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夏休み林間合宿当日。
1時間バスに揺られ、全員がバスから降ろされる。着いた場所は山奥へ続く道の途中にある開けた場所。森と山しか見えず、建造物は見当たらない。
「休憩だー」
「おしっこおしっこ…」
「つか何ここ、パーキングじゃなくね?」
「ねぇアレ?B組は?」
「お…おしっこ…」
「何の目的もなくでは意味が薄いからな」
「よーうイレイザー!!」
「ご無沙汰してます」
「煌く眼でロックオン!」
「キュートにキャットでスティンガー!」
「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」」
「今回お世話になるプロヒーロー、プッシーキャッツの皆さんだ」
「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね。あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」
「「「遠っ!!」」」
「え…?じゃあ何でこんな半端なとこに………」
「これってもしかして…」
「いやいや…」
「バス…戻ろうか……な?早く……」
「そだな…そうすっか…」
「今はAM9:30。早ければぁ…12時前後かしらん」
「ダメだ…おい…」
「戻ろう!」
「バスに戻れ!!早く!!」
「12時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」
「わるいね諸君、合宿はもう始まってる」
津波のように押し寄せる土砂を、台にして飛んで上空に回避する。他の子達は土砂に飲み込まれて崖下に放り込まれた。
「私有地につき個性の使用は自由だよ!今から三時間!自分の足で施設までおいでませ!この…魔獣の森を抜けて!!」
「おい、霊華も行け」
「…………はーい」
面倒。
下に落下し、近くにある木の枝に着地する。森の中は変な怪物がうようよいて、既にルーキー達が戦闘を開始してる。怪物は土でできているようですぐに崩れる。なるほど、あの土砂を作ったヒーローの個性。
「相手するよりさっさと行こ」
【(え〜昨日も愛し合ってたせいか、それともアレのせいなのか…連れないなぁ…)】
地上の騒動を無視して、枝へ飛び移る
「早かったにゃんね。一番乗りは君だよ」
「とっても優秀ねぇ。三年後が楽しみ!ツバつけとこー!!!」
「汚な!寄らないでよ…」
「危なっ!酷いわね!まだ私はぴちぴちなんだから!!」
「今のはマンダレイが悪いです」
「バスから自分の荷物降ろせ」
「はーい」
空が赤く染まった頃に土埃と汗まみれのルーキー達が到着した。唾つけてくるヒーローが唾飛ばすのが見える。絵面がえぐい。
「あー!霊華さんもういる!!」
「姿見ねぇって思ったら一番乗りかよ!」
「汚ないから触らないでおいて」
「酷い!」
「茶番はいい、バスから荷物降ろせ。部屋に荷物運んだら食堂にて夕食。その後入浴で就寝だ。本格的なスタートは明日からだ。さァ早くしろ」
大部屋に荷物を運び入れ、一同が大食堂に入ると既に夕食の準備がされていた。昼食を食べそびれ、腹を空かせていたA組は口いっぱいにご飯を頬張る。
「へぇ、じゃあ女子部屋は普通の広さなんだな」
「男子は大部屋なの?」
「見たい!ねぇねぇ後で見に行ってもいい?」
「おー来い来い」
「美味しい!!米美味しい!!」
「五臓六腑に染み渡る!!ランチラッシュに匹敵する粒立ち!!いつまでも噛んでいたい!ハッ……!土鍋…!」
「土鍋ですか!?」
「うん。つーか腹減りすぎて妙なテンションになってんね」
昼飯食ってるからそこまで腹は減ってない。白米のお椀がなくなったら部屋に戻ろうと黙って食べてると蛙水さんに声をかけられた。
「霊華ちゃんってば食べ方綺麗ね」
「??」
「それ私も思った!」
「確かに!上品に食べるから一瞬目を疑うよね」
「食べ方に上品もないわよ?黙って早く食べて。」
「いい子ちゃんだ」
「お育ちがいいのね」
海賊の方が食べ方綺麗とかありえないでしょ。豪快な食べ方なんてしたら海賊だってバレるわよ。
夢を見た。
『せんちょー』
あの頃の夢
『今日はやっと上陸ですね船長!』
夢の中でよく見えないけど懐かしいあの頃
『船長〜??早く起きないとご飯無くなっちゃいますよー?』
いやだ。ご飯なんてもう要らない。だってあれからはずっとご飯なんて食べても意味がなかった。だから…もう一度だけあの頃に行きたい。やり直したい……
「……ん」
薄く目を開く。部屋の中はまだ薄暗暗く、女のルーキー達は寝息を立ててた。身を起こして窓の外を見るとまだ陽は出ていない。
「みんな…………」
目尻から一筋の涙が流れる。目が冴えてしまったから顔を洗おうと布団から出た。私の魂の体は相変わらず重いまま。
合宿2日目。早朝5時30分。太陽が登り始めた時間帯に集合され、大半の者は眠気に抗ってる。もっと早起きできるようにしないと私の所では海賊に殺されるわよ?
「おはよう諸君。本日から本格的に強化合宿を始める。今合宿の目的は、全員の強化及びそれによる仮免の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備だ。心して臨むように。というわけで爆豪、こいつを投げてみろ」
「これ…体力テストの…」
「前回の…入学直後の記録は705.2m…どんだけ伸びてるかな」
なるほど、成長具合ね。
「んじゃ、よっこら…くたばれ!!!」
FABOOOM!!
ピピッと判定された結果は709m。前回より少ししか伸びていないことに舌打ちしてる。
「入学からおよそ三ヶ月間、様々な経験を経て確かに君らは成長している。だがそれはあくまで精神面や技術面、あとは多少の体力的な成長がメインで個性そのものは今見た通りでそこまで成長していない。だから、今日から君らの個性を伸ばす。死ぬほどキツイがくれぐれも…死なないように」
私は普通に沢山物の構造を覚えて作る修行。いや、生ぬるいわね。全然強くなれない……これならあの白カラスと殺りあった方が全然ありな方。
周りが阿鼻叫喚で死にそうな顔をしていても霊華だけは無表情で淡々と繰り返していた。ある意味1人だけ浮いている。
「霊華、ちゃんとやってるか?」
「…?やってるわよ??」
「分かってて言ってるんだ。退屈そうだな」
「個性強化に注目したことしたことなかったからこんな特訓初めて。案外平和な特訓で拍子抜けしてるわ。私は個性よりも体術やった方がいいし。」
「それは前に言ってた人か?」
「…あのほうがよっぽど地獄」
「どんなのか気になるな」
「興味あるの?先生。死んじゃうよ」
「霊華ができたなら大丈夫だろ。A組でもできる特訓なんかないか?」
「…………早起きぐらいなら」
「早起き?」
「簡単にいえば武器を持った鬼から時間通りに早く起きて20分間逃げ切るゲーム。1秒でも早すぎたり、遅すぎるとダメ。先生もやってみる?キツイわよ?追いかける方は徹夜だけど♪」
「いいな。いつかカリキュラムに組み込もう。そん時は霊華は鬼だな」
「捕まえる自信しかないわね」
B組が来たと担任が離れる。阿鼻叫喚に増える叫び声。うるせーなぁと自分の特訓を淡々とこなしていた。
「さァ昨日言ったね!世話を焼くのは今日だけって!!」
「己で食う飯くらい己でつくれ!!カレー!!」
「「「イエッサ…」」」
「アハハハ!全員全身ブッチブチ!!だからって雑なネコマンマは作っちゃダメね!」
心身共にヘトヘトになった一同の前に、山のように積み上げられてるカレーの材料。そんな作る気力ないA組とB組だったが、張り切る飯田の声かけで動きだした。
共同作業でできたカレーは切った野菜はバラバラで、水気が多かったり逆に少なかったり。米が硬かったり逆に柔らかかったりと不出来なカレーが出来上がった。それでも地獄の特訓で乗り切った一同にとってはご馳走だった。
「店とかで出したら微妙かもしれねーけど、この状況も相まってうめーー!!」
「言うな言うなヤボだな!」
「ヤオモモがっつくねー!」
「えぇ、私の個性は資質を様々な原子に変換して創造するので、沢山蓄える程沢山出せるのです」
「うんこみてえ」
「………………」
「謝れぇ!!」
「スイッマセン!!」
元気なルーキーだ事。賑やかな隣のテーブルと違い、こっちのテーブルは話すことあっても静か。まぁ斜め前にいる存在を除いて。
「クッソォ。何で俺の隣や前はこんなむさ苦しい男しかいねぇ席なんだ!変われよ上鳴ぃ!瀬呂ぉ!」
「そういうとこだと思うが」
「峰田くん!人としてもヒーローとしてもどうかと思うぞ!!」
「黙って食え玉野郎。喚くな鬱陶しい」
「っっ!!」
「爆豪に一理ある。英気を養って早く寝た方がいい。明日のためにもな」
「くっ、頭硬いやつしかいねぇのかこのテーブルはよぉ!!」
騒ぐルーキー君を殴って不出来なカレーを頬張る。美味しいか不味いかって言われればあまり美味しくない。それでも何故か美味しく感じられた。
また…
『せんちょー?』
またあの頃の夢
『船長!目の前に幽霊船です!』
え?……だめ…
『乗り込みましょう!!』
そこに入っちゃ…乗り込むのは……ダメ!!
カッと目を開く。部屋の中はまだ薄暗い。
「また、夢……」
はぁとため息吐いて、顔を洗おうと布団から出る。私の魂の体は相変わらず重たいまま。