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Haru
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最近はやとの目の下のクマが酷くなってきているテレビや最近では映画にも出演、声優もしていた、
その過剰なスケジュールのせいで
睡眠時間が1時間もない
俺は流石にまずいとスタッフさんに少し相談するものの
本人がこれで良い!と言っているので…
と強くは言えないみたいだった
俺以外のメンバーも気づいている
そして今日楽屋で舜太が
いつもニコニコしているのに今日はすごく
真剣な顔で俺の隣に座る
はやとに向かって話しかけた
「はやちゃん無理してない?」
心配そうにはやとを見つめる
「…なにが?」
ぼんやりとした返事が返ってくる
俺が何か言おうとしている時
「佐野さん自分でわかってへんの?」
少し怒り口調の太智
腕を組んであからさまに不機嫌オーラがただよっている
太智隣に座っている柔太朗が
宥めるように肩を持ち
「…本当に大丈夫?」
優しく透き通った声
いつもの声がやけに沁みるように感じる
はやとに向けられた声なのに
俺にもなんだか少しだけ沁みる
でもはやとにはその声は届いておらず
ただ
虚な目をして
目の前にある花瓶を見つめていた
「大丈夫?」
俺も声をかける
横を向くも目を合わせてくれない
「ちゃんと休めてるん?」
舜太がもう一度はやとに呼びかける
はっとしたかのように
顔を上げる
少しやつれた顔にコンシーラーじゃ
隠せないレベルのくま
「…大丈夫大丈夫、へーきよ」
「いや平気じゃないでしょ明らかに」
俺はつい短気になって返してしまった
はやとにも事情があるのに
するとはやとはばっと立ち上がって
「…言ってもわかんねぇだろ」
そう言われた
はやとの声だけが響いて
楽屋の空気は重くなる
俺はわかんない、と決めつけられたのが
悔しくて
つい
「こっちの身にもなれよ」
そう返してしまった
咄嗟に口を押さえるが
静かな楽屋ではそれが通常の声と変わらないくらい響いていた
はやとの耳にもこの言葉と声が
聞こえているという事実から
目を背けたくなった
でもここで逃げたらあいつも逃げる
今はやとを見るのが怖い
こんな感情をはやとに抱くなんて
想像もつかないし抱くこともなかった
今は足が動かないほどに怖い
「…もういいわ」
そう言って楽屋から出る
がちゃん
ドアの閉まる音が重く鎖のように感じる
何も言えなかった
いや
何も言ってはいけなかった、
引き留めるのも違う
1人の時間が欲しいだろうし
でも止めないのも違う
グループの輪が乱れるから
リーダーなのに、メンバーのメンタルケアも
俺の役目のはず…
なのにどうして、
俺はみんなと話す資格もないと思い
誰かが話す前にさっと立ち上がり
はやとを追うかのように楽屋を出た
「はぁ」
楽屋の外のドアの前で立ち止まる
足が重たい
筋肉痛でもないのに
あり得ないほどに重たい
そうさせてるのは俺なのかもしれない
でも
…いやもういいか
俺はもう覚悟して
スマホを取り出し
「俺休むわ」
そう送り家へ急いだ
タクシーを呼んで車の中でぐるぐる考える
けど
正解なんて思いつかなくて
そんな自分にも嫌気がさす始末
ふと見たスマホには
すぐに返信の通知が来ていたが
もう俺はリーダーじゃない
ただの“吉田仁人”という名前のついた
人間だから
アイドルの“吉田仁人”じゃない
もういられない
家付近で降ろしてもらい少し
頭を冷やすために歩こうと思った
運転手さんにお礼とお金を渡して
車から降りる
いつもは車から見る景色も
歩いてみると
こんなにもデカくて、
優しい世界なんだな
ここだけは俺を受け入れてくれる
そんな気がした
俺は家の方向を向いて歩く
静かで森が風に揺れて
鳥が鳴いて
蝶々が俺の周りを飛んで
猫はにゃーと鳴き
暗くなった道を照らすチカチカする街灯
なんだかその全てが
優しくて心地よかった
俺の理想の世界みたいな
そんな感じがした
心地よさを味わっているうちに
家目前のところまで来た
すると
いつもはいない隣のおばあさんが
玄関前を掃除していた
いつも隣の家からは
美味しそうなご飯のいい匂いがして
たまに人の作るご飯が
恋しくなる時がある
掃除に集中したいだろうし
何より今俺には人の暖かさが
どう感じるかわからないから
通り過ぎようとした時
「おかえり」
その声に振り返るとにっこり微笑んでいる
おばあさんが
ぺこりと軽いお辞儀をして
また掃除し始めた
その温度がちょうど良くて
グッと来た
俺は勇気を出して
「ただいま」
おばあさんが俺の方に振り向く
そして同じように
軽くお辞儀をする
すると
嬉しそうな顔をしてまた掃除を始めた
俺もなんだか嬉しくなった
少しだけ心が軽くなった
足取りもさっきより重くない、
その軽い足取りで俺は玄関前まで
歩く
鍵を取り出し開ける
そして玄関を閉めて鍵も閉める
鳥の鳴き声
猫の鳴き声
風の音
街灯がチカチカする音
森の音
その全部が遮断されて
なんだか寂しくなる
でも現実に目を向けなければならない
俺は覚悟を決めて
返信メッセージを確認する
塩崎
「わかった。吉田さん無理はあかんからな」
曽野
「寂しいけどゆっくり休んでな!」
山中
「元気になってからでいいからね」
3人からのメッセージになんだか
申し訳なさと嬉しさで泣きそうになる
俺の送ったメッセージについていたのは
4既読
はやとも見たのだろう。
まぁでも
俺もあんなこと言ったし
大丈夫?なんで心配しないよな
俺はスマホを消して
カーテンを開けて
街の風景を見る
窓を開けようかと迷うけど
ここへ逃げたらまた逃げると思うから
見てるだけにした
時間を忘れて太陽が沈むのを見つめる
たまにはこういうのもいいのかもな
ゆっくり時が流れて
俺の眺めている窓の前では小学生くらいの子達が
競争で走っている
こけない?と心配して見ていると
案の定転けてしまい
泣き出す黄色のランドセルを背負った子
急いで駆け寄り絆創膏を貼ってあげる
ピンク色のランドセルを背負った子
その子が立てるように
支えてあげてる青色のランドセルを背負った子
黄色の子を宥めるように背中を撫でる
白色のランドセルを背負った子
怪我したところを撫でて痛いの飛んでけー!
をしている元気そうな
赤色のランドセルを背負った子
色合いも相まってなんだか俺らみたいに見えてきた
いつも俺が弱音を吐くたび
はやとは絆創膏みたいな傷の癒しをくれて
だいちは静かに俺を支えてくれる
じゅうたろうは背中を撫でて安心をくれる
舜太はポジティブ元気をくれる
みんなからたくさんもらったこと愛と元気
俺はそれに対して
何ができているだろうか?
なんて考えていると
その5人組の子達が手を振ってきた
俺も手を振りかえすと
「おかえり!」
と口パクで言っていた
俺は迷いなく窓を開けて
「ただいま!!!!」
と返した
さっきのおばあさんも笑っていた
子供達も笑っていた
ああそうだ
こうやって笑わせるのが俺は好きなんだ
…でもよく考えたら俺が「おかえり」って言う立場じゃないか?
まぁいいか。
子供達を見えなくなるまで窓から
手を振って
静かに窓を閉める
年代が違う俺らもここまでやってきて
楽しんできた
あの子達は
小さい頃の俺らにそっくりだった
昔に戻ったみたいなそんな感じがした
俺も小さい頃
よく転けて泣いて
いつも誰かのお世話になっていた
今も同じ
うまくいかなくて下向いてつまづいた時
手を差し伸べてくれるのは
あの4人
今度は俺が助ける番だ
ピンポーン
俺の家のチャイムが鳴る
急いでカーテンを閉めて誰か確認すると
そこには見慣れた人が立っていた
俺は黙って玄関前まで歩き
鍵を開ける
そうするとゆっくりと開く扉
そこには
今にも泣き出しそうなはやとが立っていた
顔から伝わる
“ごめん”って
黙って家の中に入れて
ソファーに座る
借りてきた猫みたいに縮こまる
いつもは大股開いて座るくせに
いつもとのギャップに少し驚きつつも
ここに俺の家に来たなら
話をしに来たということだろうと思い
はやとの隣へ座る
そこにはいつもと変わらない
はやとの温度があった
コメント
5件
おし天才だからみんなで主の家行こうか
拝読しました。すごく……刺さりました。 リーダーとしての責任感と、一人の人間としての弱さとの間で揺れる仁人さんの心情が、地の文からひしひしと伝わってきました。特に「おかえり」の場面。あのおばあさんの “温度” が、あまりにちょうどよくて、私も胸がぎゅっとなりました。 最後、借りてきた猫みたいに縮こまるはやとさんの描写も、ああ、この関係性、ちゃんと信頼で繋がってるんだな、って思えてじんわり。続き、どうなるんだろう……本当に気になります。