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数分後
キッチンの床にへたり込んだまま、マイロはそっと、自分に縋り付く騎士の背中に手を回した。
「……ルイさん。泣かないでください」
マイロの声は、恐怖を通り越して、慈愛に満ちていた。
記憶はない。
自分がなぜこのチョーカーを嵌められているのか、本当の理由は知らない。
けれど、目の前のこの「強いはずの騎士」が、自分がいなければ壊れてしまうという事実。
それが、マイロの心を奇妙な優越感と愛しさで満たしていく。
「……ごめん。……ごめん、マイロ」
「……ねえ、ルイさん。私、どこにも行きませんよ」
マイロの指が、ルイの濡れたまつ毛を優しくなぞる。
「あなたがこんなに泣くなら。……私、この檻の中から出たいなんて、もう思いませんから」
その言葉を聞いた瞬間。
ルイの肩の震えが止まる。
ゆっくりと顔を上げたルイの瞳には、まだ水色の涙が溜まったまま。
でも、その奥には、溺れる者が藁を掴むような、必死で、空虚な光が宿っていた。
「……マイロ。今、なんて……?」
ルイは、マイロの頬を両手で包み込む。
その表情は、騎士の威厳など微塵もなく、ただ捨てられることを恐れる子供のようだった。
「……私のモノに、なってくれるの……?」
「ルイ、さん……」
「君がそう言ってくれるなら、私は何だって…だから…」
マイロは、自分を「所有」しようとしているはずのルイが、今にも消えてしまいそうなほど脆く見えて。
「……はい。私でよければ、ずっと、あなたの隣にいます」