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「次は犯罪者したいですね。医院長」白髪を靡かせながらベンチの上で眠っている彼にそう告げる
医院長と言われた男は彼女の声に答えることなく寝息を立てながら心地よく眠っている
「医院長、とろろは医院長と犯罪したいです」
「次は、次こそは」
この世界はパラパラと欠片を舞いながら少しずつ崩壊の道を歩んでいる
「医院長」
彼女は知っていた。この世界がもうすぐ終わることも自分も彼ももうこの姿で目覚めることがないことも
したいこと全部できた訳では無いが少なくとも彼がいたから救急隊を続けられた
心の中でそう思いながら少しの後悔があった
犯罪の誘いを蹴ったことじゃない、もちろんそれもあるがそれ以上のことだ
彼のやりたい道をさせてあげられなかったことだった
彼が辛そうにした時に傍にいながらとろろも頑張りますと言ったことだ
「次は、お互い好きな道を歩めますように」
世界の崩壊がここまで迫ってきた
崩壊に少し目を向けたあとに彼の顔を見つめる
いつも通り青鬼の仮面を付けている。その仮面を外して顔を近づけた
そして、触れるだけの接吻をした
きっと誰も気づいてないだろう
誰も知らずに彼女の初めてと共にこの世界は消えていった
「ふたりの秘密ね」
そう言って去っていく彼を横目に彼女は考える
今話し合っていた場所は前の病院とは違う病院で前と比べると少し離れたところにあるベンチだった
そして前と同じように2人で喋っていた
前と違うのはその会話が真っ白の医者の愚痴なんかではなくて真っ黒な道で生きようとする犯罪者だというところだ
医院長、らっだぁさんは前と比べて少しワクワクしたような目で計画を話してくれた。
とろろは今度こそ闇堕ちがしたい。彼女にも犯罪欲求はあるのだ
そんな所に元同僚で一緒に苦しみあっていた仲間から打ち上げられるその言葉はあまりにも彼女には魅力的すぎたのだ
まるで目の前で蜂蜜を垂らされているようなそんな感覚
猫麦とろろはそんな食べ物を垂らしっぱなしにできる性格ではない
だからそれを掬う事にした
前の世界で沢山我慢したのだからもういいだろう
さて!とろろは何しようかな!
彼からもう一度声かけられることを楽しみに彼女も仕事に戻ることにした
前の世界より幾分か未来に期待した目をしながら