり!! ジンさん花棒担ぎの大役、立派に務めてねー!ファイティン!!
お茶目な米吉おじいちゃんが〜😍神々しい✨️ この厳かな中の男たちの沸き立つ熱気しびれるわ🤭 ジンさんなら大丈夫! いったれ〜🚩