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KOKO💖💫🦊
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僕は、生まれつき運が悪い。
近くにいるだけで、
嫌なことが起きる。
触れたものは、壊れる。
それが普通じゃないことくらい、
ちゃんとわかってた。
だから、触れないようにした。
誰にも。
手袋は、そのためのものだった。
お父さんも、お母さんも。
僕に触れなくなった。
それでよかった。
壊さなくて済むから。
でも。
ひとりは、少しだけ怖かった。
そんな時、お兄ちゃんだけは。
そばにいてくれた。
怖がってるのに。
それでも、離れなかった。
優しい人だと思った。
あの日。
お父様が怒鳴っていた。
理由は、いつもと同じ。
されることも。
暴言を吐かれ、暴力を振るわれ、それで許してもらえる。
けど、その日はいつもと違った。
お兄ちゃんが、止めた。
そのせいでお兄ちゃんが殴られた。
その瞬間。
初めて怒りが湧いた。
お兄ちゃんが傷つくのがとてつもなく嫌だった。
気づいたら。
手袋を外していた。
怖かった。
でも。
守りたかった。
だから、気づけば殴っていた。
全部が終わって。
静かになって。
お兄ちゃんを見た。
少しだけ、安心した。
「……これで、もう大丈夫だよ?」
本気で、そう思っていた。
でも。
違った。
知ってしまったのだ。
僕がいる限り。
お兄ちゃんは、傷つく。
あぁ、いっそ嫌ってくれたら、今すぐにでも追い出してくれたら。
お兄ちゃんと一緒に居たいなんて思わなかったのに。
そう思って聞いてしまった。
お兄ちゃんは、何も言わず、ただ歩み寄ってきた。
「来るな」
そう言ったのに。
止まらなかった。
どうして。
お兄ちゃんは、怖がりだから。僕のことなんて、怖いはずなのに。
わからなかった。
「……一人で怖がらせてる方が、もっと嫌だ」
手を、掴まれた。
終わると思った。
「やめて」
そう言ったのに。
抱きしめられた。
あたたかかった。
それが、一番怖かった。
少しして。
お兄ちゃんの手に、血が滲んだ。
小さな傷。
でも。
ちゃんと、見えた。
お兄ちゃんは、優しいから多分、隠しているつもりなんだろう。
なんでもないように、僕でなければ気づくことなんて無い程度に顔を歪ませて。
壊れてる。
僕が、壊してる。
なのに。
「ほら、大丈夫だろ」
そう言って。
隠してる。
僕のために。
傷ついてるのに。
平気なふりをして。
……ああ。
この人は。
僕のためなら。
傷つくことも。
壊れることも。
受け入れてしまう。
胸が、痛くなった。
でも。
少しだけ。
嬉しかった。
この人は、僕のために傷つくことも受け入れる。
――違う。
こんなの、違う。
でも。
止まらなかった。
服を掴む手を。
離せなかった。
このまま一緒にいたら。
僕はきっと。
慣れていく。
お兄ちゃんが傷つくことに。
壊れていくことに。
もしかしたら。
自分から、壊しにいくかもしれない。
それでも、お兄ちゃんは。
きっと受け入れてしまう。
それが。
怖い。
そんなのは、愛じゃない。
ただの、依存だ。
だから。
離れないといけない。そう思った。
愛だと思えているうちに。
これ以上。
自分を嫌いにならないために。
相談して出ていった方がいいとも思った。
でも。
言えば、止められる。
お兄ちゃんは、優しいから。
また、抱きしめる。
その優しさに触れたら。
僕は、離れられなくなる。
だから。
何も言わない。
それが。
最後の選択。
手袋を、置いた。
もう、お兄ちゃんと会わないなら、気をつける必要もない。
振り返らない。
振り返ったら。
戻ってしまうから。
歩き出す。
ひとりで。
……ねえ、お兄ちゃん。
一つだけ、聞きたかったな、
こんな僕でもまだ、
愛してくれる?