テラーノベル
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最終日にもたくさんお土産を買った若井は本当に鞄に入り切らなくて俺のに詰めてあげることになりながらも無事にまた東京に帰ってきた。
少し離れただけだったのに東京の寒さにびっくりしてしまった。
またもう時期冬が来る。
今年のクリスマスは何あげようか、去年の若井に貰ったマフラーも出さなくちゃと俺はまだまだ先の楽しみを期待していた。
何気ない毎日が過ぎて気付けばもうすぐ冬休みというある日、帰ろうと若井と教室を出ると見たことない女の子が若井先輩、と声を掛けてきた。
先輩って呼ぶということは1年生なんだろう、そしてこんな風に声を掛けてくるってことは、と察して俺は若井に先に帰ってるから、と伝えて急いでその場を逃げ出した。
たぶん、俺の知らないところでも若井はこうやって告白されていたりするんだろう。
けど若井が何も言わないし、俺も聞けなかった。だって花火をした夏の夜若井は俺にいつか言うよって言ったから···それまでは、何も言わないってことだろうから。
もやもやとした気持ちで考え事をしながら歩いているといつより早く家に帰り着いた。
鞄を床において制服のままベッドに寝転ぶ。
考えるのは若井のことだけだった。
そして最近よく思い返すのはあの修学旅行での夜のこと。
あの夜の若井はいつも通り優しくてけどいつもとは違う感じだった。
もしかして、もしかして若井も俺のこと···だって、あんなにしてくれるんだよ、一緒に眠ってくれて星空を見て抱き締めてくれて。
そんなの俺、勘違いしちゃうよ。
若井は今日、あの後輩の子になんて返事したんだろう···そう考えながらその日は眠りについた。
朝、支度をしているとインターホンが鳴って珍しく若井が迎えに来てくれた。
「元貴おはよー、一緒に行こ」
「おはよう、今行く!」
並んで歩いているといつも通りの若井で少しほっとする。
「どうしたの?珍しいね、迎えに来てくれるなんて」
「···昨日一緒に帰れなかったから。それにあの子の事気にしてるかなって」
やっぱり若井は優しくて俺のこと思ってくれてるんだ。
「告白···されたの?」
「うん、まぁ···断ったけど···」
「そっか」
そっかそっか、と頷いて俺は嫌な奴だなって思う。
その子はきっと傷ついているのに、俺は若井が断ってくれてそのことを教えてくれてほっとしているんだから。
「そういえばさ、明後日って予定ある?なかったら映画でも見に行かない?」
若井が前から楽しみにしていた映画が公開されていて一緒に観に行きたくて誘うと、一瞬間が空く。
「···ごめん、サッカーがあって試合とかじゃないけどちょっと顔を出さなきゃいけなくて···また今度でもいい?」
「もちろん、冬休みに行こっか」
若井がサッカーの話をするのは夏に引退したと聞いていたから久しぶりだった。 その話が終わった頃、ちょうど学校に着く。
もうすぐ冬休み、バイトも勉強もしなきゃいけないけど楽しみと、 そんな風に浮かれてた俺に若井が嘘をついていたって分かったのは次の月曜日のことだった。
コメント
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ん!?嘘って何があったんだろ。