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「謝りたい事…?」
「うん。愛斗が男の子が好きって知った時はね、愛斗を普通の道に正さないとって思ってたの」
「普通の道に?」
「そう。男が好きだなんて、おかしいって思ってて。色々調べたらそういう人は他にもたくさんいて、そういう人達はゲイって呼ばれてる事も知ったの」
ゲイ。確かにみんなこの病気の事をそう言う。
「でも、私は愛斗には普通の恋愛をして欲しいと思っちゃってね。愛斗が将来普通の子になるようにって愛斗の病気は大人になったら治るなんて言っちゃって。本当は病気なんかじゃないのに」
普通の子か。お母さんは俺に普通になって欲しくて嘘をついたんだね。
「私は愛斗に普通を押し付けた。それでどれだけ愛斗が苦しんでるかなんて考えてなくて。でも、今日の愛斗見てたら、私が間違ってるって気付いたの」
「別にお母さんは間違ってないよ。俺が悪いの。俺が普通じゃないから」
俺はそう言って俯く。俺が普通だったら両親が離婚する事もなかったし、周りの人にも迷惑が掛からなかったのに。
「愛斗…」
お母さんはそう言った後、俺を抱きしめる。
「ごめん…愛斗…ごめんね…」
そう言いながらお母さんは涙を流した。
「お母さん…」
俺が普通じゃないからお母さんが泣いてしまった。
また俺はお母さんを傷つけた。
そう思っていると、お母さんが顔をあげ、俺の肩を両手で掴む。
「愛斗。聞いて」
「なに?」
「私のお願い、聞いてくれる?」
「うん。聞くよ」
「これからは愛斗には自分の心に正直に生きて欲しいの。だから、好きな人には好きってちゃんと伝えてあげて」
お母さんはそう言ってニコッと笑った。
好きな人。翔くん。俺は翔くんに好きって言っていいのかな。翔くんに酷いこと言って傷付けたのに。
「…無理だよ。俺は好きな人を傷つけた。だから今更好きなんて言えないよ」
「傷付けちゃったなら尚更好きって伝えてあげて。傷付けてごめんって謝って好きって伝えるの。大丈夫。愛斗なら出来るよ」
そうだ。傷付けちゃったなら、ちゃんと謝らないと。
「…俺、行ってくる」
「うん。いってらっしゃい」
お母さんにそう言われ、俺は家を飛び出した。
まだ1、2年生は学校にいるかな。
俺は学校へ向かって走りながら、翔くんに電話を掛ける。
しばらくコールが鳴るが出ない。もう1回。
俺はもう一度電話を掛ける。しばらくコールが鳴った後、電話が繋がり、俺は立ち止まった。
「もしもし…翔くん、今どこ?」
『えっと…春人とカラオケに…』
そう言う翔くんの声が少し震えている気がした。
「翔くん。もしかして、泣いてるの?」
『…別に泣いてないです』
そう言う翔くんの声はまた震えていた。
「翔くん。今から会える?」
『えっ…』
しばらく沈黙が続いた後、翔くんが言う。
『…会えます。外、出ますね』
「分かった。すぐ行くから、ちょっと待ってて」
俺は電話を切り、駆け出した。
[翔 side]
電話が鳴り響く中、俺はマイクを持ったまま俯く。
「出ないの?」
「…うん。なんか今、先輩と上手く話せる自信ないし」
俺がそう言うと、電話の音が切れる。
だが、すぐにまた電話が鳴る。
「翔。出なよ。愛斗先輩はきっと翔に伝えたい事があるんだよ」
「いい。もう先輩の話なんて聞きたくない」
「翔が出ないなら俺が出るよ?」
「…なんで」
「俺は冬馬先輩とちゃんと話せなかったから、翔と愛斗先輩はちゃんと話して欲しいの」
春人はそう言って俺に携帯を差し出す。
「…分かったよ」
俺は携帯を受け取り、電話に出た。
『もしもし…翔くん、今どこ?』
「えっと…春人とカラオケに…」
さっきまで泣いていたせいか、声が震えてしまう。
『翔くん。もしかして、泣いてるの?』
気付かれた。でも泣いてたの、何となくバレたくないな。
「…別に泣いてないです」
そう言う声がまた震えてしまう。
『翔くん。今から会える?』
「えっ…」
俺がそこで黙り込むと、春人が小声で言う。
「何。どうしたの?」
俺は耳から携帯を離して春人に言う。
「愛斗先輩が今から会えるかって」
「行きなよ。俺は適当に帰るからさ」
「…ありがとう」
俺はそう言った後、再び携帯を耳に当てる。
「…会えます。外、出ますね」
『分かった。すぐ行くから、ちょっと待ってて』
先輩がそう言った後、電話が切れる。
「じゃあ俺、行ってくるね」
「うん。いってらっしゃい」
春人にそう言われた後、俺はカラオケを出る。
外に出てしばらく待つと見覚えのある顔が見えた。
「翔くん!」
「愛斗先輩」
愛斗先輩は走ってきたようで息を切らしている。
「ちょっとこっち来て」
愛斗先輩はそう言って俺の腕を掴み、近くの路地裏へ入っていく。
「先輩?」
「ごめん。本当はちゃんとした場所落ち着いて話したいんだけど、早く伝えたくて」
先輩はそう言った後、立ち止まり、俺の方に身体を向ける。そしてそのまま、俺を抱きしめた。
心臓がバクバクと音を立てる。
「…翔くん、ごめんね。俺、翔くんに酷い事言っちゃった」
病気って言った事か。
「別にいいですよ。先輩からした俺がそうなんですから」
「違うの。言い訳になっちゃうかもしれないけど、俺もそう言われてたから」
「え?」
俺がそう言うと、愛斗先輩は抱きしめるのを辞め、俺の目を見て言う。
「俺も、子供の頃から男が好きなの」