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そう言いながら、朋也さんは少し恥ずかしそうにしていた。
だったら……あんまりいじめちゃダメだよね。
「わかりました。じゃあ、今からタメ口にします。と、とりあえずレストランに向かいましょう」
タメ口宣言をするなんて、変だとは思う。
だけれど、なぜか、自然と言えた。
私の宣言にうなづく朋也さんが可愛く思える。
今日はデニムのストレートジーンズ姿。
足が細くて長い。
白いTシャツの上に黒いジャケット。
シンプルなのに、こうもカッコ良く着こなせるのがすごい。
言うまでもなく、周りの人達はみんな朋也さんを見て驚いている。
2度見したり、通り過ぎても、また振り返って見たり。
180度どこから見てもカッコ良いから、つい見たくなる気持ちはよくわかる。
男性でも朋也さんを見てる人がたくさんいる。
きっと、同性からも魅力的に見えるんだろう。
憧れの眼差しなのかも知れない。
たまに私を見ている人は、なんであんなのがイケメンの横にいるんだ……と思っているのだろう。
最初はいちいち気にしていたけれど、もう慣れてしまった。
私も、きっとこんなに素敵な人が歩いていたら、間違いなく振り向いていただろう。
そして、隣にいる女性を見ていろいろ思ってしまうかも知れない。
お似合いだとか、そうじゃないとか……
本人達にすれば余計なお世話なんだろうけれど、とかく周りはいろいろ言いたがるものだ。
特に朋也さんは、本物の超イケメンなのだから、最初から釣り合わないのはわかっている。
だから、この状況は仕方がないこと。
私が周りからの視線に早く慣れるしかない。
「この魚ネーミングが変わってるよな」
レストランに向かう途中、ある水槽の前で朋也さんは立ち止まった。
私は、ここぞとばかりに、タメ口に挑戦することにした。
「ほ、ほんとに。私、この魚、とっても……す、好き」
「……そ、そうなんだ」
「うん。ちっちゃいのに頑張って泳いでるとことか、何かかわいいなって……昔からそう思ってた」
私にしてはよく頑張ったと思う。
ちょっとぎこちないけれど、うまくタメ口で話せた。
「確かにこいつらめっちゃ頑張ってるな。俺達も、しっかり頑張らないとな」
朋也さんが動く度に、揺れる前髪から覗く綺麗な瞳がとても色っぽい。
カッコ良い大人で、色気もあって……
おまけに優しさもあって……
こんな人がどうして、今、私の隣にいるのだろう?
この状況は世界七不思議に入る。
でも……決してうぬぼれてはいけない。
私は彼女でなないのだから。
それが、少し事態を複雑にしている。
「あっ、あそこ。レストランがあるよ。な、何……食べる? 朋也さん」
「カレーかな。……やっぱりいいな、こういうの」
「えっ?」
朋也さんが腰を曲げて、私の顔を覗き込んだ。
顔同士が、くっつきそうなくらいに。
頼むから止めてほしい。
周りの目があるし、何より照れくさい。
慣れていなくてどう反応すればいいのか難しい。
「やっぱ可愛い」
「えっ、えっ?」
突然何を言い出すのだろう。
「本当だ。恭香は……可愛い」
「や、やだっ、からかわないで」
ちゃんと告白もされていない人に、そんな風に言われても困る。
嬉しいけれど、どう受け取ったらいいのか本当に頭が混乱する。
「亮も言ってただろ、恭香の笑顔が素敵だって」
「ああ……うん。でも、お世辞だよ。だって、彼は今をときめくアイドルグループのメンバーなんだし、そんな人が私のことを本気で褒めるわけないし」
梨花ちゃんにだって、はっきりそう言われた。
「亮は、お世辞を言うようなタイプじゃない」
「朋也さん、どうしてそんなことわかるの? しかも、亮君のこと呼び捨て……?」
「亮のことは、弟みたいに可愛がっている」
「えっ……どういうこと? もしかして知り合いなの?」
「ああ、そうだ。ふとしたことで、シンプル4に関わって、デビューする時に父さんがサポートしたんだ。そこからの付き合い。俺もずっと彼らを応援してる」
「そうなんだ。知らなかった……びっくり」
「特に言ってなかっただけだ。亮には家族がいない。だから……俺もお父さんも、なんかいろいろ心配で」
亮君、家族がいないんだ……
そんな亮君を弟みたいに思っている朋也さんは、とても優しい人だ。
「亮君、シンプル4のみんなで成功して本当に良かったね。みんなすごく良い子だし、これからもますます人気が出ると思う」
「あぁ。そうなると信じている。デビュー当時から、あいつらは本当に努力してた。人気が出るまで意外と早かったけど、みんな真面目で一生懸命で、ダンスも、歌も、お芝居も、ものすごく頑張ってきたんだ。そんな姿を見てきたから、俺もお父さんもシンプル4のメンバーをとても応援しているんだ。まぁ、特に亮は俺になついていたから……家族みたいに思ってる」