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健人君が轢かれたのは、デートの帰り道だった。その時、雪が降っていた。私は、今でも後悔する。どうして、あのとき、雪が降り始める前に、帰らなかったのだろうか。早く帰っていれば、彼は、生きていただろうに…。
演劇部初日。明るく…笑って…
「こんにちは!」
そこには、見学に来ていた彼がいた。彼は、何も喋らず、スマホを見ていた。先輩もいた。
「来てくれてありがとう!」
と、出迎えてくれた。
「怜ー!同じ1年が来てくれたよー!」
怜って言うんだ…。
「…興味無い。」
「仲良くしなよ〜。」
「怜。よろしく。」
「よろしく。早苗。」
「あれ…?名前、どこで知った?」
「見学会の時。」
「あー!なるほどね!」
今日は、部室の片付け。ゴミが多かった。最後の方は、やることが無くなったから、怜と話す。
「怜。」
「…何?」
「ゴミ、多かったね!」
「そうだな。重かった。」
「重かった?」
「俺、30キロより重いもの持ったことないから…。」
「え!」
非力だなぁ。からかってみるかな。
「じゃあ、乗っていい?」
「無理。」
即答。
「え〜?中学の時はしてくれた友達いたよ?」
「そう。その友達と一緒にしないでくれ。」
「じゃあ無理やり乗る。」
「やめろ。俺が転ぶ。」
「乗るよ〜。」
「だからっ」
肩に手を置き、跳ぶ。
「重…」
「おい!女子に対して重いは禁句だよ!」
「知ってる。」
「私は軽いほうだぞ?」
「急に力がかかって、重力に負けるんだよ。今は重くない。」
「一瞬なら我慢してよね。」
「つい、声に出るだけ。」
「それでも!」
「そろそろ降りてくれ。」
「はーい。」
降りる。怜はデリカシーと言うものを持ってないのかな……何か髪についてる。
「どうした?」
「髪にゴミがついてたから。」
「そうか。ありがと。でも、急に触られるとな…。」
「うん?」
「少し…恥ずい…。」
「何だって?」
聞こえなかった。
「なんでもない。」
「??」
なんて言ったんだろう。でも、久しぶりに背中に乗った…健人君は、よく乗らせてくれたなぁ。…健人君…。
「早苗。行くぞ。」
あ…
「ごめん。」
「大丈夫。」
怜は…きっと、もう、友達。無愛想だけど、よく隅にいるけど、優しい、友達。…健人君も…優しかったな…
部活が終わり、家に帰る。
「またな。早苗。」
「またね!」
…またね…か……会えるんだ。明日、また。…健人君には、もう…会えないよ……またねって、言えない…。
「…健人…君…」
私は、声を出さずに、泣いた。