テラーノベル
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5:「DICE 2-2 to Aether HQ, request bogey-dope!!」
5:「I repeat, request bogey-dope!!」
Ifが咄嗟に、本部にそう問いかける。
圧倒的不均衡の戦場に切り札として投入されたそれは間違いなく、彼の戦闘意欲とさらなる危機感を掻き立てるに十分だった。
『Aether HQ to DICE, target position 0-3-0, 300 nautical-mile…』
5:「Roger that!!」
4:「いふお前国際無線言語の統一は20年前に廃止されたんじゃ__」
5:「言うとる場合か!!どうするつもりだ小隊長!?」
その「何か」は遠方で確かに武器を再び構え、2度目のチャンスを淡々と狙っていた。
4:「クソ……この距離じゃ手が出ない!!狙撃を回避しつつ予定通り目標を排除、作戦領域から撤退する!!」
4:「割り込んできたビックリドッキリメカの排除までは依頼内容に入ってないからな!?」
戦場は明らかに混迷の様相を見せ始めるも__ヒット。アンド・アウェイ。目標をセンターに捉え、引き金を引く。より繊細に、より確実に。
そうするうちにも、次の攻撃が遠距離から彼ら3人に目を光らせていた。
『攻撃効果確認、1番砲塔、次発装填!!』
『『カフィードラ』2番砲塔スーパーキャパシタ、蓄電100パーセント!!』
『照準補正完了!!撃ちー方始めー!!』
3機は依然として艦隊の殲滅に動いていた。目標を片付けミッションを達成し帰還する__無論、この状況のDICE 2小隊にできることはそれだけなのだから。
希薄な弾幕が、未だ彼らの機影を追い続けていた。
5:「いったい何なんやあれは__!?」
4:「遠方より強力なエネルギー反応!!」
4:「次来るぞ!!回避、回避!!」
遠方、一閃。
直後、再び3本の太い光条が3機の間を突き抜ける__いや、青白いレーザーはちょうど悠佑の「富嶽」の進行方向左数百メートルほどを僅差で通過した。
6:「っ危ないなほんま!?」
6:「邪魔しやがってよ__!!」
彼の機体は依然弾薬をばら撒き、大口径グレネードの照準を艦隊へ向けていたがしかし__。
僕の予想が正しければ。
『一番足の遅い奴を狙え!!』
『あくまでこれは『パンテオン』の実戦投入試験だ!!1発でも当てればいい!!』
『蓄電20%、『カフィードラ』発射準備、イニシエート・ローディング!!』
TGT、の赤い文字は確かに近づいていた。戦車を満載した揚陸艦__距離800m。
ロックオンサイトのちょうど真ん中に揚陸艦を捉え、ありったけの力を込めてトリガーを引く。拡散グレネードキャノンの榴弾が真っ直ぐターゲットに向けて発射される__空中で分裂した発射体は数発が海中にそのまま飲み込まれたものの、中央の榴弾が揚陸艦の先端に命中する。
4:「クソ……まだ足りないか、!?」
『大口径弾、急速接近!!』
『前衛艦隊と『パンテオン』の弾幕を潜り抜けたのか!?奴ら本当に人間なのか!?』
続いてプラズマミサイルを打ち上げ、着弾を待つ間にアサルトライフルで陸上兵器を満載した巨大な船に穴を開ける。
対空兵器はライフル弾に破壊され、上方から降りかかってくる高熱のプラズマ攻撃になすすべなく、紫の閃光が構造物をドロドロと溶かすが__。
4:「これだけ叩けば十分だろう__揚陸艦、1隻破壊」
4:「また来るぞ!!方位030、攻撃パターン確認!!」
『照準補正よし、100%!!』
遠方のレーザー砲塔は未だ目を光らせている。
そう、最も動きの遅い「彼」に__
『撃ちー方始めー!!』
5:「悠佑、避けろ!!!!」
6:「ぐぅっっ、!!!」
ズシュぅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!!!
6:「っ!!」
レーザー狙撃、3本の光条が再び彼らを襲う。
いや__その照準は間違いなく、部隊左翼に展開する「富嶽」だけを狙っているに相違なかった。
5:「悠佑無事か!?」
6:「エネルギー干渉が……っ!!」
5:「__無事ならそう言え!!」
6:「あんなふざけたスナイパーにやられる富嶽やない!!」
彼のタンク機体はありったけの弾丸を揚陸艦に対して投射。背部兵装の10連ミサイルが次々と1つの船に襲いかかる中、全てを吹き飛ばす大型グレネード弾が艦の土手っ腹に着弾。
軽く数十メートル上に持ち上げられた「鉄屑」はそのまま、レーザー狙撃の光熱冷めやらぬ海面に叩きつけられ飲み込まれていった。
4:「残り一隻!!」
5:「”__Gotcha”」
混沌の戦場。勝敗を最後に決めたのは”Blue Moon”だった。左手に装備したレーザーブレードの光刃を長く大きく展開し、そのまま機体ごと水平に一回転。中身の戦闘車ごと横に真っ二つにぶった斬った。
5:「Kill confirm」
4:「揚陸艦及び巡洋艦の全艦撃沈を確認!!」
5:「DICE 2-1よりエーテル作戦司令、作戦終了帰投する!!文句は無いな!?!?」
目的は達せられた。
あとは取り巻きの小型艦艇が何隻か浮いているが__あの狙撃に晒されたこの環境下で、「追加報酬」に目をくらませている余裕は一切ない。
4:「帰還回収シーケンス開始!!さっさとズラかるぞ!!」
僕は管理端末から「作戦終了」を選択。基地に帰る。
こんな戦場、2度とごめんだ。
3機はほぼ同時に180度進路を変え、作戦領域外へ全速力でブーストを噴かし始める。
『3機で艦隊がほぼ全滅だと!?』
『『カフィードラ』はどうした!?初戦で戦果0なんて報告は出来ないぞ!!』
『出力引き上げ、1番2番チャージシーケンスに切り替え!!』
『意地でも撃ち落とせ!!』
今頃敵は大混乱だろう。エーテルの司令も俺たちの圧倒的な奇襲能力を買ってこんな依頼を出してきているのだ。
この世界は所詮信頼が全て__
5:「レーザー狙撃、来るぞ!!」
そう、地獄はここからだった。
今の僕たちは、完全に敵に背中を晒している。言い換えれば、敵の攻撃を目視で視認できない状態にある。
そんな状態で被弾ゼロなど、可能だろうか。
僕は、考えるより前に操縦桿を引きずっていた。
5:「待て、様子が___」
否。
バリバリバリバリバリぃぃぃぃぃぃっっっっっ!!!!!!
視界が真っ白に染まる。
これまでとは違う。
とてつもない轟音、閃光__。
脳裏に浮かぶ「死」の文字。
しかし、カメラを介した視界は徐々に回復し、やはり高速で過ぎ去る海面が未だ見えていた。
5:「Negative contact!! DICE 2-3 通信途絶!!」
僕を正気に引き摺り戻したのは、Ifの叫ぶような声だった。どうやら彼は生きているようだがしかし__。
通信…途絶……!?
常に回線を開いているDICE小隊にとって、相互通信の途絶はすなわち。死を意味する。
4:「悠佑!?馬鹿な!?」
5:「God__damnit!!」
いや__。
レーダー上の反応は未だアクティブだ。
4:「『富嶽』プリズム反応健在!!あいつはまだ生きてる!!」
足止めを食らった2人は回線の感度を最大に高め、彼の声が再び聞こえるのを固唾を飲んで見守った。
作戦領域離脱まで、残り3万2千メートル__
6:「__n配すんna!!kの程度じゃ死なんわ、俺と『富嶽』はよァ!!!」
ノイズ混じりの回線から回復してくる彼の声__やはりな。彼は生きていた。
しかし__戦場は冷酷。数秒ぶりの再会がこんなに嬉しいものかと喜ぶ間もなく、次の攻撃は彼らを無慈悲に狙っている。
4:「悠佑!!被害状況を!?」
6:「あれなんや?頭部パーツと胴体パーツのちょーど間のトコでレーザーにスッパリ逝かれてもた」
6:「かろうじてブースターとスタビライザーは生きとるが、カメラ映像とスキャンが完全に死んでる」
「目」を奪われたままとにかく前進する彼の機体にゆっくりと接近し、被害状況を目視で確認する。
__確かに、巨大なキャタピラに支えられた彼の重量機体は胴体より上の部分、頭部パーツと両腕部の上半分が焼き切れ爛れていた。
5:「胴体についてる予備カメラの接続はどうなんや!?」
6:「試しちゃいるがアビオニクスも若干喰われとる、推力制御も効かんなってきた、クソ!!」
4:「とにかく前進し続けろ!!」
俺はそう叫ぶことしかできなかった。とにかく戦域を離脱し、あの化け物の射程を抜ける。それ以外に、もはやできることはない。
圧倒的堅牢さを誇る重量フレーム機体「富嶽」はしかしあの化け物の前に手負いとなるも、未だパイロットを生きて帰そうと懸命に黒い海面を蹴る。
『命中、攻撃効果確認』
『敵ヴァリアント、なおも東進中!!』
『どんだけしぶといんだ奴らは!?』
どう考えても、黒煙を吐きながら僕の横を並走する黄色と黒の機体は、あと10分と持ちそうになかった。
4:「DICE 2-1から母艦『エンタープライズ』へ、通信聴こえるか!!」
1:『__こちらエンタープライズ りうらからDICE 2-1、どうした!?』
4:「DICE 2-3の損傷甚大、正体不明の攻撃を受けた!!」
4:「現在作戦領域から撤退中、救助部隊と修復システムの準備を!!」
1:『!?__了解した』
遥か地平線の向こうからのレーザー狙撃は、背を向けて逃げ続ける彼らを執拗に追跡していた。そう、文字通り彼らの首を切り落とすまで。
『次発装填完了!!』
『敵も弱ってるはずだ!!連続射撃でトドメをさせ!!』
『目標、間も無く射程外へ離脱します!!』
コックピットのレーダー画面、作戦領域離脱までの数字は着実にカウントダウンしていた。3機は手に汗握りながら、必死に操縦桿を、機体を前へ前へと押し進める。
4:「作戦領域離脱まで、あと3000m!!」
5:「もうちょいの辛抱や!!」
6:「頼む、ええ子やから耐えてくれ『富嶽』__!!」
5:「にしたってあの遠距離でよく光波発散せぇへんな__」
6:「まろは呑気でええのぉ、っ!!」
後ろの空気を蹴り飛ばし、強く推進させるブースターの高熱。新資源「プリズム」は胴体後部で運動エネルギー機能に変換され、青白い炎となって吐き出された。
『『カフィードラ』連続射撃、全門3連射!!』
『主砲18連 撃ちー方始めーー!!!』
ただ海中に沈んでいく敵艦艇のわずかな瓦礫だけを映し出すレーダー画面に、微かな電波干渉のノイズが入る。それは__あの強力なエネルギー光線が、未だこちらに照準しているという証であり。
4:「来るぞ!!」
ズシュぅぅっっ!!!ズシュぅぅっっ!!!ズシュぅぅっっ!!!
進行方向右側に、全力でブーストを呆気回避する。操縦桿を握る手は、もはや感覚を失っていた。これまでにもハードな戦場をいくつも経験はしてきたものの、ここまでの化け物に食われる感覚は人生で初めてだ。
そして、それはここにいる3名全員であろう。
その上視界を完全に奪われた悠佑となれば__。
ズシュぅぅっっ!!!ズシュぅぅっっ!!!ズシュぅぅっっ!!!
6:「ちくしょうちくしょう!?!?なんて奴らや、っ!?!?」
4:「悠佑行けるか!?」
6:「あぁ何とかな、っ!!!」
1発ごとに2本の光条が、後方からこちらを墜とそうと照準している。
ズシュぅぅっっ!!!ズシュぅぅっっ!!!ズシュぅぅっっ!!!
4:「作戦領域離脱まで5秒!!」
その5秒は、無限にも感じられる長さであった。4、3__カウントダウンはゆっくりと、着実に進んでいる。
5秒後。
3機はほぼ同時に、作戦領域の境界線を超えた。
4:「DICE 2、全機の作戦領域離脱を確認」
5:「間一髪だったな__」
6:「__なぁに、ヴァリアントのパーツなんてまた買えばええ…ただでさえ嵩む弾薬費に痛い出費やけどな、命には替えられんわ」
6:「…それより、これから俺らは定期的にアレに付け狙われんのか?」
5:「さぁ、次会うときは味方かもしれんで」
感情がぐちゃぐちゃだ。もちろん攻撃の直撃を受けた悠佑など、僕の比ではないだろうが__そう、これが傭兵稼業である。
4:「…生きてるのが信じられへんわ」
4:「ここまで命の危険を感じたのは__そうだな…If、お前と殺り合った時以来か」
5:「ハッ、笑えねぇ」
補給カプセルの飛来をレーダー上に捉え、ついに1つも敵性反応のない戦術画面を一瞥しシステムを通常モードへ戻した。ヒュルルルルぅ……というプリズムの環流音に身を委ね、コック ピットシートに深く居直り「家」へと帰る。
『あぁ、コイツを持ち出した甲斐がなかった』
『救命ボートに浮かんでる能無し共が『サイコロのエンブレム』と騒いでやがる、そっちで調べておいてくれ』
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