それから、5日が過ぎた。
今日は私が休みで、朋也さんは夕方に会社に行く用事があるだけだった。
一緒に住み始めて、朝と夜以外の、初めての二人だけの時間。
どうしよう…なんだかちょっと気まずいかも。
夕方までずっと部屋に2人きりはさすがに…
そわそわしてたら、朋也さんが言ってくれたの。
『恭香。一緒にどっか出かけるか?』
うわ、どうしよう…
『どこに…ですか?』
『恭香が行きたいとこ…って、どこ?』
朋也さんが、コーヒーを飲みながら言った。
『行きたいとこ…水族館…ですかね』
子どもの頃から大好きな場所。
最近、行く機会もなくて…
久しぶりに行ってみたいかなって思った。
『着替えたら、出かける』
嘘、本当に水族館に行けるの?
すごく嬉しい…
こんなワクワクした気持ち、子どもみたいかな。
私は、なるべく朋也さんを待たせないように急いで支度した。
『お待たせしてすみません』
『行こう。カメラも持って行く』
水族館の写真撮るんだ…
すごい…プロの朋也さんの写真、きっと素敵だろうな…
見てみたい…
私達は、電車で一番近くの水族館に向かった。
有名な水族館で、土日なんかは混雑してる。
でも、今日は平日だし、少しはゆっくり見れるだろう。
到着してすぐに朋也さんが私を呼んだ。
『恭香』
振り向くとシャッターが切れる音がした。
『嘘、今、写真撮ったでしょ?』
思わずタメ口になる。
朋也さん、クスッて笑ってる。
『私が写真撮られるの嫌いって知ってますよね?』
『そうだった?』
とぼける気だ。
『本当に止めて下さいね。早く入りましょ』
もう本当に恥ずかしい。
朋也さんはチケットを2枚買ってくれ、私達は水族館の中に入った。
目の前にある大水槽の魚達が2人を出迎えてくれてる…
ブルーのキラキラした幻想的な光景に、自然にため息がもれた。
『綺麗過ぎて、本当に素敵』
『本当だな…すごく綺麗だ…』
そう言って、カメラを構えた。
フラッシュをたかないようにして、シャッターを切る朋也さん。
その姿もやっぱり様になる。
私はその横で、水槽に近づいてマジマジと魚を見た。
遠くから見るのとは、また違う目線で魚達を見れるから楽しい。
可愛い目をしてるとか…
ちょっと怖い顔とか。
1匹で悠然と泳ぐ魚がいれば、群れで泳ぐ魚もいる。
いろいろな習性がわかってとても面白いんだ。
子どもの頃、魚の世界に魅せられて、ずっと水槽の前から動けなかったのを思い出した。
なかなか帰らない私に、両親はいつまでも付き合ってくれたな…
私達は、時間をかけて隅々までゆっくりと見て回り、時々写真を撮りながら水族館を満喫した。
『恭香、お腹空いた』
『私もです。何食べますか?』
『いいよ』
『え?いいよって…?』
『さっきみたいに…タメ口でいい。ずっと一緒にいるんだ、もうタメ口でいいだろ』
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