コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
すると距離が少し近くなった時に樹から声をかけてきた。
「お疲れさま」
「お疲れ様です」
とりあえずお互い何気ない挨拶を交わす。
だけどここにいる樹と私以外の2人もこの関係を知っている。
「どう?プロジェクトは順調にいってる?」
「あっ、はい。そうだ・・。隣のこの北見さんこれからプロジェクトに参加してもらうことになって」
誤解されないようすぐに樹に北見さんを説明する。
「あっ。早瀬さんですよね?」
「はい」
「はじめまして。今度早瀬さんの代わりにプロジェクトでサポートで参加させてもらいます大阪支社から来た北見涼です」
「オレの代わりに・・?」
「ええ。あっ、そういえば、オレ達はじめまして、ではないですよね、早瀬さん」
北見さん、なんか少し棘ある言い方・・・。
「ですよね。覚えてますよ、もちろん」
うわ・・絶対あの時のことじゃん・・。
まぁあれがきっかけで樹とも今みたいになれたんだけどさ・・・。
でも、なんかこの雰囲気、あんまよろしくない雰囲気よね・・。
「オレの代わりに、すいません。わさわざ大阪支社から」
「いえいえ。オレの経験がこのプロジェクトにお役に立てるなら喜んで」
そっか。北見さん来ること樹は知らなかったんだ・・・。
なら樹も嫌だろうな。
自分が抜けたところに、まさか北見さんが入ることになるなんて・・・。
「すいません。これからいろいろとよろしくお願いします」
でも樹は動揺することなく北見さんにお願いする。
「ええ。任せて下さい」
大人なやり取りだけど、なんだか気まずい・・・。
「もう今日は終わり?」
「はい。今から帰ろうかと」
今度はこちらに声を掛けて来た樹に返事。
「今から二人でメシ行こうって話してて、これからのことじっくり語り合ってきます」
すると、北見さんがそんなことをわざわざ樹に伝える。
ちょっ!! 樹の前でなんて余計な事を!!
絶対わざとだ、この人・・・。
「そうですか。オレはまだ仕事残ってるんでこの辺で」
だけど、樹は特に動揺するワケでもなく冷静に北見さんへ対応する。
今は多分会社・・だからだよね?
もしこれがあの時みたいに美咲の店だったら、樹はどうしてた?
またあの時みたいに感情露わにしてくれた?
前みたいな反応が返って来ないことが、仕方のないことだとしても少し胸が痛む。
冷静に返事をしてそのまますれ違って会社へ戻る樹と、なんか取り残された気持ちになって佇む自分。
立場が変わってしまうと、こんな風に少しずつまたすれ違っていってしまうのだろうか。
前みたいに気持ちのすれ違いでもない、環境でのすれ違い。
きっとお互いの気持ちは変わってなんていないのに、今まで出来ていた当たり前のことも、自然に接していたことも、きっと出来なくなってしまう。
だけど、こんな風に寂しさを感じる分、例え前以上に距離が出来たとしても。
今の私はその分、樹が恋しくなるだけだ。