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( ◜ᴗ◝ )
目が覚めると、いつもの病室で、大量の管に繋がれながら横になっていた。
窓もドアも、全てが閉め切られた暗い病室で、 規則正しい心電図の音と自身の呼吸音を聴きながら、しばらく虚空を眺めていた。
あぁ、身体中が痛い。息が苦しい。
これが『死』なのだろうか。
せめて、彼に会いたかった。
この世に居ないと分かっていても。
いや、もうすぐ会えるのかもしれない。
いつの間にかカーテンが開いていて、月明かりが差し込み足下に降り注いでいた。
開いた窓から暖かい風が吹き込んで、動かない身体と顔を撫で去った。
すると、先程の痛みと苦しさが嘘のように消えた。視界がクリアになり、意識がはっきりした。
体が軽い。スマホは、4月1日 0:00を指していた。今日はエイプリルフールだ。
外から、桜の花びらが1枚入ってきた。
桜…?
体が軽い。
嘘でもいい。
本当はどうでもいいけど、なぜか今日は無性に、
満開の桜を見たい。
…そうだ
あそこに行こう。
戦前に負けず劣らずの勢いでベッドから起き上がり、腕から全ての管を抜き、立ち上がろうとした。
…が、取り戻したのは気力のみだったようで、さすがに歩くのは難しかったらしい。
勢いよく飛び出したはいいものの、ベッドから落ちて床に倒れ込んでしまった。起き上がれない。
俺は、絶対に行かなければならないのに
理由はないけれど、ただ漠然とそう思っただけだけど、
今、この時のために今日まで頑張ってきた、そう思えるのだ。
そのためには、まず立ち上がらないといけない。
足に力が入らない。自分のものじゃないみたいだ。
車椅子…は、無理だ
ここまで….か….
「な〜にやってんの?」
「ほら、手伝ってやるよ」