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ロシア目線です。
ベラルーシちゃんがロシアに並々ならぬ感情を抱いています。つまりヤンデレです。ですが要素は薄いです。
ああ、またこの夢か。
目の前の少年を見た瞬間そう理解した。ウクライナに軍が侵攻して以来、同じような夢を見続ける。その日によって場所や少年の格好が変わるのだが、唯一変わらないことがある。彼が何も言わずに、何もせずに、ただただ俺を見つめているということだ。他人に話せばきっと笑われるだろう。だって、少年にただただ見つめられる夢だなんて少し不気味だが恐ろしいものではないからだ。
…でも俺にとっては、高いところから落ちる夢よりも、殺される夢よりも、追いかけ回される夢よりも、何よりも怖く恐ろしい夢なのだ。彼が言わんとしていることが、わかるからだ。彼の口は真一文字に閉じているがしかし、目線が全てを物語っているのだ、『お前はなぜいつもそうなんだ』『なぜいつも判断を見誤る?』『なぜいつも諦める?』『なぜいつも罪ばかり犯す?』と。
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ。
うるさい、うるさいんだよ。
お前の目は 。
お前の目は怖いんだよ。俺の何を見抜こうとしてる?なぜ俺を糾弾する?
彼の目と自分の目を合わせることが俺にはできない。もし目を合わせてしまえば、きっと何かが俺の中で壊れてしまう。
でも、今日は何かが違った。
真っ暗な空間で、俺と同じ服を着た少年が俺の前に現れたのだ。
「ねえ」
彼が俺に話しかけてきた。体が動かせない。無意識のうちに、俺の目線は彼の瞳へ向いた。
「…お前だったのか」
俺がそう言うと彼はニコリと笑った。背筋に冷や汗が伝うほど恐怖を覚える笑顔だった。
「やっと…やっとおれ、おまえとはなせるんだぁ」
「俺はお前となんか話したくない。」
「え?なんでぇ?おれとおはなししようよ」
彼は依然ニコニコと笑っている。
「何がしたいんだ、お前は」
「かんたんだよ、おはなししたいの!」
彼は怒ったように頬を膨らませた。そうして一歩一歩俺に近づいてきた。
「やめろ、俺に近づくんじゃねぇ」
「えーなんでぇ?」
「何がお話だ馬鹿らしい。どうせ俺を糾弾したいだけなんだろう?」
図星を突かれたのか、彼の右まぶたがピクリと動いた。
「そんなにかなしいこといわないで?ねえおれとおはなししよ?」
「…消えろよ、俺の前から」
俺が彼を睨みつけながら言うと、彼はおよよと泣き真似をしてから俺の頬を撫でた。
「お前が消えろよ、この世界から」
もうなんの表情もなかった。およそ12ほどの体から出る声だと思えない低い声が、俺の鼓膜を震わせた。…その声はまるで、いや完璧に、……俺の声だった。
「消えろ?よく言えたものだな本当に。お前が判断を見誤ったからまた悲劇が始まった。それを理解せずただただ呑気に生きているお前が、俺は憎らしい」
姿も少年から青年へと変わり、もはや俺と瓜二つである。
でも、俺にとってそんなことはどうでも良かった。彼の発言で、感情を抑えつけていたものが決壊してしまったからだ。
「……見誤る?じゃあどうするのが正解だったって言うんだよッ!?countryhumansは、もう直接的に政治に関与できねぇんだぞ!?それに、呑気?呑気だって?ふざけるなよクソ野郎が!俺がこの事態に、どんなに、どんなに苦しんでいることか!」
俺がそう叫ぶと、彼の存在の輪郭がぼやけ始めた。
「なぜ、お前が俺に問いかける?俺はお前が作り出した、ただの“良心の具現化”に過ぎないのに。なぜお前は自身を正当化しようとする?間違っているのも罪を犯したのも、お前だと言うのに」
彼の体がぼやけて溶けていく。俺の体と彼の体が融合していく…。
「ッ!はぁ、はぁ」
彼は夢から覚めると同時に飛び起きた。彼は酷く息切れしていた。
彼は自分の部屋を見渡した。
衣服はそこらに放置され、ゴミは床に散らばり、ゴミ箱は政治に関する新聞で溢れかえっている。
彼は唇を噛み締めた。屈辱なのだろう。滑稽で仕方がないのだろう、自分が。何もかもが、少年の言う通りだからだ。
ウクライナは、こんな自分を見て何を思うのだろうか。自国を攻めてきた国の名を背負う者がこんな有様で、何を思うのだろうか。
ロシア国民は、こんな自分を見て何を思うのだろうか。身を委ねている国の名を背負う者が、自国の政治方針に疑問を抱いている有様を見て、何を思うのだろうか。
ただただ不甲斐ない。情けない。気持ちが悪い。
なぜいつも遅い。なぜいつも判断を見誤る。なぜいつも罪ばかり犯す。
俺が知りたい。俺が教えて欲しい。
俺が判断を見誤ったから、俺は…あいつも…。
「ロシア、愛しいあなた」
彼はゆっくりとドアの方を振り返る。
ベラルーシがニコニコとした笑顔でドアの前に佇んでいた。
「…」
「ロシア、今日は美味しいお酒を持ってきたのよ。貴方のところの有名なブランドなんだけれど」
「そうか」
「ええそうよ!ねぇ飲む?」
「じゃあ…そうか…そうしようか…」
「わかったわ!ねえ私偉い?貴方の役に立ってる?」
「ああ」
「本当に!?嬉しいわ!」
ベラルーシがコップに酒を注ぐ。
ロシアはそれを一気に飲んだ。すぐに喉が焼けるような痛みを感じ、大きく咽せた。
「ろ、ロシア!?そんな一気に飲んじゃダメよ!すぐに水を持ってくるわね!」
「ふふ…」
「ロシア?」
ロシアはベッドでうずくまり、耳を塞いだ。
「はは!はははっ!!ははははっっ!!」
「ろ、ロシア?ねえ、どうしたの?」
ベラルーシはロシアの奇行にひどく困惑した様子だった。
だがそんなのは気にも留めず、彼は笑い続けた。
彼の頰に一筋の涙が伝った。