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「ちょっとビビってんの可愛いな」
配信を見てたときに、スラッと耳に流れ込んできたそれは、水のように異物感がなく、しかし、はっきり引っかかった。皆の前では決して、そういうことを口にしないはずの僕の恋人の、可愛いという発言に噎せる。疑問よりも先に顔が若干熱くなって、単純すぎて余計に恥ずかしくなった。隣の部屋にはロウがいて、配信中で、僕はロウの配信をリアタイもせず、アーカイブを見続けてる訳だけど。それにしても驚いた。普段、配信ではツンケンしてるあのロウが、まさか僕に対して、配信中に可愛いなんてきな臭い言葉、発言してたなんて思ってもみなかった。考えれば考えるほど熱が長引いて項を隠すように椅子の上にうずくまってしまう。首まで赤いんだろうな。1人、部屋で悶々と恥ずかしくなってる事実が1番恥ずかしいなんてツッコミを受けつけるつもりはない。すっかりへにゃへにゃになってしまった僕は最早どうするべきかも分からない。配信も垂れ流しで、なのに、こんなことになってしまったから、何を言ってるのかもまともに聞き取れない。やけに心臓がうるさいから部屋の音が全く耳に入ってこない。どくどくと脈打つ音だかが異様に大きく聞こえて、未だ引かない熱がじわじわと侵食していく。ヘッドフォンをとってパソコンの電源を落とす。居た堪れない感情を抱えてベッドに思いっきり飛び込んだけど、結局何か変わる訳もなく。静かなら聞こえるはずの隣のロウの声が、僕の心音でかき消される。じくじくと頬が熱くて喉がきゅぅって鳴った。怒りを込めて台パンしよう物なら隣の配信に乗ってしまう可能性があるので、まくらを思っきり抱きしめるので我慢した。
「ロウのばか…」
珍しく隣の部屋から物音がしない。さっき一瞬何か音がしたがそれっきり何も聞こえなくなった。いつもは、小指をぶつけるとか、物を倒すとかそういう音がして、配信に乗らないかひやひやするのに、今日は全く物音がしない。もしかしたら寝てるのかもしれないが、一応、心配ではある。ということで、配信を区切りウェンの部屋に来た訳だが。案の定、ウェンはベッドの上にうつ伏せで眠ってる。呼びかけても反応は無し。綺麗に整理整頓された机に画面の消されたパソコンを見るに、寝る気で寝たみたいだが。まぁ、真相は本人にしか分からないだろうし、決めつけるのは良くないか。あまり乗り気はしないが、一応パソコンを触ったのかだけ確認をさせてもらう。
「……は?」
それが良くなかったみたいだ。画面に映し出されたのは俺画面の方のマイクラのアーカイブ。しかも、ウェンと関わってる時の。(喋ってはいない)それに何がタチ悪いって、ここで俺がなんて言ったのかも鮮明に覚えていることだ。
『ちょっとビビってんの可愛いな』
なんてことを言ったんだ俺は……。もうあの配信から月日は流れ、俺自身気にしなくなってきた頃だというのに、まさか、本人が見ていたとは。信じ難い。恥ずかしいことをした、という自覚しかないんだぞこっちは。なんて睨み見てもウェンは相変わらず寝てるだけ。反応はもちろんなし。ため息だけ付いて画面を閉じる。いや、気にしすぎだ。引きずったところで何か変わる訳でもない。そういいきかせて無理やり気分を変えたところで、そろそろ本人の声が聞きたくなってきて、ウェンのベッドに腰掛ける。奥の方で寝ているので狭苦しくはない。髪を撫でると引っかかりもなくスルッと抜けて、そんな細かいところですらも好きだなって思った。
「ウェン、配信終わった」
……反応はなし。俺の声は聞こえていない。…まるで屍のようだ…。なんて、やめよう。本当に死んだら洒落にならんし、俺の心折れる。それはそれとして、どうしたものか。3時間続けた末に恋人の声が聞きたいから(表向きはそろそろ寝よう)という理由で配信を終わらせた恋人への仕打ちがこれは流石に傷つくぞ。つんつんと頬をついても、名前を呼んでもみても反応はない。本当に拗ねるぞ。
「……ウェン、おきて、なぁ、、彼氏居んぞ」
……自分で言っておいてあれだが、恥ずかしくなってきた。わざわざ彼氏という必要はなかったんじゃないか?今更か。ウェンの頬を摘んでみても引っ張ってみても、本人は知らない顔して寝続ける。見た目通り肉の付いてない、でも、ふにふにとした頬をいじり続ける。偶にひくっと眉が動くが起きる様子は無い。乾燥した俺の指先が絆創膏や唇に当たる度に何となく居た堪れない気持ちになってくる。……睡姦は趣味じゃないが、放置されて、……、構ってちゃんの、白狼はただいま猛烈に拗ねているのでな。
「ウェーン、このまま寝てるなら襲うぞ 」
もちろん無反応。穏やかに寝息を立ててるだけ。俺は警告した。反応しなかったのはこのバカで1番可愛い俺の番だ。俺は悪くない。
怒られるのは覚悟しておこう。
追記
最近R少なくて申し訳ないです
なんだか最近、前のように上手く書けなくてスランプ気味でして
上手くいっていない未完成品載せるよりは
ない方がマシかなと省いておりました、
何度か試そうとはしたものの納得がいかず……
これからも当分の間はRがないかと思われます
そもそも最近小説を書くこと自体がスランプ気味なのも
ありまして、本当に投稿頻度反省しております
お仕事も忙しくなってきて、ネタも足りなくなってきて
小説と絵もスランプに陥ってしまって
本当にいいものができるような状況にありません
長編ストーリーの方も1話につき前編、後編分けないと
まともに書けないような状況にあります
なんとか脱会出来ればいいのですが
少なくとも、もう少しの間は難しいかと思われます
本当に普段読んでくださっている方に申し訳ないです