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⬛︎第1章 深まる複雑心
新学期が始まり、2人の日常は変わらずすぎていく。しかし、 朝、翠架を起こす千秋の声は以前よりも密着して囁くようになった。
登校中も、繋いだ手に力を込め、翠架の指先に何度もキスを落とす。翠架はそれを千秋の愛情表現と受け止めたが、時折、千秋の視線に宿る熱い執着に、戸惑いを覚えることもあった。
◇
ある日の放課後、俺が所属するバスケ部の練習中。顧問の先生が今週末の練習試合の相手の偵察に行くように指示した。めんどくさぁ…
不意に後ろから、大好きな声が聞こえてきた。
「すい、練習おつかれ。喉乾いたろ?」
千秋は俺のボトルを取り上げ、自分のタオルでボトルの口を丁寧に拭いた。そして、耳元で囁かれた。
「他の奴らが触ったやつ、そのまま飲ませたくないし。」
その言葉に俺は驚いた。千秋の目には、ほんの少しの嫉妬と、そして俺への独占欲が宿っているのが見て取れた。千秋の独占欲を露わにした言動に、心地良さと同時に少しの息苦しさを感じた。
「…千秋ってたまに変なとこあるよな。」
俺は苦笑いも混ぜつつ、千秋からは離れない。千秋はそんな俺を抱きしめ、満足気に微笑んだ。
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