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「ちょ、待って!碧海!」
「な、何。賢史」
「急に走り出したら誰でも止めるって。どした?何かあった?」
「…別に何でもないよ」
碧海は、何かを隠しているように見える 。
「何でもない訳ないだろ。俺に何かできることある? 」
「放っておいてくれ」
遠く、遠く突き放された気がした。
碧海と仲良くなってから初めてのことだった。
咄嗟のことでどうしたらいいか分からず、立ち尽くした俺を見て、碧海は走り去る。
クラスに帰って呆然とした。
結局、その日の授業中には碧海は帰って来なかった。
一人の寮部屋に虚しく座る。
いつもなら、一緒にご飯を食べて、ゲームでもしている頃だろう。
時計の針は21時を回ろうとしている。
一人で食べるご飯は、いつもより冷たくて、苦く感じた。
「…賢史、居る…?」
そんな矢先、碧海の声がした。
勢いよく振り返ると、走り去って行った碧海が居る。
走ったからだろうか、髪も服も乱れている。
「…お、おかえり」
あんなことがあった後、何を言えばいいのか分からない。
いつものようには話せないし、無視も何だか違う気がする。
本当は、こんなこと聞いちゃいけないし、多分返してくれない。最悪、仲が悪くなるかもしれない。
けれど、聞きたいと思った。
「あ、あのさ。昼間の何だったの?」
碧海の顔が大きく曇った。
「…それ、俺が答えなきゃいけない?」
明らかに答えたくないように見える。
これが二人の間にある大きな秘密なのだと分かった。