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「うーん」
クラウディアはフカフカのベッドからゆっくりと起きた。フカフカと言っても、古くなったシーツに薄い布団。でも、それだけでもクラウディアは大満足だった。なぜなら、彼女の両親は2年前に亡くなり、今は彼女1人で暮らしているのだから。貧乏な暮らしでも、クラウディアは十分な生活を送っていると思った。
クラウディアはベッドから飛び降り、急いで着替えた。決して貴族たちが着るような美しく飾られたドレスではなかったが、可愛らしい刺繍があちこちに入っていた。クラウディアは着替えを済ましたら、小さな家のボロボロの階段を駆け降り、キッチンに向かった。カップボードには瓶詰めのイチゴやブルーベリーが沢山並んでいた。その中からクラウディアはラズベリージャムの瓶詰めを取り出した。そして、美味しそうな香りがするホカホカのパンに、甘〜い香りのするラズベリージャムを塗った。彼女は満足そうにそれをパリパリと食べた。その時扉をトントンと叩く音がした。
「誰かきたのかしら?」
クラウディアは玄関に向かい、扉をギシッと開けた。そこには、クラウディアの親友、ララがいた。ララは白い歯をニッと見せ、
「ヤッホー、クラウディア!暇だったから遊びに来た!」
と、大声で言った。その声にクラウディアは驚きながらも、クスクスと笑い、
「ララ、朝からそんな声を出して、どうしちゃったの?ここは森の近くで殆ど周りに誰も住んでいないけれど、私はあなたの喉が心配よ。」
と、ララの事を心配した。この通り、クラウディアは優しい子なのだ。自分のことよりも他人のことを気にする子にそだてられてきた。でも、その両親が死んでしまった。それでもクラウディアは優しさを忘れない、とても強い子でもあるのだ。
クラウディアはララを家にいれた。ララは花を大きくし、
「わぁ、ラズベリーのいいにおいがする!ねぇ、クラウディア、私にも少し分けて!」
と、目を子犬のようにさせて言うのだ。クラウディアは微笑を浮かべた。
「仕方ないわね。いいわよ。」
クラウディアはキッチンへ向かい、カップボードからラズベリージャムの瓶を1つ取り出した。ララはそれを受け取り口角を吊り上げ、
「ありがとう!大切に使うね!」
と、クラウディアにお礼を言った。クラウディアはそんなララを見て思い出した事があった。それは、近くの森にある、不思議な実を採りに行く事だった。その実は食べると不思議な力が湧き出てきて、どんなことでもできるようになるという実だった。クラウディアはそれで新しいジャムを作る予定だった。クラウディアはララの手をとり、
「ごめんなさい、ララ!私、不思議の実を採りにいく予定があったの!だから、また後でね」
と、家を飛び出していった。ララは戸惑ったようにしていたけれど、納得してクラウディアの家を出て行った。
その頃、クラウディアは森についていて、肩で息をしていた。一生懸命に走っていたからとても疲れていたのだ。
「森の空気は気持ちいいわね。今日も兎さんと狐さん、それにリスさんもいるかしら?」
クラウディアは動物を大切にし、大切にされるような子でもあった。いつもベリーを採りに来ているため、森にいる動物たちにも好かれるようになっていたのだ。
クラウディアはあちこちにあるベリーの茂みからベリーを採り、ニコニコしていた。その時、彼女は背後に気配を感じた。生きているのか生きていないのかよく分からないような生態系だ。彼女は震えながらも後ろを振り向きたくて仕方がなかった。でも、誰かが頭の中で囁くのだ。
「クラウディア、行ってはだめ。振り向いてはだめ。あれは貴方に殺気を持っている。だから絶対に振り向いてはだめ。」
クラウディアはその声に従おうとした。でも体が言う事を聞かない。そして、遂に、クラウディアは振り向いてしまった。後ろにいたのは、花びらから茎まで深紅に染まった花。狂花だった。でも、クラウディアは狂花の事を知らない。だから、狂花が恐ろしいものと理解していなかった。もう遅い。彼女は乗っ取られてしまった。**狂花に。**狂花は巨大化し、彼女の胴体を引きちぎった。クラウディアの血が辺り一面に広がる。次に、腕と足をもぎ取った。まさにその名前にピッタリな動作だ。狂っている。
そばにいた動物たちは恐怖で震えている。そして、一番最初に動いたのが兎だった。必死に逃げ、自分の巣に戻った。その反応を見て、他の動物たちも逃げ出した。狂花はまるで笑うように、体を揺らした。その花は更に赤く、染まっていったのだ、勿論血の色に。