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酷く荒れた大地に、俺は天を仰ぎながら突っ立っている。屍で飾られたひとつの道路に、俺は立っている。
赤に塗られた肌、その一部を冷たい雨が舐め取って行く。
「…………。 」
不意に視線を降ろせば、目に入るのは中身を失った仲間の死体ばかり。無数に散った命が、俺を責め立てるように転がっている。
結局、俺は何がしたかったのだろうか。 長きに渡る戦いの末に、何を得たのだろう。
………得たものなど、何も無い。ただ 俺は、傷 を負った。 抱えきれない程に深く刻まれた、傷を負った。
幾度の戦い、別れ、渇き、飢え。そして、研鑽を越えて見た景色。その先にあったのは、俺の追い求めた景色ではなかった。
望まない結末。果ての終着点で、俺は未来永劫と背負い続ける傷を負った。
全てのことの発端は俺が仲間を信用し切れなかった所からだ。
あの時、あの瞬間に、俺の奥底から彼らを想う言葉を呑み込まなければ。彼らをもっと頼っていれば。
「………未来は、変わってたのか?」
いや、何も変わらなかった。と思う。
初めから、俺は仲間を信じていなかった。 仲間という存在が邪魔で、荷物で仕方ないと感じ続けていた。
俺一人で全て上手く行く。その誤算が、俺にとっては正しい答えだと思っていた。
「………正しかったさ」
正しかった。 実際に俺一人で全てを覆せる程の力があった。仲間など要らないほどに、俺は強かった。
正しかった。 戦いに耐えきれなかった仲間は死んで行く。そのひとりひとりに気を回せる余力が俺には無かった。
けれど、間違いだった。
力があっても、いずれピンチが訪れる機会なんてこの世にありふれている。その危機を、俺は一人じゃ掻い潜れなかった。
「………なら、どうすれば良かったんだ」
どうもこうも無い。
全てはもう終わった話だ。
俺に出来る事など、ひとつもない。解決策など、とうの昔に破棄されている。……… 俺がこの手で、ゴミ箱へと突っ込んだも同然だ。
「………あぁ」
雨で濡れた地面に膝を着き、両手で涙と雨でぐしゃぐしゃになった顔を覆う。
もう、見たくない。視界にすら入れたくない。けど、視界からは消えてくれない。
それと同時に、抑えていた感情が強く溢れ出し、俺の心にヒビが入り始める。
「………あぁ、あ”あぁあ”あ”あ”あ”!! 」
喉から出る声とは思えない程に、酷く 掠れた悲鳴。
仲間の死体がゴロゴロ転がっている中、俺の方向に手を差し伸べてくれていた人間の屍がそこにはあった。
かつて俺と共に戦い、最終局面まで俺を信じた魔術師。俺は誰も信用していなかったのに、彼女だけは俺を信じ続けた。
「………なんぇ、なんでッなんで。俺じゃなかったんだッ!!この戦いは俺が始めた、俺が全ての元凶だ、なのになぜ俺はこうして生きている!!真っ先に死ぬべきは俺の方じゃないか……!!」
俺は、こんな景色が見たかった訳じゃない。
「………どんな人達であれ、彼らには夢があった。彼女たちには野望があった……それを俺は、俺が、俺のせいで!!壊れた、壊した!!」
俺は仲間を信用していない。 だからと言って、仲間が死んでいいなんて思ったことは無い。
だからこそ、俺はもう一度、俺に問う。 結局、何がしたかったのだろうか。
その答えを見つける時は、もうこの先で訪れる事は無い。
「………時間、か」
そんな俺に与えられた猶予はたかだか数秒。 地球最後の時間を有意義に使う方法は存在しない。
死んで行った仲間、命惜しさに俺の傍を離れた人達の屍を眺め続け、その記憶を脳の奥深くへと焼き付ける。
たとえ肉体が消滅しても、魂に刻み付ける。
俺の『▇▇』はもう発動しない。
これが最後だ。俺が彼らを忘れない、最後の手段だ。
「………喝采を 」
時計の破片が、世界の全てを塗り替える。
青かったと称された地球が、真っ白な光に侵食され、その形を、原型を完全に失った。
勿論、崩壊した地球に残る生物は存在しない。 最強と唄われた俺ですら、その対象となる。
―――その日、俺は俺という魂に傷を刻んだ。