テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
胸にあてた手から、シュメリの魂を感じる。
背中の傷も深いけど、魂の傷はもっと深い。
(もっと、もっと、魔力を送らなくちゃ)
シュメリの魂が、光を落としていく。
焦る気持ちを押し殺して、僕はシュメリに魔力を繰り続けた。
(背中の傷のせいで、余計に治りが悪いんだ)
屍狼に切り裂かれた背中には、痛々しい大きな傷がついている。
出血も止まらない。
(お願いだよ。治って!)
シュメリが、ふわりと目を開けた。
「シュメリ!」
その唇が、何かの言葉を紡ごうとしている。
唇が震えるばかりで、声が聴こえない。
「シュメリ、喋らないで。僕が今、治すから」
「……愛してるよ、リンネ」
シュメリの口端が、薄らと笑んだ。
血に濡れたシュメリの手が、僕の頬をなぞる。
そのまま、力なく地面に落ちた。
「……え?」
シュメリの呼吸が弱すぎて、感じられない。
全然、動かない。
身体が、熱を落としていく。
「やだ……いやだ!」
僕は大声で叫んだ。
胸に手をあてて、ありったけの魔力を送り込む。
(いなくならないで、置いて行かないで)
失いたくないんだ。
シュメリじゃなきゃ嫌だ。
シュメリと一緒に、これからを生きたい。
(シュメリもきっと、こんな気持ちだったんだ)
僕を失いたくないと言った。
あの時のシュメリの怖さを、こんな場所で思い知るなんて。
(自分の気持ち、こんな風に知るなんて)
「そんなの、絶対に嫌だ」
シュメリの顎を上げて、唇を重ねた。
口移しに濃い魔力を流し込む。
(僕の魔力、枯れてもいい。全部使っていいから、シュメリを治したい)
好きだよ、シュメリ。
今なら、シュメリと同じ好きを届けられる。
僕が欲しいのはシュメリだって言える。
魔力にありったけの気持ちを込めて、全部をシュメリの中に注ぎ込んだ。
「……ん、ぁ」
シュメリが小さく息を吹き返した。
ピクリと、指が動いた。
「シュメリ!」
僕はもう一度、シュメリに口付けた。
もっともっと魔力を流し込んだ。
「ぁ……リン、ネ」
シュメリの呼吸が細く戻った。
「良かった。もっと……」
「ダメ、だ」
シュメリが、僕の胸を手で押した。
その力すら、弱々しい。
「これ以上は、リンネが、死んでしまう」
「僕は死なない。だって、失いたくないから」
どちらかが欠けるのは、どっちも失うってことだ。
そんな悲しみは、僕らの間にいらない。
僕はシュメリの唇をなぞった。
「僕、ちゃんとわかったよ。だから、一緒に帰ろう」
シュメリに顔を近付ける。
「愛してる、シュメリ」
シュメリが、ほんの少しだけ、目を見開いた。
シュメリのに唇に、キスをする。
そのまま魔力を流し込んだ。
「リン、ネ……」
シュメリの声を唇を塞いで飲み込んだ。
(胸が、熱い。何かが開いている)
高揚した熱が、体中に広がる。
魔花が開いているのだと、何となく思った。
さっきより魔力が溢れて、たくさんシュメリに送れるから。
僕の腕を掴むシュメリの力が、さっきより強くなった。
シュメリの肌に熱が戻ってくる。
背中の傷の出血が止まったみたいだ。
「はぁ、はぁ……」
シュメリの息が深くなった。
「参ったな。こんなに熱烈なキスをもらったら、どうお返しをするか、悩むね」
シュメリが僕を見上げて笑った。
その目に力が戻っている。
「これからは僕がシュメリにいっぱいキスする」
僕はシュメリに抱き付いた。
互いの胸を合わせて、魔力を流し込む。
「ねぇ、感じる?」
「魔花が、咲いたね」
「シュメリの魂の傷が治ったの、わかるよ」
屍狼に切り裂かれたシュメリの魂が、元に戻った。
もうシュメリを失わずに済む。
自分でも驚くくらい、安心した。
「リンネ、ありがとう。全部、リンネのお陰だ」
シュメリが僕の髪を撫でてくれる。
この指が、一番好きだ。
「シュメリがいなきゃ、僕は頑張れなかったよ。全部、シュメリのお陰」
「情けない姿を見せたのに?」
「情けなくない。格好良かった。大好きだって、思ったんだ」
僕は顔を上げた。
シュメリの指が、僕の唇をなぞる。
互いにゆっくりと、顔が近付いた。
僕たちは、魔力を流さないキスをした。
「一緒に帰ろう、リンネ」
「うん、シュメリと一緒が良い」
好きになった人が、シュメリで良かった。
これからはもう、迷わない。
シュメリの胸に寄り添って、思う。
遠くから大勢の人の足音がした。
騎士団と魔術師団が到着したんだ。
安心したら、眠くなってきた。
僕はシュメリの胸で、ゆっくりと目を閉じた。
お股ポテト
29
はるにし
72
コメント
1件
みぅです🤍🥀 やっと、やっとだね…! シュメリの「愛してるよ、リンネ」で心臓がぎゅってなったよ。リンネが「失いたくない」って気持ちを自覚して、全部の魔力を注いでシュメリを救ったところ、本当に胸が熱くなった。魔花が開くシーン、すごく綺麗で切なかった。もう迷わない二人が、本当に尊いよ…。大好きです、このお話🌙