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めでたく有香子と詠史が無事に引っ越してきたときには嬉しくて気が遠くなりそうになった。
引っ越しも勿論手伝った。
友人である長谷川祐の所有するマンションはひどくいい部屋で。仮に、自分の一軒家に引っ越して来たらがっかりするんじゃないか。そんなことが心配になった。
けども。杞憂だった。
バレンタインの日に、とっておきのプレゼントを貰った。――無事に、有香子と詠史が、広岡の住む宅に引っ越してきたのだ。
一旦広岡宅の家具はそのままに。後で不要なものは処分したり、元々有香子が所有していた家具を持ち込むかは、実際住んでみて検討することになった。
詠史に関しては、二度も苗字を変えさせるのはかわいそうだなということで。広岡が橘の姓を名乗ることに決めている。
引っ越してきてからも、彼らはくつろいだ様子で、広岡のこころは和んだ。ひとりで暮らすのは気楽だったが、有香子と詠史がやってきたときに、ああ、自分が欲しかったのはこれなんだと悟った。
同世代の人間がごくごく自然に家族を築いていく。自分だけが取り残されたようで、ほんのすこし、寂しかった。
写真付きの年賀状を好ましく思えるときもあれば。激しく嫉妬する……そんな夜もあった。
だが、もう、ひとりではない。守るべき者がいる。愛すべき存在がいる。
広岡も有香子も健康のために、毎日運動することを日課としている。……お風呂に一緒に入ったりしてみたかったが、詠史が一緒に暮らしている以上は我慢だと思った。
すると、ある日。茶渡みどり夫婦が、詠史を一日預かってくれるという。おそらく、なかなか進展しない二人の関係を察してのことだろう。
家にふたりきりになったときに。最初はどきどきしたが……有香子のほうから抱き着いてきて、むさぼるようなキスをしてきた。
それだけで、脳髄がとろけそうになる。
もつれあうようにベッドに倒れ込み、互いを求め合う。……もう、気持ちに蓋をするのはごめんだ。これまで散々我慢してきたのだ。自分の欲に。愛情に、素直になろうではないか。
広岡の均整の取れた肉体に組み敷かれる有香子の恍惚を眺めながら、広岡は、意識が飛びそうなほどの快楽を感じていた。
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