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お誕生日おめでとうございます🎁❤️
誕生日とは特に関係のない話です。
fjsw side
「…ふっ、」
布団の中、モゾモゾと動く気配で目が覚めた。
「…元貴、?」
「あ、…起こしちゃってごめん」
「大丈夫だよ。どうした…?眠れない?」
泣き腫らしたような目をしていることに気がついたのはそう尋ねた後だった。深く聞きすぎるのも違うかなと思って頭をぽんぽん撫でてやる。誰にだって不安になる夜くらいあるよね。
「若井の方行ったら蹴られそうだったから」
隣のベッドに目をやると手足を大きく広げてすやすやと眠る若井の姿があって、確かにこれは入っていくスペースはないなと思う。
「若井だけじゃなくて僕のことも同じように頼ってくれてありがとね」
「ん?なんで若井だけ?」
「え」
何のことを言っているか分からないという様子の元貴にこちらまで思わず泣きそうになってしまう。元貴と若井の関係性は特別で、僕なんかが入り込む隙間なんてないと思っていたのに。ああ…元貴にとって僕も若井もひとならびなんだね。嬉しいな。
「ねえりょうちゃん、眠くなるまで話しててくれる?」
「んふっ、いいよ」
最近観た映画についてとか美味しかったご飯の話とか、他愛もない話をしているうちにだんだん元貴の目がとろんとしてきた。
「そろそろ寝ようか」
「やだ、りょーちゃんとまだ話していたい」
「えー?」
まるで幼子のようにだだをこねている。元貴はいつも何でも完璧にこなしてしまうし、僕たちをそのままに先へ先へと進んでいってしまうからこんな感じになるのは珍しい。1人で頑張りすぎだよ。たまには甘やかしてあげないとね。
「じゃあ元貴何か飲む?僕持ってくるよ」
「んー…カフェオレ。甘いの」
こんな時間にカフェインなんて取ったら…という小言は飲み込んでおく。待っててね、と声をかけて寝室を抜け出す。
元貴が寂しくならないようになるべく早く戻らなきゃ。二つのコップを用意して手早く準備をしていく。昼間はまだ秋とは言い難いような暑さだけれども朝晩は肌寒くなってきた。身体を冷やしてしまっても良くないし温かい方でいいだろう。
「元貴お待たせー…ってあれ?」
先ほどまでと同じベッドのふちに腰をかけている元貴。そして若井。
「若井も起きたの?」
「元貴の気配を感じたから」
「お前やば、なんかキモいよ」
そんなことを言っているけど顔はにこにこと笑みを浮かべていて嬉しそう。
「元貴若井のとこで寝ようとしてたのに若井があまりにもすごい寝方してたから仕方なく僕のとこ来たんだからね」
「んえーそうなの?ごめん!」
「いや寝るときは若井より涼ちゃんがいい」
「なーんでよー」
肩を突き合いながらじゃれ合う二人。微笑ましいね。いくら元貴が若井と僕は同列だと思っていたとしても、側から見たらやっぱりここ二人がお似合いだよなー。僕ですらそう思うんだもん。世間の皆さんも騒ぐよね。
「…涼ちゃんどうした?」
「ん、ちょっとぼーっとしちゃってた。ごめんごめん」
「そうだ、若井も飲む?」
持ってきたままになっていたカフェオレの存在を思い出す。元貴に一つ渡して、僕用に準備したもう一つを若井に差し出す。
「いや、この時間にカフェインやばくない?」
やっぱり普通はそうなるよね。元貴には聞こえないようにこそっと耳打ちする。
「デカフェにしたから大丈夫だよ」
「じゃあ貰おうかな」
カップを両手で抱えてコクコクと喉を鳴らす元貴が可愛い。若井も同じ気持ちみたいで、二人からの視線を感じた元貴は照れくさそうにはにかんだ。
「見過ぎだって」
「だって元貴かわいいんだもん」
「しょうがない俺ら悪くない。元貴が可愛いのが悪い」
普段だったら強めに手が出されるような場面だけど今は眠くてぽわぽわ元貴だからね。言い放題。
「こっちおいで」
隣をトントンと叩いて布団の中に誘う。
「ねー涼ちゃんずるいって!」
「若井もおいで」
元貴を真ん中にして3人で並ぶ。ふふ、元貴と若井は知ってるかな、こういうこともあるだろうと大きめのベッドを選んだんだよ。少しゆとりはあるけれどわざと身体をぴとりと密着させてみる。
「元貴あったかいね」
「2人して近いって…あついよ」
「いいじゃん俺らと熱くなれるなんて本望でしょ?」
ん?
「わーかーいー」
若井の視線がギラついていることなんて当の本人は気がついていない。今日はさすがに寝かせてあげないと。分かってるよね?という意味も込めて若井の方を見ると、やべという表情を浮かべて舌をぺろっと出した。
はぁー…眠気から言動が幼くなっている元貴と、欲に満ちている若井。2人して色気がすごいんだから…
だんだんと口数が少なくなってきたかと思えば、元貴は僕に寄りかかってすやすやと寝息を立てていた。
真っ白な肌に不釣り合いな目の下に浮かんだ隈を指でなぞる。せめて今日くらいは朝までよく眠れますように。
「ねえ涼ちゃん、キスくらいなら許される?」
「いちいち聞かないでよ笑」
「それすら許してくれないかと思って」
若井は少し開いた元貴の口にちゅっと口付けた。
「ね、涼ちゃんも」
若井がそう言うから、前髪をかき上げておでこに唇を寄せる。
「俺にもして」
僕の唇にふにっと指が押し付けられた。仕方ないなぁ…元貴を起こさないように気をつけながら、若井に顔を近づける。こういう時だけ年下全開で甘えてくるのが本当にずるい。
「ありがと。元貴も涼ちゃんも可愛すぎ」
「…若井もだよ」
「また明日からも3人で頑張っていこうね」
生まれてきてくれてありがとう。
彼らがこの先も幸せでありますように。