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この女、あの後ついでに白米を2回ぐらいおかわりした。
「食器も片付け終わったし〜、出勤ギリギリ!行ってきやっすぅ」言売
「行ってらっしゃ〜い」???
何気に馴染んでるなーこいつ。
「お嬢さん、足の具合良くなるまで安静にしときな」言売
「うん、なんかもう大丈夫」???
「そだそだ、ちとこちこい」言売
靴も履き揃え、家を出る準備も完璧だというのに振り返って俺に手招きする。
こんな状況だ、言売に限ってふざけた真似はしないだろう、何言わずとも耳を傾けてやる。
「スゥゥゥ…ゴムはつけろよっ」言売
今までの言動全てが嘘だったと思える程、心の底から出た本音…
「ブッコロス」芦兆
「え、ガチギレじゃん、逃げよ」言売
はやっ。
玄関の戸の開け閉め含めて瞬きする間もなく出ていった。
そういえばこいつ、ずる賢くて逃げ足は早いってお父さん言ってたっけ。
てか無駄に溜めた割にしょうもないし、元々男しかいねぇんだからゴムある訳ないだろって。
「あのぉ…」???
振り向くとその女性が廊下の曲がり角の壁から顔を覗かせている、まるで恐ろしいものを見た後かのように。
「なんだ?」芦兆
「あっえと、髪がぼわわーってなって、左腕が…えと、めらめら〜って血管が浮き出て…なんか怖かった」???
どうやら怒りのあまりについうっかり力をお漏らししちまったみてぇだ、ハズカチ。
彼女はこの力のことは知らないみたいだ、しかし彼女もこの力を持っているので隠すことなく説明することにする。
「これは『脈』の力、力を行使する際に体の一部に血管の模様のようなものが見えることから俺達は昔からそう呼んでいる」芦兆
「模様…?」???
「俺の場合脈の色が青いから浮き出て見えたのかも、ほら普通ならこの通りいつも通り」芦兆
何の変哲もない左腕を見せると彼女はゆっくり壁から出てくる。
「ちなみにおま………嫌じゃなかったら名前を教えてくれないか」芦兆
「私の名前、は…ツキ…月に…感じの二に夜って書いて月二夜って読むの」月二夜
意外に緊張しながらも空書きで名前の漢字まで丁寧に教えてくれた。
なんか綺麗な名前だな、どこかのお嬢様なんかな。
「分かった…月二夜、一応言うが月二夜にも俺と同じ力を持っている」芦兆
「…え!」月二夜
確認だったが、やっぱり自覚はない…か。
「ちなみにあのデカ男も持ってるし、あいつも月二夜がその力を持っていることを察している」芦兆
「えええええ…気付かなかった…見分ける方法ってあるの?」月二夜
「なんとなく」芦兆
「個人的に気になることもあるから、表出ろ」芦兆
「喧嘩?」月二夜
そういいながらも靴を履き始める。
喧嘩と言えば半分合ってるかもしれない。
近場の森に隣接する通り道、月二夜は俺の後ろを着いてくる。
「こんな所でなにするn──」月二夜
振り返り際に俺は月二夜の顔面を殴った…つもりだった。
際際で避けやがった。
その後も腹パンや足払いetc…しようとするがどれもこれも避けられる。
まるで俺の動きを予想してなかったかのような、俺の攻撃を避けたことを自覚してないような、そんな表情で避け続けている。
それでいて、ちゃんと攻撃の起動が見えている上で避けているのがわかる。
「はぁ…はぁ…ちょっと!女の子に向かっていきなり殴りかかるのはダメでしょ!」月二夜
「全部避けたのによく言うよ…」芦兆
ちなみに言売にすると普通に当たるし、その後Now Loading状態になる。
「悪かったよ、そいじゃ次は月二夜から攻撃してみろ」芦兆
「んえぇ、攻撃って言っても私喧嘩とかしたこと………」月二夜
俺は間を置くために距離を開けようと「月二夜に背を向けて」歩いた。
俺の背中は月二夜の目にどのように映っていたのだろう。
もう距離はそこそこ開いているつもりだった。
踏み出す時の音だけを残し、俺の左脇腹目掛けて回し蹴り…を、一旦避けまして。
「うわっ!おっととっと…」月二夜
勢いのあまりにブレーキをかけきれずに俺の目の前で転けそうになる。
やはり見る限り俺が言ってやるまでこの力を知らなかったのか自覚がなかったのか、まるで行動と意思が噛み合ってないように見える。
「なに…いまの…」月二夜
「さっき俺が月二夜に殴りかかった時、どう思った?」芦兆
「そりゃ…怒るし…やり返したい…と、思った」月二夜
「その些細な感情と意志に同調して脈の力が発揮されやすくなる」芦兆
「なるほど…?それが目的…?」月二夜
「いや、まぐれだ」芦兆
月二夜は俺の胸元めがけ飛び蹴りを仕掛ける。
間一髪防御は出来たものの全体重をかけた質量攻撃には慣れておらず思わず後方へ滑っていく。
「セメテシッカリ目的ヲ示シテヤッテホシカッタナァ…」月二夜
明らかに戦闘態勢になっている、不意に体が暴れ出さないように全身で必死に抑え込んでいるような構えだ。
え、もしかして俺月二夜の逆鱗に触れた?
初めての力の体験で慣れていないだろうけれども…この女そもそも素の身体能力が高いせいで慣れてないはずなのにそこら辺の脈の使い手並に強くなってしまっているんだよなぁ。
「少シ、怒リガ…抑エラレソウニ、ナイ…怪我、スルマエニ、早ク…」月二夜
脈の力に翻弄されて自我が薄れてきている。
俺は今の月二夜を見て「助けてやりたい」とは思わなかった。
逆に湧き上がるこの思いは…
「面白くなってきた」
言売以外の者と手合わせできる、何気に初めてのことで怖い気持ちもあるが奇妙な好奇心が勝っている。
あと…師匠になったみたいな感覚で少しずに乗っているのかもしれない。
俺の構えは特に決めてない、仁王立ちスタイルだ。
そして脈の力は使わずとも月二夜を制御させてやる。
「来い」芦兆
〈解説〉
・脈
…この世界の異能力。
…体の一部分で血管の模様のようなものが淡い光を放っている、この力を行使する際に目に見えるようになる。
…ついでに髪も少し逆立ち、同様の色の淡い光を放つ。
…人によって脈の発する光の色は様々。
…本人の精神の状況によって強弱される。
…脈の力の加減によっては自我を失う可能性あり。
…本人の身体能力を飛躍的に上昇させ、中には普通の人体では成しえない特殊能力を発揮するものもある。
・芦兆の家の近場の森
…一見何の変哲もない普通の杉の森だが──。
コメント
1件
「おかわり2回」からの「ゴムはつけろよ」の流れ、笑ったわw でもその後の脈の説明と戦闘練習シーンで一気にシリアスに切り替わるのが良かった。月二夜が無自覚に全回避するところ、初めて力に目覚めて自我が薄れていく感じ、すごく丁寧に描かれてた。芦兆が「面白くなってきた」って思うとこ、彼の戦闘狂っぽい素顔が出ててグッときた。次の話、月二夜がどうなるのか気になる🔥
羽海汐遠
13,131
つばのさら
88