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⚠︎注意⚠︎
・ 仏英
・ 過去回想有り(なんなら全体的に過去編)
・ 微流血表現有り
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イギリスは昔から俺の作った料理が好きだった。口では「まぁまぁだ」と言いながらも、何時も美味しそうに頬張りながら完食する。俺も、そんなイギリスを見るのは結構好きだった。
イギリスに初めて手作りの菓子をあげた時の事は、今でもよく覚えてる―――
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その日も何時もみたくイギリスで暇を潰そうと森へ入っていった。
「おーいイギリス〜!」
見慣れたくすんだ金髪が見えて、はしゃぐ子供みたいな声を上げながら駆け寄ろうとすると、イギリスは肩を大きく揺らした。かと思えば、こっちを振り向くと同時に弓で射てきた。
「っっっぶな!何すんのお前!?寛大なお兄さんでも流石にキレるよ!?」
頬スレスレを通り過ぎた矢に、心臓の鼓動が止まらなくなった。
確かにこいつは俺が来るとすぐに帰れ帰れと騒ぐが、殺されかける様なことをしていないのにこんな事をされては、幾ら懐の大きい俺も流石に頭に来て怒ると、イギリスは呆気に取られたような顔をしていた。
「え、あ、フランス…?」
どうやら近づいてきた人物が俺だと気付いていなかったらしい。警戒心が強くて、他者の気配に敏感なコイツにしては珍しい事をするものだから、何かあったのかと尋ねると、手に持っていた弓をキュッと握りながら俺に背中を向けてきた。
イギリスが体を向けた方を覗いてみると、其処には白い毛の一部を赤く染めながら息絶えている一羽の兎がいた。その兎は、イギリスが凄く大切にしていた兎だった。
(ああ…お友達が死んじゃって悲しんでるんだ)
俺の目の前だと言うのに何の躊躇いも無く目尻から涙をこぼすイギリスを見て、どうしてか胸が痛くなった。
「俺が来た時には、もっ…死んじゃってて…まもっ、守れなかった…」
「…仕方ないよ、自然界は弱肉強食なんだから」
泣きじゃくるイギリスの頭を優しく撫でてやれば、何時もは「頭を撫でていいなんて許可してない!」と文句を垂れながら生えてくる手も、その時ばかりは無かった。
どれだけ慰めの言葉をかけても、イギリスは泣き止んでくれなかった。お陰で、段々と俺もどうしたらいいのか分からなくなって、慰めの言葉も数を尽きてしまった。 ただ、そんな中自慢してやろうと持ってきていた菓子の存在を思い出した。
「ほら、俺のお菓子あげるから、泣き止んでよ」
懐から小袋に入った菓子を手渡すと、イギリスは少しの間、状況を理解できなかったのか固まっていた。理解出来たあとも、暫くは食べるのを躊躇っていた。大切な友達の亡骸を前に、歌詞を食べる気になんてサラサラならなかったのだろう。 でも、それと同じくらい哀しいという感情の沼から逃れたかったイギリスは、おもむろにその菓子を頬張った。
その時のイギリスの表情を、きっと俺は一生忘れない。
(イギリスにも、可愛いところってあるんだ…)
さっきまで零れていた涙が直ぐに止まって、美味しそうに頬張るものだから、思わず可愛いと思ってしまった。
それ以来、俺はイギリスに会いに行く時は必ず菓子を持って行くようになった。前までは俺の前に出てくるのを渋っていたあいつも、菓子を見せれば簡単に誘き寄せることが出来て凄く楽になったのを覚えてる。何より、何時も仏頂面だったイギリスの緩んだ顔が可愛く思えて仕方なくて、まるで推しに金を貢ぐ様に菓子を上げ続けた。
喧嘩した時は苛立ってあげないこともあったけど、その度に「今日は菓子ないのか…」ってションボリするから、いつもそれに負けて結局菓子をあげていた。
きっと俺とイギリスが不仲ながらも約1000年という年月を過ごせて来たのは、菓子が俺達を繋いでいてくれたからだと思っている。
そんな腐れ縁の国は、今も目の前で俺の作ったクッキーを美味しそうに頬張っている。
「…何だよ」
「いや、俺の作ったクッキーを美味しそうに食べる坊ちゃん、凄く可愛いなって」
口説くようにしてそういえば、イギリスは一瞬キョトンとしてから、茹でダコのように顔を真っ赤にする。
「その顔も、凄い可愛い」
そう言いながら、俺はイギリスの口の端についたクッキーの欠片を頬張った。
俺の恋人は、今日も可愛い―――
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コメント
13件
なんとも言えない幸福感…✨️ 言葉にあらわせないぐらい最高です!!
お菓子もきゅもきゅ頬張ってるアーサーが想像出来てしまって、私は悶えているというのに!!追い打ちをかけるように恋人関係!?今も昔も変わらないアーサーだけど、その中の腐れ縁から更に昇格しているなんて、、美味しいに決まっているじゃあないですか!!
抱く感情が甘々なのがすごく尊い…お菓子で釣れちゃうアーサーも可愛すぎる…ギスギスなのに甘々なのが尊いなぁ… すごく自己解釈ですが息絶えちゃったうさぎが今アーサーの近くでお友達として妖精さんになってたら良いなぁ、