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「郁斗……さん?」

突然の事で一瞬何が起こったのか分からなかったらしい詩歌は少しだけ戸惑いを感じている。

「……詩歌ちゃん、そろそろ、いいかな?」

郁斗の言葉で何かを察した詩歌の鼓動は急激に速まっていく。

二人はまだ、キス止まり。

それ以上先に進みたいと思った事は何度かあったけれど、タイミングを逃していた。

その一つとして、詩歌は黛に無理矢理された時の心の傷が未だ残っていた事。

それを分かっていた郁斗は決して無理強いをし無かったし、詩歌が大丈夫だと思える日まで待とうとさえ思っていた。

でも、詩歌の思いは少し違っていて、郁斗にならば触れられても構わないという考えだった。

けれど自分からしたい、して欲しいと言う勇気はなく、二人の想いはすれ違い、なかなか先に進めないままだった。

そんな二人は今、次のステップへと進もうとしている。

「……嫌だったらしない。無理強いは、したくないんだ…………けど、俺は詩歌ちゃんを、抱きたいと思ってる」

「郁斗さん…………私……、私も、して欲しい……。郁斗さんになら、触れられても構わないんです。だけど、私の身体は…………綺麗じゃ、ないから……」

郁斗に抱かれたいと思っている詩歌だけど、いざとなると、怖いのだ。

黛に汚された身体を、郁斗に見せる事が。

触れて、気持ちが昂った時、ふと他の男が触れた身体なんて汚いと思い嫌われてしまうのでは無いかと、どうしても悪い方へ考えてしまい不安でたまらなくなるのだ。

そんな彼女の気持ちを痛い程感じた郁斗は優しく頭を撫でながら唇にキスを落とすと、

「――詩歌ちゃんは、綺麗だよ。大丈夫、嫌な事は全部忘れさせてあげる。俺でいっぱいにするから、余計な事は考えないで、全てを委ねて欲しい」

安心させるように優しく問い掛ける。

「郁斗さん……っ、私の頭の中にある嫌な記憶を全て、消して下さい……私は、郁斗さんだけを、感じていたいんです……!」

詩歌は郁斗ならば大丈夫だと思えたようで、彼に全てを委ねる決意を固め、求めるように手を伸ばした。

それが、合図だった。

もう一度キスを落とした郁斗はそのまま唇から首筋、鎖骨と口付けていく。

そして、前開きでワンピースタイプのパジャマを着ていた詩歌はあっという間にボタンを外されて素肌と下着が見えてしまう。

「……っ」

まじまじと見つめられ、恥ずかしくなってしまった詩歌が隠そうとするも、

「ダーメ、もっとよく見せてよ」

腕を掴まれ、意地の悪い笑みを浮かべた郁斗に動きを封じられてしまう。

「……は、恥ずかしいから、見ないで……」

動けない彼女が恥ずかしがりながら訴えかけるも、

「それは出来ないよ。俺に全てを委ねてくれるって言ったでしょ? 大丈夫、すぐ慣れるよ――」

「――ッん!」

郁斗は聞く耳を持たず、これ以上喋る事が出来ないよう、今度は少し荒々しく唇を塞いだ。

「……ッん、はぁ……、ん……っ」

何度も唇を塞がれた詩歌が酸素を求めて口を開きかけると、そこから郁斗の舌が割入れられ、彼女の舌を軽く舐める。

「……ッ!」

何度か舐められてそのまま舌が絡め取られると、より深く互いを求め合う。

「……ッはぁ、……ん……、ふぁ……」

キスをしながら郁斗の手は詩歌の胸に触れる。

下着の上から指でなぞられてピクリと身体が反応する彼女を見て、言い表せない感情が押し寄せて来た郁斗はブラジャーを捲し上げて直に触る。

「んッ、ふ……ッぁ、んん……」

先程よりも刺激が強くなり、与えられる刺激から逃れようと詩歌は身を捩るけれど、それは逆に郁斗を煽るだけの動作で、自身の唇を詩歌の柔らかい唇から離した彼は胸の頂へと移動させて、今度はそこへ舌を這わせていく。

「――ぁッ、やぁ……、ん」

指で触られた時よりも強い刺激が与えられた詩歌は思わず声を大きな上げ、自身の嬌声に恥ずかしさを感じた彼女の頬は更に紅く染まり、もっと熱を帯びていく。

そして、恥ずかしがる詩歌をよそに郁斗の指は彼女の下腹部へと移動していき、下着越しに湿っているそこへ指を当てると、ゆっくり刺激を与え始めた。

「……ッあぁ、やっ、そこ、だめ……っ」

胸を刺激した時よりも更に反応を示して恥ずかしがる詩歌を目の当たりにした郁斗は自身の身体がゾクリと震える感覚を覚え、

「駄目じゃなくて、良いの間違いでしょ? こんなに濡らして…………詩歌ちゃん、すごく感じてるじゃん」

「……!!」

「ここも、ほら」

「ッや! だめっ」

「そういう反応、可愛い」

「……やぁ、いわない、で……っ」

恥ずかしさでどうにかなりそうな詩歌は瞳を潤ませながら郁斗に懇願するも、

「――もっと、乱れさせたい」

理性を失い、自身の欲を抑えきれなくなった彼は詩歌こ下着に手をかけ、一気に下げて脱がすと、それを床に投げ捨て、自分も服を脱いでいく。

再び唇を重ね合わせ、詩歌の身体の力が抜けていくのを感じた郁斗は指で身体の至るところを刺激し、余すところなく彼女の身体を堪能する。

そして、

感情の昂りが最高潮に達した二人は――奥深くまで繋がり合い、やっとの思いで結ばれた。

「――詩歌ちゃん、愛してる……」

「……私も、愛してます……」

身体も心も、深く、深く、繋がり合い、何度も愛を確かめ合った二人は、人生で一番幸せな時間を過ごせた気がした。

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