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橘靖竜
#女主人公
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「恵ちゃんの女教師コス、想像したら燃える~!」
「ゾワッとするからやめてください」
「どんどん言葉を選ばなくなったね? でも燃える!」
こんなに塩対応する女性は初めてだからか、涼さんも新しい性癖をこじ開けられているんじゃないだろうか。
冷たくされるほど、喜んでいるように思える。
チラッと尊さんを見ると、親友の新たな一面を見て気の毒そうな顔をしていた。
そんな感じでワチャワチャ話しているとあっという間で、私たちは最初の駅レッドピークで降りた。
降りた先は熱帯雨林に囲まれた木道があり、大きな木の横には解説の看板があり、二人に訳してもらった。
この地点でまだ2.7キロで、キュランダまではさらにロープウェーに乗って4.8キロあるらしい。
また景色を見ながらたわいのない話をしていた時――。
「尊さん、あれ見て!」
私は鬱蒼とした森の中に、チラチラとする鮮やかな青を見つけて指さす。
「あー、よく見つけたね、朱里ちゃん。あれはユリシスだよ」
「ユリシス?」
首を傾げると、尊さんが教えてくれる。
「日本名はオオルリアゲハ。こっちではユリシスと呼ばれる蝶だ。一回見ると幸せになる、体に留まったらさらに幸運に、三回見たら金持ちになるらしい」
「えっ? マジですか!? あと二匹見つけないと!」
そのあと、恵と二人で窓の外に釘付けになりながら会話を進めていると、眼下に川が見えてきた。
――と思ったら、なんだか物凄い規模の滝がある。
「すごーい!」
滝の種類としては段瀑なのだろうか。
山の上のほうにある、剥き出しの荒々しい岩肌に沿って幾筋もの滝が流れていて、とても迫力がある。
「すっごいなぁ……」
恵も口をポカンと開けて感動している。
「恵ちゃんのその可愛い顔を見られただけで、俺はユリシス百匹分ぐらい幸せだよ」
「ケアンズ来ないと分からないネタっすね」
そうこうしているうちに、バロン・フォールズ駅に下り、滝を間近で見られるとの事なので、ずんずん進んで行く。
遊歩道の一部や展望スポットには、床がガラスになっている部分があって、大丈夫と分かっていても脚がガクガクしてしまう。
展望スポットと言っても、バロン滝から十分な距離があるけれど、ドウドウとした轟音や飛沫を上げる水の流れは物凄い迫力がある。
「よく分からないけど、マイナスイオン浴びておこう」
私が両手をパタパタさせると、恵も真似をする。
近くにいた観光客にお願いし、四人で記念撮影、そのあとはペアで撮影したあと、またロープウェーに乗って、十分もせずキュランダ駅に着いた。
「おお~、賑やか!」
キュランダは山の上にあると思えないほど、お店が連なっている。
山の上はバロン滝に通じる、広くて大きなバロン川が蛇行して流れていて、それに沿うようにキュランダがある。
住んでいる人もいて、三千人ぐらいはいるそうだ。
「クレープ屋さんあるけど、ランチする?」
「はい!」
涼さんに言われ、私はいい返事をする。
恵は「また食べ物につられて……」という顔をしているけれど、彼女もクレープが好きなのは知っている……。
メインストリートを歩いていくと、当たり前のものなのに海外補正で格好良く見える道路標識がある。
『不思議の国のアリス』に出てきそうな標識は、ヒョロッとしたポールに横長で先端が尖った看板が幾つもついている。
それも、フォントが手描きっぽく見えるので、余計に雰囲気がある。
現地の人にとっては、道路標識の前で写真を撮るなんておかしいかもしれないけれど、私は恵と並んで、両手であちこちを指さすポーズをとって記念撮影してもらった。
赤い屋根のお店は背の高いヤシの木に囲まれていて、左右二箇所から入り口がある。
私たちは右手にある赤い看板側から、階段を下りて店内に入った。
店内にはカラフルなクレープの写真が載ったメニューが壁に貼られ、壁際にはロートレックを思わせるベージュを主体にしたポスターが幾つもあった。
ペパーミントグリーンのカウンターの奥では、髭を生やした店員さんが忙しくクレープを焼いていた。
「凄いね」
周りのテーブルを見た恵は、コソッと囁いてくる。
確かに、私たちの知るクレープではない。
クルッと巻いて手持ちで食べるなんてとんでもない、大きなプレートの上に申し訳程度に二辺の隅を折られたクレープが広がり、その上にゴロゴロと新鮮な野菜やモッツァレラチーズ、玉子などが載っている。
まさにフォークとナイフで食べるクレープだ。
クレープメニューは沢山あり、ざっくりと具はピザみたいなものだ。
でも、勿論甘いクレープメニューもある。
「尊さん……」
「皆まで言うな。両方喰え」
「アイアイサー!」
返事をした私は、まず三種類のスモークハムと玉子、チーズのクレープを食べ、そのあとにレモンとお砂糖のシンプルなクレープを食べる事にした。
「本場のパリでも、しょっぱいのを食べてから甘いのを食べて、お供にはシードルってお作法があるからね」
「ホントですか? 素敵なお作法!」
涼さんの言葉に目を輝かせると、恵が「真に受けないの」と突っ込む。
「いつかパリでも本場のクレープ食べたいな」
そう言いつつメニューを捲り、飲み物はレモネードにした。
こちらは何を頼んでもサイズが大きいので嬉しい。
話しながら待っていると、お待ちかねのしょっぱいクレープがやってきた。
「いただきまーす!」