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「……サー・ホンダよ。おまえがそこまで人にくっついているのを見るのは初めてだ。この少年はおまえにとって大切な人間なのか?」
ふと後ろから、そんな雄々しい声が聞こえて、私は勢いよく後ろを振り向きました。そこには紺色のツヤのある背広に、赤いネクタイに、柄がくるりんと丸い杖を持った、目鼻立ちがはっきりとしている男性がいました。私はその人を見て、なぜだか、菊さんのおっしゃっていた大英帝国の化身であるとわかってしまいました。
その男性を見て、菊さんは嫌そうに、
「……こんにちは、カークランドさん。わざわざ来てくださったのですね」
ときつい口調でおっしゃいます。
「これでも同盟を結んだ大切な仲間なのだからな。……ロシアの南下政策を食い止めるために、俺たちは日々精進せねばならん。そうでなくては、おまえはロシアに食い潰されるのだからな。」
「カークランドさん。今、私は幼い民といます。民を不安にさせるような発言はお控えください。」
「……ほう。だが、この少年はそれほど幼くはないだろう。親の姿が見えないってことは、親がめっきり面倒をみなくてはならない年ではなかろう。……なんだ、それほどまで干渉してほしくないのか? サー・ホンダ。」
カークランドと呼ばれた男性は、菊一さんとは違う優雅な立ち振る舞いで私の隣に座りました。私は驚いて、ひぇ、と素っ頓狂な声が漏れてしまいましたが。
「カークランドさん」
「なんだい? サー・ホンダ」
「私は物分かりの悪い方は嫌いです。」
「今日は濁さないのだな。いつもなら濁すのに。よほど、大切な子なのだな、ふうん。……よし、少年!」
カークランドさんは私の肩を勢いよく掴んで、
「今から紳士の国、大英帝国の話をしてやろう!」
「え、ええ!」
「カークランドさん!」
と、ペラペラと雄弁にカークランドさんは大英帝国の話をし始めたのでした。