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もうすでに拓の部屋は完成していて、私の部屋だけがすっからかんだった。
「早く荷物持ってきてよね!!!」
気が早い拓は、嬉しそうに料理を振る舞ってくれた。
3年間最初から最後までの思い出話をしていたら止まらなくなってこの日は泊まって行くことにした。
「お泊まりは初めてだね」
部活や勉強で忙しかった私たちは、こんなに長い時間一緒にいたのはこの日が初めてだったかもしれない。
修学旅行もお互いが試合に被って行けなくなって、2人で卒業旅行しようねって話もしていた。
「それは明日にしようか…」
プランを考えてくれて、部活の合間にバイトまでしてくれて、私には拓しかいないと実感した。
大好き…ありがとう。
LINEで毎日伝えていたことも、今日は隣で伝えられる。
静かに2人の時間を過ごし、初めての夜、初めてそういうこともした。
拓のことがますます好きになって仕方がなかった。
次の日、卒業旅行の横浜に向かった。
初めての夜の後で少し恥ずかしい朝だったけれど、拓はその時の感情をずっと私に伝えてきてより一層照れてしまった。
「外ではその話禁止!!」
距離が縮まった私たちはもう夫婦かのように歩いて、指輪を作ったり服を買ったりして過ごした。
ずっと、このまま…2人だけの時間を過ごしたい。
そんな思いも裏腹に、入学式後は忙しい日々が続いた。
料理の勉強に、保育の勉強…
一生懸命に毎日を生きた。
「今日はうちも泊まらせて〜」
樹里は週1泊まって3人で遊ぶという日々にここ2年間で慣れてしまったようで、同じ最寄駅に引っ越してくるらしい。
樹里と一緒に社会に出る、そう思ったら就職も苦じゃなかった。
新卒2年目になる頃、拓のJリーグチームに内定も決まった。
「すごいじゃん〜!!!」
ますます遠くなる拓に少し寂しさを覚えながら、まだ慣れない社会での生活に励んでいた。
どうにか支えないと…
私は必死だった。
栄養士の資格を取ったり、ストレッチを覚えたり…拓のために毎日頑張った。
保育園でも責任がある仕事を任されて、私も帰りが遅くなることが多かった日、自分の誕生日であることを忘れていた。
今日も疲れた…
家に帰ると、綺麗な装飾があった。
「結婚してください」
私が好きな桜のモチーフのケーキに、ピンクゴールドの指輪が置いてあった。
高校時代からの写真や思い出のものが並べられて、泣きながら頷いた。
その後は思い出に浸りながら、今後のことについて考えた。