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「あ、そうだ。桜川さん、今日の夜、部内の親睦会ありますけど行けますか?」
美咲が手帳を広げながら聞いてくる。
いつもなら「残業があるから」と即答で断るところだ。部下たちと馴れ合って、自分の私生活を勘繰られるのは私の主義に反する。
でも、昨夜、光が言っていた言葉が胸に刺さっていた。
『たまにはこうやって、泥臭い場所で笑うのも必要なんじゃない?』
「……そうね。たまには参加しようかな」
「えっ、マジですか!? 桜川さんが来るなんて超レア! みんなに即レスしなきゃ!」
美咲が嬉しそうにチャットを飛ばすのを見て、少しだけ胸がチクッとした。
彼女たちが求めているのは「完璧な私」であって、家賃数万円のボロアパートでパンを齧っている私じゃない。
私は静かに、デスクの下でハイヒールを履き直した。