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#へたくそだけど許して
Well
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ぴのん
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眠れない夜だった。
みんなは、それぞれの部屋で休んでいる。
静まり返った廊下を歩き、外へ出る。
すると夜風が頬を撫でた。
空を、見上げる。
あの日と変わらない星空。
世界は何事もなかったかのように、美しかった。
「…はぁ…。」
ふと、小さく息を吐く。
英雄を。
僕は、何のためにやっていたんだろう。
子どもの頃。
まだ剣なんて握ったこともない頃。
町を巡回する騎士たちを見て、目を輝かせていた。
困っている人を助ける。
子どもを抱き上げて笑わせる。
魔物から村を守る。
泥だらけになっても笑っている。
そんな姿が、どうしようもなく格好よかった。
いつか僕も、あんな人になりたい。
そう思った。
強くなれば、人を守れる。
優しくあれば、人は笑ってくれる。
守ることが正義で。
守れることが強さで。
誰かのために剣を振るうことが、英雄なんだと信じていた。
だから、必死だった。
何度傷ついても。
何度倒れても。
助けを求める声があれば駆けつけた。
泣いている子どもがいれば抱き上げた。
「ありがとう。」
その一言だけで、また頑張れた。
そのはずだった。
なのに…っ!
守った人たちが。
救った人たちが。
僕を見て叫んだんだ。
「裏切り者!!!!」
この一言は。
どんな剣よりも鋭かった。
どんな魔法よりも痛かった。
僕の中で積み重ねてきたものを、全部壊してしまったから。
「…何、を。」
小さく呟く。
「何を信じれば、よかったんだろう。」
人を守ることは間違っていなかった。
今でもそう思う。
騎士は格好いい。
誰かを守れる人は、本当に強い。
その考えだけは、今でも変わらない。
だけど。
守った人に否定されたら。
救った人に石を投げられたら。
世界中が「お前は悪だ」と叫んだら。
何を信じて歩けばいいんだろう。
答えは、見つからないと思う。
夜空の星は、何も答えてくれないまま、 ただ静かに輝いているだけ。
僕は目を閉じ、小さく笑った。
「……戻れたら…いいのに。」
騎士に憧れていた、あの頃へ。
何も知らず、 正義を信じられていた頃へ。
あの笑顔のまま、剣を握れていた頃へ。
もう戻れない。
頭では分かっている。
それでも、そう願わずにはいられなかった。
その願いは夜風に溶けず、僕の心を重くしていった。
“団長”
その肩書きを初めてもらった日のことを思い出す。
今でも鮮明な思い出。
任命式。
新しいマント。
少し重たい剣。
「これからは君が皆を率いるんだ。」
そう言われた時、本当に嬉しかった。
子どもの頃から憧れていた騎士になれて。
その騎士たちを率いる団長になれた。
夢が叶った瞬間だった。
仲間と肩を並べ。
剣を交え。
強くなるために切磋琢磨して。
誰かを守るために笑って。
そんな毎日が、ずっと続くと思っていた。
……思って、いたのに。
「……はは。」
乾いた笑いが漏れる。
「何だったんだろうな。」
僕が積み重ねてきたものは。
守り続けてきたものは。
全部。
全部。
あんなにも簡単に否定されるものだったのだろうか。
そんな思考に沈み込みそうになった。
その時だった。
ざぶん!!
大きな水音が夜の静寂を切り裂いた。
「!?」
思考が一気に現実へ引き戻される。
屋敷の裏側。
湖の方だ。
こんな時間に?
嫌な予感が胸をよぎる。
僕は反射的に駆け出した。
木々を抜ける。
夜露を蹴り飛ばす。
湖畔へ飛び出した、その瞬間。
息を呑んだ。
月明かりに照らされた湖。
その中を。
黒いスーツのまま。
黄色いネクタイを揺らしながら。
一人の青年が、ざぶ、ざぶ、と歩いていた。
「…おんりー!!?」
思わず叫ぶ。
返事はない。
振り返りもしない。
服を着たまま。
ただ真っ直ぐ前だけを見て、水の中を歩いていく。
膝まで。
腰まで。
胸まで。
どんどんと、水に呑まれている。
それでも歩みは止まらない。
「おんりー!!」
もう一度叫ぶ。
ようやく。
彼は少しだけ肩越しに振り返った。
月明かりに照らされたその顔は。
いつも通り、だった。
穏やかな笑顔。
眼鏡越しでも優しい目元。
何も変わらない。
まるで夜の散歩でもしているかのような表情。
その笑顔が。
今は恐ろしく見えた。
「……何、してるの。」
声が震える。
おんりーは何も答えない。
ただ、また前を向いて。
さらに一歩。
ざぶん。
水面が大きく揺れる。
もうすぐ首まで沈む。
僕は慌てて、おんりーの方に走り出した。
その、瞬間。
彼は一歩、また一歩と進み
水面が肩を越え。
首まで沈み。
そして。
ざぷん。
何のためらいもなく、その姿は湖の中へ消えた。
「っ!!」
頭が真っ白になる。
湖へ飛び込む。
冷たい水が全身を包む。
服が重い。
息が苦しい。
それでも構わなかった。
月明かりだけを頼りに、水の中へ目を凝らす。
いた。
黒いスーツ。
黄色いネクタイが、水の中でゆらゆらと揺れている。
おんりーは抵抗もしない。
ただ静かに沈んでいく。
まるで最初から、そのつもりだったかのように。
「……っ!」
腕を伸ばす。
指先が届く。
その手首を掴んだ。
力いっぱい引く。
重い。
水を吸った服のせいか、それとも彼がまったく泳ごうとしないからか。
それでも離さない。
必死に岸へ向かう。
何度も足を滑らせながら。
ようやく岸へたどり着き、おんりーを引き上げる。
二人とも全身びしょ濡れだった。
肩で息をしながら、僕はおんりーの両肩を掴み、また同じ問いをする。
「……何し…、てるの!?」
思わず声が荒くなる。
怒っているわけじゃない。
怖かった。
本当に怖かった。
目の前からいなくなるんじゃないかと。
そう思った瞬間、身体が勝手に動いていた。
おんりーは何も答えない。
髪から雫がぽたぽたと落ちる。
眼鏡は、外れてしまっていた。
濡れた髪が頬に張り付き、その隙間から見える口元には、うっすらと笑みが浮かんでいる。
……でも。
違う。
いつもの笑顔じゃない。
どこか無理に形だけ作ったような、小さな笑み。
そして。
彼は俯いていた。
視線は地面へ落ちたまま。
何も見ていないようだった。
その姿が、胸を締め付ける。
普段なら僕の目を見て、「大丈夫ですよ」と笑うはずなのに。
今は、それすらしない。
ただ静かに、髪から水を滴らせている。
夜風が吹き抜ける。
冷えた空気の中で、おんりーは微動だにしなかった。
僕は肩を掴む手に、少しだけ力を込める。
「おんりー…!」
呼んでも返事はない。
ただ俯いたまま、濡れた前髪の向こうで、小さく笑っているだけだった。
その笑顔は。
誰かを安心させるためのものでも。
自分をごまかすためのものでもない。
まるで、何も感じなくなってしまった人が、昔の癖だけで浮かべている笑顔のように見えて。
僕はその表情から、目を逸らせなかった。
「……戻りたい、ですか?」
静かな声、だった。
僕はおんりーの顔を覗き込む。
全身びしょ濡れで、ぽたぽたと水が滴る。
顔についた水滴は、月明かりを滲ませていた。
「……、?」
さっきの、僕の独り言。
聞かれていたのだろうか。
おんりーはゆっくりと僕に目線を合わせる。
その表情には、もう笑顔はなかった。
「戻りたいと、思ってますか?」
もう一度、静かに尋ねられる。
答えられなかった。
戻りたい。
その気持ちはある。
騎士だった頃へ。
皆に笑われていた頃へ。
英雄だった頃へ。
でも。
あの頃へ戻ったとして。
また同じ結末になるなら。
それは、本当に「戻りたい」と言えるのだろうか。
言葉が喉につかえたまま、何も返せない。
すると、おんりーは小さく頷いた。
「戻し…ますよ、じゃあ。」
「……え?」
思わず眉をひそめる。
何を言っているんだ。
そんなこと。
魔法でも。
時間を巻き戻すなんて。
そんな奇跡みたいなこと、できるはずがない。
「おんりー?」
彼は何も答えない。
くるりと背を向ける。
そして。
また湖へ向かって歩き始めた。
ざぶ。
ざぶ。
水面を踏みしめる音だけが響く。
さっきまで浮かべていた、あの作り物の笑顔すらない。
俯き。
暗い表情のまま。
迷いなく進んでいく。
「待って!」
僕も走る。
水の中へ飛び込む。
追いつこうと足を動かす。
なのに。
距離が縮まらない。
歩いているだけのはずのおんりーに。
どうしても追いつけない。
「おんりー!!」
叫ぶ。
その時。
彼は一度だけ肩越しに振り返った。
「……来ないでくださいね。」
穏やかな声。
「危ないんで。」
その瞬間。
身体が止まった。
動かない。
まるで見えない鎖で全身を縛られたように。
足も。
腕も。
指先一つ動かせない。
「っ…!」
動け。
動けよ。
おん、りー……!
心の中で叫ぶ。
彼はもう振り返らない。
ざぶ。
ざぶ。
湖の中心へ。
その背中は、どんどん遠ざかっていく。
嫌な予感がする。
違う。
予感なんかじゃない。
本能が叫んでいる。
行かせちゃダメだ。
なのに。
動けない!!!!
「……っ!」
声にならない。
そして。
おんりーの姿が、水の中へ沈んだ。
「!!」
その瞬間だった。
全身を縛っていた何かが、音を立てて弾ける。
身体が自由になる。
僕は地面を蹴った。
もう一度。
勢いよく水へ飛び込む。
もう一度。
冷たい湖の底へ潜る。
もう一度。
必死に目を開ける。
また。
月明かりが差し込む水の中。
そこに、おんりーはいた。
ふわり。
ふわり。
眠るように浮かんでいる。
また抵抗もなく。
逃げもしない。
静かに、こちらを見つめていた。
目が合う。
彼は小さく息を吐く。
口の中の空気が泡となって、水面へ昇っていく。
そして。
ゆっくりと口だけを動かした。
“ま”
“た”
“ね”
声は届かない。
それでも。
何を言ったのかだけは、はっきり分かった。
「だめだッ!!」
手を伸ばす。
あと少し。
あと少しで届く。
その時。
おんりーは静かに目を閉じた。
次の瞬間。
湖の底から。
太陽よりも眩しい金色の光が溢れ出した。
世界が白く染まる。
思わず目を閉じるほどの光。
水も。
夜空も。
星も。
僕の視界も。
何もかもが、その光に飲み込まれていった。
第四話でした!!!
ちょっと遅くなった!!
改めてだけど考察勢ってすごいよね?
考察できないって言ってる人さえもすごいよ?
しれっと核心ついてたりするんだけど…
私が考察要素下手すぎるのもあって、ガチ考察勢の人に申し訳ないくらい…!!
考察じゃない人も、めちゃくちゃ嬉しいことばっかり言ってくれて嬉しすぎる!!!
本当ありがとうございます!!
よければ、ハートコメント
よろしくお願いします!!!
それでは、また
コメント
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なんだか、とても考えさせられる第四話でした! おんりーさんは、なにかすごく大きな力を持っていそうですね… 今まではまだ中身がありそうな笑顔だったのに、今回見せた小さな笑顔は中身が空っぽでまるで形を作っただけ…、おんりーさんはどんな感情だったのかな…。 見るのが遅れてしまいましたが、続きがどうなるか楽しみです! 考察勢でもないのに長文ですみません!
やばい…なんかすでに涙出てきた(´;ω;`) 見るの遅くなりましたが、めちゃくちゃ面白いです! 楽しみにまってます!!
初コメ&フォロー失礼しマス。 いつも文の表現に驚きながら楽しく見させてもらってマス∩^ω^∩ いつも神小説をありがとうございマス😭