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ビジネストラスト

1 - 「寒天の告白」

♥

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2022年10月05日

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「……気持ち悪い、と思う」

そう彼が口にした瞬間、その場の空気が凍ったのを感じた。実際、丁度冷房が効き始めていて3℃ほど下がっていたと思うが。


ービジネストラストー


⚠︎︎BL表現があります。

青白、もしくは白青です。

自衛をよろしくお願いします。


それではどうぞ!



突然だが、俺には恋人がいる。

同じグループのメンバーで、優しくて、頼りがいがあって、誰よりも紳士的でかっこいい青色の彼。

「おはよう、しょう。」

「おはよ!まろちゃん。」


寝起きだからか、少しぼんやりしているけど、ブラックコーヒーを片手に俺に向かって優しく微笑む姿は、嫉妬するくらいにかっこいい。

「もしかして、ちょっと緊張してる?」

そんな彼だけど、いつもより表情が硬い気がしてここぞとばかりに突っ込んでみる。

「全然してへんわ!って言いたいとこやけど…」

「結構、しちゃってるかも笑」

へぇ、ちょっと意外やな…。いつも自信満々で怖いものなんてないと思ってたけど。なんて、恥ずかしそうに笑う彼を見て思った。

「あ、お前。なんか失礼なことかんがえとるやろ?」

「へ、?いやだって…まろちゃんが緊張するなんて珍しいやん。」

「んー…まぁ、なんて言われようと俺はお前の傍から離れないことは変わらへんから。」

「……あ、ありがと///」



俺たちが付き合い始めたのは、今から丁度1年ほど前。

当時、恋心を自覚した俺は、歳も離れてるし、家もそこまで近くないし、男同士、何よりメンバーであるいふと付き合えるだなんて全く思っていなかった。

こんな不毛な恋、さっさと辞めて活動に集中しよう。そう思ったけど、活動に専念すればするほど彼のかっこよさに惹かれていった。

このままこんな大きな感情を隠し通すのは無理だ、と感じた俺は、柄にもなく少し有名なバラ園に彼を誘い、一世一代の告白をしようとした。




その日は、まだ夏が終わったばかりだというのに息が白くなるほど寒く、寒がりな俺は既に振られムード。しまいには雪まで降ってきたもんだからたまったもんじゃない。

「ごめんね…まろちゃん。こんな日にバラ園だなんて、、ヘックシュン!」

「いや、俺は大丈夫やで?楽しいし。」

ほら、これ着ろよ。と一回り大きい彼のコートが肩にかけられた。


なんでこの人は、こんなにも優しいのだろう。この人の優しさを独り占め出来ればいいのに…あぁ、やっぱり彼のことが

「すき。」



え、俺、今なんて言った??好き?そんなの告白じゃないか。これじゃせっかく考えていた告白プランも全部台無し…

と今頃後悔しても時すでに遅く…いふは目を見開いて驚いているようだった。

「あ、ごめん。やっぱ今のは無しってことに…できひん、?」

思ったよりも弱々しく自分の声が響く。もう冗談では済まされないことも分かってる。

不甲斐なさすぎて涙が目に溜まってきた。早く何か言ってよ。もう、君には話しかけないからさ。今はすぐにでもここから逃げ出したい。



「さっき…好きって言ってたよな?」

「…言ってない。」

「いや、言ってたやん!」

「だから!言ってない!!」

言った言ってないの押し問答の末、彼は信じられないことを口にした。



「俺、嬉しかったのに…」

「は、?それって、どういう…」

いふの真剣な顔とハラハラと降る雪が妙にマッチしていて、こんな状況だけど「やっぱりイケメンはずるいな。」なんて頭をよぎる。



「俺、お前のこと好きなんやけど。」

「付き合って欲しいって思ってる。」


「お、おれも…ッ、まろちゃんのこと、、」

「好き…!」

「付き合ってくださいっ、!」


いふからの告白が衝撃的過ぎて、この後のことは実はあんまり覚えていなかったりする。だけど、嬉しくて泣きじゃくる俺を抱きしめてくれた、彼の匂いだけはしっかりと覚えている。



付き合ってからも、それなりに喧嘩したりなんだりで色々あったが、、あの日からもう1年経った。

今日は、初めてメンバーに付き合っていることを報告するために随分前から計画していた日だ。1年前のあの日とは違い、夏が終わったというのにサンサンと太陽の照りつける猛暑である。

正直不安しかないが、どんどん大きくなっていくグループ内でこういう隠し事は、いつか足枷になってしまう。さっさと言ってしまった方が後々楽だと、2人で話し合った。

いふは意外にも緊張しているようだが、初兎はあまり緊張はしていなかった。

だって、あぁ言ってくれてるからね。

『絶対に離さない。一緒にいる。』

彼はいつだってそう言って俺を励ましてくれている。俺はこの言葉をずっと信じてきた。今回も、絶対にいふだけは自分の味方なのだと思える。それほど、彼を信頼していた。



「しょにだ〜、そろそろ行くぞ〜。」

今日は、大事な話があると言ってないこハウスに集まってもらっている。こんな話を第三者の家でするのもどうかと思うが、そこはご愛嬌。

「はーい、今行く〜!」

彼の車に乗り、出発する。助手席に座って、運転している彼の横顔を盗み見る。やっぱりイケメンは何してもかっこいい。なんとなく、声も聞きたくなって話しかける。


「もし、ないちゃんが許してくれなかったらどうする?」

「そんなん、説得するしかないやん。」

「活動には絶対迷惑かけへんからって。」

俺たちが1番警戒しているのはないちゃんだった。彼はグループを最優先に考えていて、他のことは無下に斬り捨てていくストイックさがあった。俺たちが付き合っていることは、グループ活動にとってあまりいい事ではないことは分かっているため、ここの説得が1番厳しいだろうと考えていた。


「じゃあさ、りうちゃんが理解してくれなかったら?」

「大丈夫やろ。りうらかてもう立派な成人や。」

最年少のりうちゃんも、俺たちの不安材料の1つだった。ただでさえ年上ばかりの中で背伸びさせてしまっているのに、こんな異端なカップルを見せられて、どんな反応をするか、考えただけで胃が痛くなる。

「そうだよね。りうちゃんも大人だもんね。」


「じゃあ、もしだけど、もし悠くんが渋そうな顔してたら?」

「それは…俺らが今までどんな付き合いをしてきたのか、ちゃんと話して安心してもらおうや。」

悠くんだって、歌に本気になれない俺たちを認めてくれないかもしれない。優しい悠くんが嫌そうな顔をしたらどうすればいいんだろうか。


「……あと、いむく」

「お、着いたで!降りよか。」

「あ、うん。」

俺たちの共通の相方である水色の彼について話す間もなくないこハウスに到着した。やはり外は俺たちの未来を暗示するかのようにジリジリと暑く、モヤモヤとしている。

初兎は不安を少し残しながらもいふの後に続いた。



驚くべきことに、ないこハウスには既に全員集合していて、最後は俺たちだった。

「あれ?2人一緒だったんだ、珍しいね。」

「来る途中に会ったの〜?」


「いや、最初から一緒やで。」

「…最初から?」

確かに、いれいす内で俺といふがペアであることはほとんどなく、意外な組み合わせだ。そんな2人が付き合っていると知ったら、この人達はどんな反応をするんだろう。


「そう、今日は俺ら2人のことについて話したいと思って集まってもらったんや。」

心なしか震えているようにも聞こえるいふの声に、初兎にも緊張が移ってきた。

「ずっとみんなには言えてなかった事なんやけど…」

あ、やばい…本格的に緊張してきた。できることなら今すぐにでも引き返して家に帰りたい。なんて、いつかの告白の時と同じようなことを思う。


「俺たち、、俺と初兎は、付き合ってます。」

存外しっかりと響いたいふの声を聞きながら、周りの反応を伺う。みんな、突然のことに理解が追いついていないのか黙ったままだ。

「…ずっと隠しててごめんなさい、」

ここは初兎も何か言った方がいいのかと、とりあえず謝罪を口にしてみる。さすがに空気に耐えられなくなってきてギュッと目をつぶった。




「えええぇぇ、!?」

「全然知らなかった!、!」

「いつから付き合ってたの!?!?」

ハッとして顔を上げる。目を丸くして驚いているのはリーダーだった。

「えっと、1年前から…」

「1年も!?すご!めっちゃラブラブじゃん!」

「ないこは、許してくれるん…?」

不安そうにいふが尋ねた。そりゃそうだ。1番警戒していたないこが思わぬ反応をしているのだから。

「え、、?」

「許すも何も、2人の自由じゃん?」

この言葉に空気がフッと軽くなるのを感じた。良かった、認めてもらえた。いふとそっと目配せをし合って、「よかったね。」と笑い合う。


「りうらも、素敵だと思うよ。」

「お幸せにね。」

「り、りうちゃん…」

最年少とは思えない大人な言葉に涙が出そうになる。彼はもう、心配する間もなくしっかりとした大人なのだ。


「アニキは?」

「恋愛なんてしてる暇ないって思う?」

まだ俺の恋人は不安らしい。案外心配性なんだな、可愛い。でも確かに、さっきから一言も発してない悠くん。なんだか、顔も浮かないように見える。

「あぁ、そんなんお前らの好きにすればええと思うで。」

「俺はいいと思う。でも…」




「ほとけ、お前どうしたん?さっきから顔色悪いで。」

みんなの視線が我らがグループのムードメーカーであるはずの彼に注がれる。初兎は、そんな彼の言葉を聞く前から嫌な予感がしていた。できることなら、話を振らないように、気づいていないフリをしていたのに。

俺の相方兼大親友は、この話を始めた時からずっと顔を引き攣らせている。




「……気持ち悪い、と思う」

そう彼が口にした瞬間、その場の空気が凍ったのを感じた。実際、丁度冷房が効き始めていて3℃ほど下がっていたと思うが。


《つづく》

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