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優しい檻の中

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優しい檻の中

1 - 優しいヒト

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2025年07月28日

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湊 視点

「……課題、終わる気しねぇ……」


大学2年の春学期。ゼミにサークルにバイトに、詰め込んだスケジュールに俺はすでに瀕死。

図書館で3時間粘って、やっと半分片付いたレポートを見て、思わず机に突っ伏した。


そんなとき――


「お疲れ。湊くん、これ飲む?」


差し出された缶コーヒー。

声の主は、ゼミの先輩、一ノ瀬悠真だった。


「えっ、あ、ありがとうございます……!」


「無理しないでね。睡眠はちゃんと取らないと」


笑いながら座る悠真先輩は、相変わらず爽やかでやさしくて、まるで“正解の人間”って感じだった。


(いい人だよな……)


そう思いながら、俺は素直に缶を受け取った。


悠真  視点


今日も湊は、他人に無防備だった。


疲れているのに、差し出された課題に「ありがとう」って笑って応じて。

自分がどれだけ誰かにとって“価値がある存在”なのか、まるで自覚していない。


(――だから、怖いんだよ)


どこかの誰かに、盗られそうで。


笑顔も、声も、疲れてる表情すら、俺だけが知っていたい。


俺は湊のすぐそばで缶コーヒーを握ったまま、ほんの一瞬だけ、その手元を見た。


(……パスコード、4桁か)


スマホの指の動きを盗み見ながら、思考は冷静に走る。


“準備”は、少しずつ進めればいい。


湊視点:講義とサークルの昼休み

「湊~! 今日の昼、どうする?」


同じ学科の友達に声をかけられて、笑って手を振る。


「コンビニでパン買った~」


「また!? 菓子パンばっか食ってると太るぞ!」


「先輩に言われた! ちゃんと食えって!」


他愛のないやりとり。でも、こんな日常が俺は好きだった。


——だった、のに。


最近、何かが“変わり始めていた”。


連絡がつかない友達。

目を逸らすサークルの先輩。

知らないうちに、俺の噂が回ってるような、空気。


でも、悠真先輩だけは――


「湊くん、今日も元気そうでよかった」


変わらず、優しかった。



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