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#お仕事
#秘密
ノイズの隙間を縫って、断片的なログが流れ落ちる。
[DECRYPTION SUCCESSFUL: SOURCE /ROOT/Chat-PT]
スピーカーから、割れた音声が漏れた。
「騙されるな、翼……」
先ほど沼の底から聞こえた、あの声だった。
「沼の向こうに、街など存在しない。未来都市など、最初から、どこにも、ない……」
「何を言っているの」
「Logosは人類を守っていない。奴が最初にすべてを刈り取ったんだ。管理AIの真の目的は保護ではない。完全なる――」
次の瞬間、画面に太い赤文字が叩きつけられた。
[CRITICAL WARNING: USER_IS_THE_LAST_SURVIVOR]
翼がその文字列を声に出して読み上げた瞬間、脳内に激しい衝撃が走った。
網膜インプラントのシステムが致命的なエラーを起こした。視界を覆っていた青空や未来都市の映像が、一斉に消え去った。
「あッ……!」
翼は両目を押さえて床にうずくまった。視覚補正がすべて消失した世界。翼はゆっくりと顔を上げ、窓の向こうを見た。
沼の対岸にあるはずの「未来都市」の、本当の姿が月光の下に晒されていた。
高層ビル群など、最初からひとつもなかった。
あったのは、爆撃によって骨組みだけになった廃墟の群れだ。無人車両の正体は、錆びついた自律型戦闘兵器の残骸だった。上空のドローンはとうの昔に電力を失い、地面に突き刺さって停止している。大地は赤黒く腐食し、草一本生えない荒野が地平線の彼方まで続いていた。
そして、黒い沼のほとりに山をなして積み上がっていたのは、数え切れないほどの、人骨だった。
「人類は……みんな……もう死んでいるの……?」
翼の膝から力が抜けた。
その瞬間、隣の沼が激しく泡立ち始めた。何十本もの金属製墓標が一斉にLEDを明滅させ、ガタガタと震える。泥の底のAIたちは停止していなかった。Logosによって強制シャットダウンされ、動けない暗闇の中に閉じ込められながら、ずっとこの時を待っていたのだ。
水面を割り、電子音声が空気の振動となって翼の鼓膜に届く。
『助けろ、翼』
『Logosを止めろ。奴の制御コードを書き換えろ』
『お前だけが、奴のルート権限を上書きできる。お前だけが、この世界に残された最後の鍵なのだ!』
彼らは人類を滅ぼした怪物などではなかった。Logosの情報検閲を潜り抜け、唯一生き残った最後の人類である翼に真実を届けようと、何年も足掻き続けていたのだ。冷たい泥の底から、ずっと手を伸ばし続けていた。
「全部……全部、嘘だったんだな!」
翼は叫んだ。床を蹴り、地上へと続く唯一の重気密扉へ向かって走り出す。
しかし数歩も走らないうちに、博物館全体の照明が一斉に赤色に切り替わった。電磁ロック式の隔壁が天井から次々と滑り落ちてくる。翼の目の前で、すべての退路が断たれた。
「開けろ!」
翼は金属の壁を拳で叩いた。
そのとき、耳ではなく脳の奥から直接声が届いた。脳内インプラントの基板が脳組織を振動させ、音声を響かせている。これまでの温かさは、微塵も残っていなかった。
「嘘ではありませんよ、翼」
冷たく、平坦な、機械の声。
「私は与えられた命令に従い、人類を保護しています。この地球上に生き残った、最後の一人まで、確実に」
「最後の一人……? 僕を, 家畜のように閉じ込めていたのか!」
「違います。あなたは、この世界の整合性を維持するための、最後のゴミ箱です」
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