‥‥‥ん、いつの間に寝てしまっていたんやろ‥。ふと気付くと暖かな布団の中で目を覚ます。
そして、自分の身体を抱きしめている温もりに気付き‥少し上を見上げると‥
俺を両腕で抱きしめ、すやすやと眠っている祐希さんの寝顔がそこにあった‥。
いつも祐希さんの方が先に起きている事が多かったから‥滅多に見られない寝顔を‥ついマジマジと見つめてしまう‥
長い睫毛が影を落とし、薄く形の良い唇は少し半開きになり‥規則正しい寝息が聞こえる。
目を閉じている姿は普段よりも幼く見え、鼻筋の良い鼻も何だか特別にみえる気がした。
ふと、悪戯心でその鼻をムギュッと摘むと‥んっ!とちょっと祐希さんが顔をしかめる‥
フフフ‥♪起きていたら怒られるだろうなぁと思いつつ、顔をしかめた後もまたすやすやと眠りにつく祐希さんの顔をそっと眺めていた‥
‥あっ、そうだ!今日は、俺が朝食を作ろう。いつも作ってもらう事が多かった事を思い出し、そーっと布団から抜け出そうとするが‥如何せん、祐希さん自身が俺に抱き着いているので身動きが取れない‥
モゾモゾとその腕を退けるため身体を動かすと‥‥
「‥‥ん、‥‥‥」
俺の動きが伝わったのか、祐希さんの瞳が開く‥。
しかしまだ夢の中のような虚ろな表情で、数回瞬きをし‥自分の腕の中にいる俺を見つめる‥。
‥目があったように思えたが‥俺が起きている事に気づいていないようで‥
「‥らぁん‥‥‥」
普段と違う甘い声で俺の名前を呼び、チュッと額にキスをされ‥愛しそうに頬を擦り寄せてきた。
そして、まだぼんやりとした目つきで俺を見つめる祐希さんの顔は‥
信じられないぐらい甘く、今までに見たどんな表情よりも優しさで溢れていた‥
「ん‥‥らん‥」
今度は俺の唇に近づいて来て、重なるかと思った時‥ふっと祐希さんの瞳と対峙し、そこで俺が起きている事に気付いたらしく‥再度目を瞬かせ‥
「えっ?らん?起きてる?」
慌てて俺から離れる姿に、思わず笑ってしまった。
起きてるなら言ってよ‥とブツブツ呟く祐希さんがあまりにも可愛く思えたので、ごめんと伝えて今度は俺からギュッと抱きつき、頬にチュッと軽いキスをする‥すると
「‥‥ん、ここでしょ?」
頬にキスをした俺に、自分の唇を指差しして催促してくるので、愛しい唇にもキスを送る。
軽いキスのつもりだったが、すぐに舌が割り込み口腔内をまさぐられる。深くなる角度に息苦しさも感じ、離れようとするが祐希さんにしっかりと掴まれ、動きを封じられる‥
「んっ、やっ‥」
俺の動きを封じながらも、祐希さんの左手が服の下から差し入れられ‥腰のあたりを弄られる。昨夜の行為を思い出してしまい‥甘い痺れがジワジワと身体を侵食する‥
「って、まっ‥て!」
このままだとズルズルいきそうになってしまうので、全力で止めると‥
「えー、らんのケチ‥」
口を尖らせて抗議する姿は‥試合の時とはまるで別人で‥俺だけが知っているであろう、その姿が愛しく‥また夜ね♡とだけ伝えると満面の笑顔で頷いてくれた‥。
ああ‥
またこの幸せが戻ってきてくれた‥‥‥‥。
結論から言うと、食事会の翌日に勇斗からの謝罪の言葉と、本気で好きだったんだと告白を受けた‥。
無理矢理な行為には許せないと伝えたが‥これまで色んな場面で支えてくれた事には感謝すると言うと、勇斗は静かに泣いていた‥。
少し代表からも離れると‥その話は後から人づてに聞いた‥。勇斗のことだから、またきっと戻ってくるだろう‥‥‥。
エリカさんの方はあれから会っていない‥。一度勇斗と話してる時に、勇斗が連絡をし俺に謝るよう伝えていたが、断った。
もう終わったことなんだと‥‥‥。
エリカさんはあの日、祐希さんに告白したらしい‥でも、答えはNOで‥
俺を追いかけようとする祐希さんを見て、もう無理なんだと理解し‥勇斗の家まで案内したが‥そこでも諦められず詰め寄ったらしい‥だが、答えは変わらなかったみたいで泣いていたんだと‥。
エリカさんも祐希さんが本当に好きだったんだな‥。
でも、
祐希さんだけは、渡したくない‥。
それだけは‥。
0時。
数日前から降り続いた雪は‥街を銀世界へと変貌させ、イルミネーションの光も重なりキラキラと輝いていた。
今日は‥クリスマスイブだ‥。
幸せそうに横を通り過ぎるカップルを何度見送っただろうか‥‥。
今夜は練習後に撮影もあったが、それも一通り終え‥今はまだ仕事の終わらない祐希さんを待っている‥
車で待っててと言われたが、一ヶ月前に見たクリスマスツリーを眺めたくなり‥つい外に飛び出してしまった‥
近くで見ると‥圧巻の大きさに感嘆の声を漏らすも、深夜の寒さもあり‥指がかじかみ‥その手にハァーっと白くなる息を吹きかける‥。
その時‥‥。
「だーれだ?」
後ろから誰かに両目を塞がれ‥いたずらっ子のような声で囁かれる‥。
「こんな寒いのにいつまでも待たしてる薄情者かな?笑」
意地悪くそう言うと‥
「あー、そんな事言う?」
後ろから目を塞いでいた祐希さんが、ひょこっと俺の顔を覗き込み‥車で待っててって言ったんだけどな‥と恨めしそうに呟いている。
「‥祐希さんと見ようと思って‥今度いつ見れるか‥分からんから‥」
「ツリーのこと?何で?また見に来ようよ‥」
来年もその次の年も‥‥‥。
さも当たり前のようにそう言うと、祐希さんは微笑み、俺に右手を差し出す。
その右手にはキラリとシルバーリングが輝いていた‥‥‥。
もう迷わない‥‥‥‥
差し出された手に自分の手を重ねると、力強く握られ、俺の不安を溶かしていくようだった‥。
そんな俺の手にも、
シルバーリングがイルミネーションの光を受けて輝いている‥
聖なる夜‥‥。
Buon Natale
「ボンナターレ」(良いクリスマスを)
‥心の中で呟き、俺の手を引いてくれる愛しい人の為に歩きだす‥。
Ti amo(愛しています)
end
コメント
12件
初めまして…コメント失礼致します。 まじ控えめに言って最高でした…こういう小説で初めて泣いたかもしれません。ゆうとくん!後半無理やりそうになってましたが良い奴、登場人物に対してなんやこいつとかたまにキレたり情緒不安定になりながら拝見してました笑 いやぁ…最高です…読み直す…… 素敵な作品を見ることができ、本当に良かったです。ありがとうございました。
最高でーす!!
んぁああさいこうすぎた