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#前世
shima7a
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第103話 「受け継ぐもの」
2026年3月。
厳しい冬を越えた柳城高校。
グラウンドには春の日差しが戻っていた。
選手たちの動きは、秋とは別のチームのようだった。
力強いスイング。
素早い守備。
大きな声。
福間監督は静かに頷く。
「冬を越えましたね。」
啓介部長もグラウンドを見渡した。
「あの一年生も、すっかりたくましくなりました。」
「あとは実戦です。」
春季大会。
柳城高校は順調に勝ち進む。
準々決勝。
準決勝。
そして決勝。
福岡県大会を制し、九州大会への出場を決めた。
試合後。
部員たちは喜びを分かち合う。
しかし。
福間監督は円陣で静かに話し始めた。
「今日の優勝は忘れてください。」
選手たちが顔を上げる。
「皆さんが目指す場所は、ここではありません。」
「夏です。」
「そのために、一日一日を積み重ねましょう。」
部員たちは力強く返事をした。
その日の夕方。
職員室。
啓介は九州大会の資料を広げていた。
福間監督が隣に座る。
「監督。」
「はい。」
「県大会と九州大会では、何が一番違いますか。」
福間監督は少し考えて答えた。
「相手の力ではありません。」
「一球の重みです。」
「県大会では許された一つのミスが、九州大会では試合を決めます。」
啓介は静かにメモを取る。
「だから、普段の練習から一球を大切にするのです。」
数日後。
九州大会。
柳城高校は初戦を突破。
準々決勝も勝利した。
準決勝。
相手は熊本代表・城南学院高校。
試合は終盤まで0対0。
八回裏。
柳城は一死満塁の好機を迎える。
ベンチには緊張が走る。
打席には代打。
啓介は福間監督を見る。
福間監督は静かに言う。
「予定どおりです。」
迷いはなかった。
代打は初球を叩く。
打球は右中間を破る。
走者一掃の三塁打。
3対0。
柳城高校が勝利した。
試合後。
宿舎。
啓介が尋ねる。
「監督。」
「どうして迷わなかったんですか。」
福間監督は笑みを浮かべる。
「試合で迷うのは、準備不足です。」
「決断は、試合前に終わらせておくものです。」
啓介はその言葉を胸に刻む。
翌朝。
九州大会決勝。
柳城高校は惜しくも敗れ、準優勝。
部員たちは悔しそうに銀メダルを見つめた。
帰りのバス。
福間監督は部員たちへ話した。
「準優勝、おめでとう。」
「ですが。」
「夏はメダルをもらう大会ではありません。」
「優勝旗を持ち帰る大会です。」
その言葉に。
部員たちの表情が引き締まる。
窓の外には、新緑が広がっていた。
夏まで、あと三か月。
啓介部長二年目。
柳城高校は。
再び甲子園を目指し、歩み始めていた。
第103話 終
コメント
1件
第103話「受け継ぐ者」、読み終えました……! 福間監督の「試合で迷うのは準備不足」「決断は試合前に終わらせる」っていう言葉、すごく刺さりました。ああいう覚悟があるから選手も信じてついていけるんだろうな。 春の県大会制覇、九州大会準優勝。悔しさもあるけど、確かな一歩を踏み出した回だったと思います。夏に向けての静かな決意が伝わってきて、続きがすごく気になります🌙