けたたましい目覚まし時計の音。
「う〜…あと、ごふん……」
朝を告げる騒音を寝ぼけまなこで止め、再び枕に顔を埋めて引きずり込まれるまま睡魔に身を委ねる。
うたた寝と朝の二度寝、これはどちらも引けを取らない気持ちよさだ。
ふと目が覚めて、幾分すっきりした身体を起こせば時計が指すのは8時。
「…遅刻だ〜!」
完全に寝過ごした。8時30分から朝の会が始まるのに。家から学校までは歩いて30分かかるし、支度や朝食に使う時間が無い。
「も〜!なんで起こしてくれなかったの!お母さん!」
「何度も起こしたわよ〜。起きなかったのはアンタ〜」
慌てて服を着替えて、流石に汚いしせめて顔だけでも洗おうと私は自分の部屋を飛び出した。
そして、洗面台に向かった所で鏡に映る自分の顔に私は絶句する。
「なに、これ……」
前髪がとんでもないことになっていた。
枕に顔を埋めて寝たからかオールバックのように癖がついて、寝返りでそれらが中心に纏まってしまったのだろうか、まるでヤシの木のようだ。どうすんのこれ…。
「も〜…時間ないのに〜…」
ちょっとブラシを通せばいいと思っていたのに、予想が外れてしまった。
洗顔と共に水で濡らしてクシを当てながらドライヤーで整える。
「…よし。行ってきます!」
「はーい、気をつけてねー」
なんとか整えられたけど、残り時間は15分。走れば何とかなるかな…なんて考えは甘いと、玄関を出た直後に私は思い知ることになる。
外は強風吹き荒れる小春日和だった。
バッサァと効果音がつきそうなほどの勢いで今しがた整えた前髪が後ろに撫でつけられる。
萎えた気持ちのまま歩き出すも、風が強すぎて走るどころじゃない。
「終わった…前髪も、時間も」
もう、ゆっくり歩いて進もう。
これは、無理だ。
「天気はいいのになぁ…」
サンサンと降り注ぐ太陽は暖かいのに強すぎる風のせいで寒いし、追い風だから尚更体が重い。地下通路があったら潜りたいくらいだ。
「終わったわ〜…ほんと…」
一際強い突風が吹く度に全て後ろに押さえつけられる前髪がうざったくてしょうがない。
かくして私は無事学校には遅刻したし、先生にしこたま怒られることになったのだった。
みんなは、目覚ましを止めたらスヌーズをかけるようにしよう。
コメント
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強風ってあったから強風オールバックしか思いつかん笑