夜。
俺は、自分の教室へ入って、手を胸に押し当てた。
心臓が動いてる。
俺は、まだ生きてる。
でも確かに___自分の中で、何かが欠けてしまった気がする。
嘘を吐くこと。
苦しくて辛くて吐きそうだった。
えとさんの顔が目に浮かぶ。
辛そうだった。
同時に、冷たい目をしていた。
「ごめんなさい___」
自分でも声を出せていたかどうか分からないぐらい、
小さく掠れた声でつぶやいた。
廊下からは、足音。
人狼か。
嗚呼__また、誰か死ぬ。
人狼が、村人を殺しに行くことに、こんなにも抵抗を感じるのは、どうしてだろう。
自分はあくまで、人狼陣営だ。
なのに___
邪魔な感情だけが、捨てきれない。
『朝になりました』
朝、午前6時。
そして、いつものように、パン屋の放送が流れる___
はずだった。
『……』
__パン屋は?
『昨夜、1名が人狼により襲撃されました』
『犠牲となったのは__るなでした』
__るな。
__パン屋の放送が、無かった。
「るなさんは、パン屋だった___?」
のあさんは、独り言みたいに呟いた。
のあさんの目は、どこを見ているのか、分からなかった。
「あーもう!イライラする!」
えとさんは机を叩いた。
「なんで私が噛まれないの?意味分かんないんだけど!」
みんなは、えとさんの方を向かず、黙って床を見つめていた。
「…悔しい、私、」
「力はあるのに、誰も守れない…ただ、生きてるだけなんて、もどかしすぎる」
「…えとさん、大丈夫だよ。俺はえとさんが生きてるから、少しは安心して占える」
うりは、少しだけ笑って、言った。
「それで__」と続ける。
「昨日も、占ったんだけど__のあさんは、黒だった」
うりは、のあさんと俺を交互に見た。
「大体想像はついてた。のあさんが黒だってことは…」
「シヴァさんとヒロくんが、今日の投票を、のあさんに入れてくれたら__」
「勝ち筋は、あるかもしれない」
「私も、予想はついてました」
のあさんが話し出す。
「うりさんが、今日私を占うとしたら__黒を出すだろうなって」
「のあさん、…やっぱり、人狼だったの…?」
えとさんは、泣きそうな声で言う。
「__ううん?」
「そういうえとさんこそ、人狼なんだよね__?」
「私、始めはじゃぱぱさんのことは半信半疑だったけど、今日のうりさんの話を聞いて、確定した…」
「どうして嘘を吐くの、?私、本当はずっと…のあさんのこと、信じていたかったのに……」
「それは私の台詞だよ…」
「えとさん、どうして今日人狼に噛まれなかったの__?」
「……そんなの、私が聞きたいよ」
「私は騎士なんだから、人狼にとっては1番邪魔な存在のはずでしょ…」
「なのに、どうして…」
「__それは…えとさんが人狼だからじゃないの?」
のあさんは、恐る恐る、えとさんに聞いた。
「違う、!!」
えとさんは、即座に否定する。
「私は、本当に騎士なの、!」
「のあさんは…本当に、シヴァさんやヒロくんを、騙し通すつもりなんだね」
のあさんは、口をつぐんだ。
「ヒロくん…これ、今日の投票って、確実に俺たちにかかってるよな…?」
シヴァさんは、ヒロくんに聞いた。
「そうだよね…判断を間違えたら、終わる…ね」
ヒロくんが答えた。
「__あのさ」
俺は、皆の会話が一段落ついたところで、切り出す。
「俺の占い結果だけど…」
「昨日、シヴァさんを占って__白だった」
えとさんは「じゃあしばおも黒かな…」とため息をついて言った。
シヴァさんは「いやいや」と首をふる。
「えとさん、今は俺とヒロくんに村の命運がかかってるんだよ」
「あんまり下手なこと言わない方が良いんじゃない?」
「なにそれ、脅し?」
えとさんは言う。
「脅しじゃない…って言ったら嘘になるけど、」
「今の発言は、自分の首を絞めるようなものだろ?」
「分かってるけど…じゃっぴが白出しするなら、ラインができてるんじゃないかって思って…」
えとさんは口ごもる。
今日は一段と重苦しい雰囲気のまま、昼の時間が過ぎていった。
午後5時。
また、いつものスピーカー。
『これより、議論時間を開始します』
『終了は、5時30分です』
「私から、一つ良いですか」
のあさんが手を挙げた。
「私はえとさんを吊るべきだと、思います」
「朝、普通は噛まれるはずのえとさんが噛まれていなかったのは…」
「えとさんが、人狼だったからだと思う、」
「そして、えとさんを吊って終わらなければ__」
「うりさんを吊るべき」
「私はただの村人なんです…信じてほしい、!」
「じゃあ、次は私が」
次に手を挙げたのは、えとさんだった。
「人狼側は、あえて私を噛まずに、私にヘイトを向けさせようとしてる」
「これは、全部人狼側の策略__」
「これに引っかかったら、終わりだよ」
「信じてほしい…私は、本当に騎士なの!」
「シヴァさん…やっぱりこれ難しすぎるよ、」
ヒロくんは頭を抱えた。
「もう、どっちの言ってることも正しいような気がしてくる…」
シヴァさんも言った。
「騎士を噛まないっていうのは、人狼の策略__か…」
ヒロくんは呟いた。
「人狼側が、そこまで考えるかな、っていうのが、引っかかる」
「今人狼が最も恐れてるのは、襲撃失敗__」
「要は、村人陣営の縄の数が増えること…だと思うんだけど」
「…つまり?」
「今の状況なら、人狼は騎士を真っ先に狙いに行きそうだけどなって、」
「ちょっと、ヒロくん…!?」
えとさんは、落ち着かない様子で言う。
「騙されないでよ、私こんなところで、死ねないよ!」
「…分かってるよ。シヴァさんは、どう思う?」
「確かに、この盤面的にも、人狼が残り1な気がするんだよね」
「だから、人狼は、絶対に騎士を確実に消したいと思うはずだよね…」
「ねえ!シヴァさんまで!」
えとさんは、本格的に焦りを見せ始めた。
『議論時間は、残り10分です』
機械音声が流れる。
「まじで?えとさんが怪しいって2人は思うの?」
今までずっと黙って話を聞いていたうりが、口を開いた。
「怪しいっていうか、…えとさんが騎士だったら色々おかしいんじゃないか、みたいな」
「そうそう…」
ヒロくんに、シヴァさんは便乗した。
「これ含めて人狼の作戦だろ、完全に騙されてるぞお前ら」
「そうだよ、人狼は今頃心の中で笑ってるんだから」
その後も、うりとえとさんは、2人に抗議するが、2人は困ったように顔を見合わせるだけだった。
『5時30分。投票を開始します』
機械音声。
iPadが一斉に光る。
俺は、えとさんの名前を押した。
今回は、ほとんど躊躇いは無かった。
__結果。
処刑対象:えと
「あーあw」
えとさんは笑った。
だけど、目は全く笑っていない。
「__うり、ありがとね」
スパンッ
「クソ…ッ」
うりは舌打ちをする。
__これで残るは、5人になった。
そしてもうすぐ、この地獄のゲームも幕を下ろし、全ての真実が明らかになるだろう。
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【死亡者】 たっつん、ゆあん、どぬく、えと、なおきり、もふ、るな
【生存者】 じゃぱぱ、のあ、シヴァ、うり、ヒロ
【残り】 5人






