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第9話 選ばれる前提で、話さないでください
非公式の意見交換会は、
生徒会室ではなく――小会議室で行われた。
公ではない。
だが、軽くもない。
(……ちょうどいい舞台ですわ)
リリアーナが入室すると、
すでに数名が揃っていた。
アレクシス。
ルーク。
カイン。
そして、少し緊張した面持ちのエマ。
全員が一斉にこちらを見る。
(ええ、分かっていますとも)
(“主役は私”という空気、ですわよね)
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「集まってもらったのは」
口火を切ったのは、アレクシスだった。
「最近の学園内の空気について、
率直な意見を交わしたいと思ってね」
建前。
だが、視線は一度もリリアーナから外れない。
(まずは、殿下からですわね)
「君の周囲で、
無用な緊張が生まれている」
一拍。
「それを解消するために――
“誰が、どの立場で君と関わるのか”
整理した方がいい」
(……なるほど)
(“決めてあげる”おつもりですのね)
ルークが、静かに補足する。
「感情的な衝突を避けるためにも、
一定のルールは必要です」
カインは、何も言わない。
ただ、リリアーナを見ている。
(皆さん、よく話し合われたようで)
(ですが)
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「……少し、よろしいかしら」
リリアーナは、穏やかに手を挙げた。
その声だけで、
室内の空気が変わる。
「今のお話」
一人ずつ、視線を配る。
「私が、選ばれる前提で進んでいますわね」
沈黙。
エマが、はっと息を呑む。
「違いますか?」
誰も、即答できない。
「殿下」
リリアーナは、静かに続けた。
「整理するのは結構です。
ですが――」
言葉を、はっきりと置く。
「“誰が私に近いか”を決める権限は、
私以外にありません」
空気が、張りつめる。
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「条件を提示しますわ」
その一言で、
全員の意識が集中した。
「私と関わる方は、
以下を守ってください」
一つ、指を立てる。
「私の時間を、
事前に“確保”しないこと」
二つ目。
「他者を牽制する目的で、
私の名前を使わないこと」
三つ目。
「私が“今は答えない”と言った場合、
その理由を詮索しないこと」
沈黙。
(……強い)
誰かが、そう感じたのが分かった。
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「守れない方は」
リリアーナは、微笑んだ。
だが、その瞳は一切揺れていない。
「距離を取ります」
拒絶ではない。
罰でもない。
――選別だ。
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最初に口を開いたのは、ルークだった。
「合理的です」
眼鏡を押し上げる。
「条件として、明確で公平だ」
次に、カイン。
「……理解した」
短いが、迷いはない。
エマは、強く頷いた。
「私、全部守れます!」
(それは心配いりませんわ……)
そして最後に。
アレクシスが、ゆっくりと息を吐いた。
「……さすがだね」
苦笑。
「君は、
“守られる側”でいることを選ばなかった」
視線が、真っ直ぐ重なる。
「その条件――
私は、受け入れる」
(……今は、ですけれど)
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会は、静かに解散した。
誰も声を荒げず、
誰も勝ち負けを口にしない。
だが。
(主導権は、こちらですわ)
リリアーナは、確信していた。
部屋を出る直前、
カインが、低く言った。
「……言葉で線を引けるのは、
強さだ」
彼女は、ほんの少しだけ微笑んだ。
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その夜。
日記に、こう書き足す。
――条件は、提示しました。
――全員、了承しました。
だが。
(条件を破るのは、
いつも“悪意”とは限りません)
優しさ。
焦り。
善意。
それらは、
一番静かに線を越える。
(だからこそ――)
次に越える者を、
私は見逃さない。
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