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S.T.M.yo
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御簾の向こうから、淳和院后の驚きがヒシヒシと伝わってくる。
「な、何と、にわかには信じられぬ話じゃ。
わらわも、門番からの報せを受けておらねば、一笑に付しておったであろう」
その言葉を遮るように、舎人が現れて、「院后様に申し上げます」と言い置いてから…
「大納言殿の使者がお見えです」と平伏した。
淳和院后は、その舎人に見覚えがないらしく、猜疑心を露わにして、「お主は何者じゃ?」と問い詰めるが、舎人は平伏したままだ。
本来、来客の取次ぎを女房や乳母ではなく、舎人が行うのは、どう考えても不自然だ…
次の瞬間、平伏していた舎人が、懐から短刀を抜き放ち、私に、獣の如き速さで飛びかかってきた。
されど、刃(やいば)が私の喉を切り裂く寸前、「バチン!」という破裂音が鳴り響き、舎人が、頭から床板に叩きつけられ、蹴鞠のように跳ねてから、廊下に飛ばされてしまう。
そして、舎人が叩きつけられた床板には、何故か、潰れた眼球がべったりと張り付いていた。
御簾の向こうから、「ヒッ!」という短い悲鳴が聞こてくる。
すると、音もなく、数人の黒装束が部屋に雪崩れ込んできた。
覆面で表情は読めぬが、皆、決死の覚悟で臨んでいるのだろう。
されど私は、座したままで静かに賊の一団を見渡した。
「橘逸勢殿が贄(にえ)となられ、空海と良房の間で談合が成っておるというのに、それを、一方的に反故とされるおつもりか?
されど、私にとっては好都合。
空海から、逸勢の死を無駄にするなと、仇討ちを止められておったのに、そちらから飛び込んでくれるとは…」
一番手前の黒装束が、無言のまま太刀を振り上げると、またしても、「バチン!」という破裂音が響き渡って、弾かれたように吹き飛んだ黒装束が、部屋を仕切る蔀(しとみ)を突き破って動かなくなった。
それを見た黒装束の一団に動揺が走る。
蔀の向こうに倒れている黒装束は、頭が内側から破裂して、眼球が飛び出し、耳や鼻から大量の血が吹き出していた。
「身体の内に宿りし雨を、徐々に膨らますのではなく、一瞬で破裂させた。
案ずるな、皆、楽にあの世に送ってやる」
その言葉が終わらぬ内に、潮が引くように、黒装束の一団が静かに引き上げていく。
命あっての物種だと、悟ったのだろう。
賢き判断だ。
長い沈黙の後に、御簾の向こうから驚きの声が上がった。
「何と…そなたは物の怪の類いなのか?
とても、人とは思えぬ…
まるで、雷神(らいじん)が振るう雷(いかづち)の如き妖術ではないか…
神祇伯殿の力がこれ程とは…
そなたの力を見込んで、頼みたきことがあるのじゃ。
我が子、恒貞の前世よりの穢れを、祓うてはくれまいか…」
コメント
3件

うおおお第35話読了したよ!!😭💥 刺客が次々と現れる展開、マジで息つく暇なかった…!! 特に「バチン!」っていう破裂音とともに敵が吹っ飛ぶシーン、めっちゃ鮮烈で脳裏に焼きついた✨ しかも空海と良房の談合とか逸勢の死を無駄にするなって仇討ち止められてた背景とか、物語の深みがどんどん増しててエモすぎる…!! 最後の淳和院后の「雷神の如き妖術」っていう台詞、めちゃくちゃ痺れた👊🔥 恒貞の穢れを祓ってほしいって依頼、次どうなるんだろう…続きが気になりすぎて今夜眠れない😇💕 井野匠さんの筆致、本当に痺れます…!!🙏✨