テラーノベル
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2人の影が並んで、
柔らかい夕暮れの道を歩いた。
心臓の奥が、さっきのキスの余韻で
ふわふわしている。
指先がまだ熱くて、歩くたびに、
胸の奥がじんわりと甘くなる。
若井と一緒にいられる時間は、
いつもより何倍も早く過ぎていくようだ。
気づけばもう僕の家の前。
薄暗い街灯が、静かに2人を照らしていた。
僕は玄関の前で、ちょっと名残惜しくて、
それでも『じゃあ、また明日ね』と
言おうとして手を振ろうとした。
その瞬間だった。
グッ、と強い力で腰をぐいと引き寄せられる。
元貴『――わ…若井、?///』
驚いた僕の体を、
若井は躊躇いなくぎゅうっと抱きしめた。
彼の腕の中は、温かくて、頼りがいがあって、
息が少し詰まりそうなほど包まれていく。
滉斗『まだ、帰したくない』
若井の小さな声が、
僕の耳元で震えるくらいに近い。
しかも、逃げられないように、
後頭部に彼の片手がそっと添えられた。
その大きな手が僕の頭をまるごと包み込み、
ほんの少しだけ髪を撫でる感覚に
ドキドキが激しくなる。
元貴『…わ、若井――』
返事もできないうちに、
若井の唇がゆっくりと近づいてくる。
剥がれるような静けさと、
止まった世界の中で――
今までで一番、
優しくて、
甘くて、
深いキスだった。
息もできないほどに長く、唇同士が熱を分かち、
若井の指が僕の後頭部を少しだけ
きつく押し込むように包む。
心臓の音だけが、
胸の奥でどんどん響いていく。
ただそっと、何も考えられなくなった。
身体も、考えも、全部が、
若井でいっぱいになっていく。
キスがゆっくり深くなっていくごとに、
頭が真っ白になり、
若井の温度がジワジワと僕の全身に広がった。
気がつけば、僕の手も、
彼のワイシャツの背中をぎゅっと掴んで、
呼吸の仕方すら分からなくなっていた。
思わず目を開けると、世界が滲んで、
知らないうちに瞳が潤んでいた。
どうしよう―僕、こんなに好きなんだ…
キスがゆっくりと解けて、
唇がそっと離れても、
お互いの温もりは消えなかった。
若井はそのまま僕を腕の中に抱え、
『元貴の全部がめちゃくちゃ可愛い』と
低く囁く。
その言葉に僕の心はもっと震えて、
涙がまた少しだけ、
今度は嬉しさであふれそうになる。
元貴『ほんとに、もう…好きすぎて困る、///』
しゃくりあげるみたいに、
そんな言葉がこぼれた。
若井は僕の頬に残った涙を親指でそっと拭い、
『明日も会うから、』と優しく
額にキスを残して笑った。
玄関の灯りの下で、切なさと幸福が混ざって、
いつまでもその余韻に包まれていた。
僕は、まだ熱さを残した唇を
そっと指先でなぞりながら、
何度だって思う。
今夜、きっともう眠れそうにない――
それくらい、心がとろけて、
愛しさに満たされた帰り道だった。
コメント
6件
気づけばもう40話…😭 一つ一つのお話がとにかく良くて何気なく毎回読ませていただいてましたが改めて驚きました…。 これからも頑張ってください〜🥹
2回も投稿ありがとうございます😭 お互いが愛し合ってるのめちゃくちゃ伝わってくる。 続きも楽しみに待ってます♪