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休み時間の喧騒が、ガラス越しに聞こえる遠い国の騒ぎのように思える。
私は、自分の席の周りに「見えない壁」を立てる作業を始めた。
それは、物理的な壁じゃない。
圧倒的な集中力と、机に広げた数冊の参考書。
そして、「お前らの幼稚な悪意に割くリソースなんて、1ミリもない。割く気もない」という、冷徹なまでの無関心。
「……ねえ、Amia。それ、何の問題?」
隣の席から、Yukiが恐る恐る、でも興味津々といった様子で声をかけてくる。
私は、シャーペンを止めて、彼女にだけ見えるようにノートを少し傾けた。
「 入試レベルの社会の歴史かな。歴史は昔から好きだったからねぇ……。ねえ、Yuki。ここは、このクソゲーを有利に進めるための『安全地帯』だよ。誰にも邪魔させない。先生の説教も、あいつらの陰口も届かないから。勉強ができるってことは、この世界で『正解』という名の武器を持つこと。武器があれば、誰も無闇に近づいてこれないでしょ?」
Yukiは、少しだけ戸惑ったあと、自分のカバンからボロボロの単語帳を取り出した。
「……私にも、その武器、持てるかな」
「持てるよ。私が教えてあげる・・・、ううん。一緒につくろうね!」
休み時間が終わる予鈴。
かつての私なら「嫌だな」と肩を落としていたその音が、今は**「宣戦布告の合図」**に聞こえた。
周囲の視線は、相変わらず冷ややかだ。
でも、私のペン先が紙の上を滑るたびに、その視線が「嘲笑」から「困惑」、そして「畏怖」へと変わっていくのがわかる。
私のセカイは桃紅色《とうこうしょく》。
私のセカイは、もう誰にも汚させない。