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次の日。


俺はさっそく魔境攻略を再開することにした。


ぎ払えー!」


そう命じると、弟のヨルを先頭に魔道士15名が『ほのお』の魔法を放つ。


ごおおおお……!!


ひとつひとつはD~Eランクの魔法だが、15発同時に繰り出される『ほのお』は、ひとつの巨大な火炎となって燃え盛る。


そんな魔法の炎の先には第二区域のボス『メタル・キャタピラー』があばれ回っていた。


この巨大幼虫型のモンスターは、単なる打撃で倒すことができない。


その甲殻ボディ金属メタルで、ひどく硬いからだ。


ただし弱点がある。


それは火系魔法で熱するとやわらかくなって守備力が弱まるという点だ。


「それ、今だ! かかれ!」


魔法部隊がめいいっぱい『ほのお』を放った後、物理攻撃部隊に攻撃命令を下した。


剣士30名、武道家14名、槍やり使い2名、怪力5名、弓士7名が一斉に集中攻撃をかける。


ワー! ワー! ワー!


なにも知らなければずっとここのボスで足止めを喰らうわけだけど、この『火であぶって柔らかくしてから攻撃する』という攻略さえ知っていればなんということもない。


メタル・キャタピラーはこの総攻撃であっけなく倒れた。


「やった! 作戦勝ちだぞ」


「さすがパンティ様だなあ」


「ああ! だてにパンティは穿いてねえぜ」


戦闘領民たちはそんなふうに俺の作戦に感心していた。


まあ、俺はゲームの通りにやっただけなんだけどな。


つーか……


「やったね! アルト」


「やったねじゃねえよ!」


俺は笑顔のノンナに怒鳴り返す。


そう。


間違えて女のパンティを穿いたままだったのをノンナに見られたのが運の尽き。


次の日にはそのウワサはダダリ領全域に広まっており、領民からも「パンティ様」と呼ばれるようになってしまったのである。


「ノンナお前、『リリアには言わないから』って、言ってたのに……」


「うん。言ってないよ? リリア


なるほど……(汗)


でもそのリリアも「そんなにパンティが好きなら言ってくれればよかったのに!」と言って、今日はふんどしではなくパンティを穿いて来ているから、結局彼女にも知れ渡っているワケだけれど……


「アルト、やったわね!」


「あ、リリア……」


ショートヘアーの弓士が白パンティのお尻をぷりっとさせて喜んでいる。


ふんどしの代わりだからスカートも穿おらず、ちょっとギョっとするな。


外でパンツまるだしになっている女子なんて可愛いはずがないという先入観があるけど、首から上もちゃんと美少女だから妙な感じだ。


「どれどれ……」


「もう。アルトのエッチ」


美少女妻の白パンティのお尻をやさしくなでてやると、嬉しそうにほおを赤らめる。


溌剌はつらつとしたお尻に白いパンツの生地がぴたっと張り付いたさわり心地は悪くないが……


「でもやっぱりリリアはふんどしが似合ってるな」


「そうかしら?」


「ああ。俺は昔から見て来たリリアのふんどしのお尻が好きなんだ」


「アルト……♡」


やれやれ。


人のウワサも75日と言うし、しばらくは『パンティ様』と呼ばれておくしかないかな。


それはそうと。


こうして魔境の第二地区を攻略したので、領民たちのジョブレベルが上がり、新たに領土を300コマ獲得した。


領土を獲得すると、領主の魔法の威力を上げることができる。


そこでコストを費やし、『亜空間(E)』を『亜空間(D)』に高めておく。


これで俺の亜空間には“おしいれ”くらいの量のアイテムを収納することができるようになった。


それから、前に狩人から進化させておいた『解体屋』というジョブが2名いるのだけれど、彼らがいれば倒したモンスターを解体して素材を獲得することができる。


今回倒したメタル・キャタピラーからは『はがね』を採ることができるはず。


そして、『素材:はがね』を手に入れれば、『ジョブ:鍛冶屋』が解放されるのだ。


俺は戦闘領民たちを居住区の方へ連れて帰って解散すると、残りのクラフター51名の中から3名選んで『鍛冶屋』に進化させた。


「うっ、なんだ? 急に鉄を打ちたくなったぞ?」


「お、オレもだ……」


「うおおお、なんでもいい。金属をくれえ!!」


あいかわらずジョブを付与したばかりはモチベがヤベえな。


俺は彼らに採れたてのはがねを渡し、『はがねのつるはし』を五本作るよう命じた。


剣を作ってしまいがちなところだが、ここはつるはしが正しい。


そう。


次の第三地区のボス『ゴーレム』を倒すためである。



◇ ◆ ◇



王都の城にて。


女王ニーナの下に、全身鎧の女騎士ナディアが報告にやって来た。


「というわけで衛兵たちの報告によると、アルトには女装趣味があるらしいです」


「は、はあ……?」


ニーナはきょとんと首をかしげて、青い瞳をぱちくりさせた。


「それが一体どういたしましたの?」


「はっ、アルトについてわかったことがあれば随時知らせよとおおせでしたので」


「そ、そうですの……」


ナディアは優秀な騎士であったが、融通が効かないのが玉にキズだと、ニーナは思った。


(それにしてもあのお方にそんなご趣味が? そう言えばちょっぴり可愛らしい顔をなさっていたかもしれませんわね。わたくしのドレスを着せたらお似合いになるかも。じゅるり……)


思考があらぬ方向へずれた。


女王ニーナは『い、いけませんわ』と頭をブンブン振る。


「そ、そんなことよりも。お庭番の報告によると、ダダリ領周辺で不穏な動きがあると聞いておりますのよ」


「不穏な動き、ですか?」


「ええ。これは極秘の情報なのですが……あの御前試合でのアルト様の様子を見て、ガゼット領とベネ領がダダリ領へ侵攻しようとしているらしいのですわ」


「なんと!」


さすがの鉄仮面の女騎士ナディアも思わず面を上げて叫ぶ。


「領土とはしょせん弱肉強食の結果。しかし……同じ王国の領主が相争うなど、わたくしは好みません」


「陛下……」


「ナディア。あなたにはしばらくダダリへ応援に行ってもらいたいのです。あなたがいるとなれば、周辺領もダダリへの侵攻を思い止まるかもしれませんもの」


そう命じると、全身鎧の女騎士はぴたりと動きを止める。


「か……かしこまりましたぁぁあああ!」


「な、ナディア?」


「ふふふ、アルトめ。今度は逃さんぞ」


やはり別の者に命じた方がよかったかも……と思った時には、すでに女騎士の姿は消え去っていた。



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