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 瑞樹と柚乃が去ったのを見てから御岳が最初に起こした行動は、岩石で捕えていた魔術士達を皆殺しにすることだった。さっきまでは体を拘束していた岩が、鋭く尖って心臓や喉を突き刺していく。


「ぐッ!?」


「ぎゃッ」


「が、ハ……」


工場内に血が撒き散らされ、命が容易く消えていく。その様子を見ても動揺した気配すら見せない青白い肌の男は、赤い目を細めて残った四人を睥睨した。


「フン、そこの男以外は魔力量も大したことが無い雑魚のようですね……」


「ハッ、不健康そうな顔色してる癖に人を見下してんじゃねぇよ。飯食って寝やがれ」


 茜は威勢よく食って掛かり、炎の鞭を男へと振るった。


「ッ、その鞭だけは厄介ですね……その魔術、何処で手に入れたんです?」


「教えるわきゃねぇだろッ!!」


 鞭が枝分かれし、逃げ場を潰すように伸びるが、男はローブに包まれてその場から消えた。


「そこだな」


「ッ!」


 男の転移先に飛来していたのは、御岳の放った尖った岩石。頭を狙ったそれを男はギリギリで躱そうとするが、掠っただけで頭の半分程が吹き飛んだ。


「やはり、奈落の穴で戦っていただけはあるようですね……!」


 しかし、じわじわと男の頭は再生していた。数秒もすれば、吹き飛んだ頭は完全に元通りだ。


「……やっぱり、吸血鬼かテメェ」


 その再生によって男の正体に気付いた御岳は言った。


「ふふ、御明察。私は吸血鬼、名も所属も話せませんがね?」


「死ねッ!!」


 笑う吸血鬼の背後から飛び込んで来たのは黒髪の少年、ここまで気配を消していた黒崎だった。突き出された刃は確かに吸血鬼の首にめり込んだが、断ち切ることは出来ずに途中で止まった。


「残念。足りませんね、力が」


「ぐッ!?」


 振り返りながら腕を振るった吸血鬼によって吹き飛ばされた黒崎は、廃工場の壁に叩き付けられて悲鳴を上げた。


「『|岩弾《ロックショット》』」


「っと」


 黒崎に追撃を掛けようとした吸血鬼に岩石が飛来するが、吸血鬼はその身を霧に変えて回避した。


「吸血鬼……俺とは相性が悪いな」


 口惜し気に言った御岳は、黒崎に直撃しそうになっていた岩石の軌道を僅かに逸らした。轟音と共に壁に穴が開き、吸血鬼に狙われていた黒崎は咄嗟にその穴から外に逃れた。


「逃がしは……いえ、こちらから片付けるべきですね」


 背後から振るわれた稲妻の宿る炎の鞭に、吸血鬼は目を細めて言った。


「さて、少し本気を出しましょうか」


 吸血鬼は指先を茜に向け、そこに赤い魔法陣を展開した。


「『|血の吸収《ブラッドサッキング》』」


 小さい赤色の魔法陣は茜の身体に効果を作用させ、茜は体から血が抜けていく感覚にくらっと体が揺れた。


「『|陣形破損《クラッシュ》』」


 御岳がすかさず唱えると、赤い魔法陣は砕けて消えた。


「対応が早いですね、流石です」


 吸血鬼は言いながらも、視線を御岳に向けることは無く茜へと飛び掛かった。


「近付くんじゃねぇッ、蝙蝠野郎が!」


「ッ!」


 茜が突き出した炎の鞭。それは、無数に枝分かれして茜の前方を覆い尽くす程に広がった。吸血鬼はその身を霧に変えて避けるが、体の一部は蒸発して人に戻ると体に幾つもの穴が開いていた。


「ふふッ、洒落になりませんねぇ……」


 吸血鬼は全身に開いた幾つもの穴と無数の傷を直ぐに再生させるが、その表情には戦慄が浮かんでいた。


「ですが、所詮は当たらなければ無意味です」


 吸血鬼は無数の蝙蝠に体を分け、工場の中を自在に飛び回った。


「ッ、ちょこまか飛びやがって……!」


「『|岩散弾《ロックバックショット》』」


 御岳が斜め上に向けて魔法陣を展開し、そこから岩の散弾を放った。細かく分かれた岩の弾丸は宙を舞う無数の蝙蝠を同時に何体も撃ち落とす。

 そして、御岳が撃ち漏らした個体を茜が枝分かれした鞭で叩き落としていく。


「ふふ、残念ですが……」


 しかし、全ての蝙蝠が撃ち落とされる瞬間に吸血鬼は茜の影から現れた。だが、伸ばされた手は茜に触れる寸前で止まった。


「『影縫い』だよ。まさか、自分から飛び込んで来てくれるなんてな?」


「ッ、動きが……ッ!?」


 吸血鬼の背後、同じ影の中から現れたのは黒崎だった。吸血鬼が狙うのは茜だと当たりを付けていた黒崎は、隙を見て茜の影の中に隠れ忍んでいた。


「死に晒せェッ!!!」


 動きを止めた吸血鬼に、振り下ろされるのは刃の形となった炎の鞭。それが吸血鬼に触れる瞬間、吸血鬼と炎の刃の間に空間の歪みが生まれた。


「チィッ!」


「ぐッ……!」


 歪みの魔術によって炎の刃を防いだ吸血鬼だったが、その首筋に黒い刃が突き立てられる。黒崎によるものだ。だが、吸血鬼はそれによって血が大量に流れ出るのを厭うこともなく空間の歪みを持続させ、炎の刃をそこに固定し続けた。あわよくばその歪みによって炎の鞭が壊れてしまわないかと言う目論見もあった吸血鬼だが、強固に安定化された炎の鞭は空間の歪みの中にあっても壊れることは無かった。


「『|岩地絡め《ギガバインド》』」


 吸血鬼の足下からゴツゴツとした岩が蛇の如く伸び、吸血鬼に巻き付いて雁字搦めにする。その岩の拘束には特殊な効果がかかっており、この岩に絡み付かれている限りは決して吸血鬼は逃れることが出来なかった。


「『咲け、焼け落とす毒の花』」


 動けない吸血鬼を前に、茜は強く地面を踏み付けた。


「『|焔華《グロリオサ》』」


「ぐ、ぅ……ッ!」


 すると、そこから赤い光が輝き、炎の花が咲いた。花は吸血鬼に絡み付き、その体を刺し貫いて食らいつく。体内に炎の毒が駆け巡った吸血鬼は、苦悶の声を上げて茜を強く睨み付けた。

ある日、僕は全知全能になった

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