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「…あ、そうだ。一つ、貴方に用事があるのだけれど。」
「僕に…?一体何の用でしょうか。」
いきなりそう言った私にびっくりしたのだろうか。目を丸くして、困惑した様にそう声を出させてしまった。
「…あぁ。用事があるって言っても、それは私の事じゃないわよ。さっき頼まれ事をされてね、その相手が貴方だっただけだから。」
そこまでを言い終えてくるりと背を向け、メモ用紙に2つの住所を書くと、再び向き直ってそれを渡す。
「はい。そこに書いてある住所に行けば用事があるって言った相手がいるから。」
「…分かりました。時間が空いたら向かいますね。」
紙を受け取り、相手はちらりとその書かれた住所を見ると、驚いた様に私に聞き返してきた。
「…ほんとに、この住所であってるんですか?片方…いや、両方とんでもない所なんですけど…。」
いざ実際にそう言われると、何だか本当に間違ってる気がして不安になってしまい、一度椅子から立って紙に書いた住所を見てみる。
「…ちゃんと合ってるわよ。ま、場所が場所だからその反応になるのも無理は無いと思うけどね。」
相手は私の返答を聞き、余計に驚いてしまった。それはそうだろう。いきなり用事があると言われ、その場所が警察署か有名な屋敷だった。なんて、よっぽどの事がない限りは誰しもが驚く内容だ。
「二人共、一体何が…?」
私達の反応を見て何があったのか気になったのか、しよりちゃんが隣からちらっと紙を覗いた。
「…確かにこれは、何というか…。」
数秒の静止の後、若干引き気味になりながらもそう何とか声を絞り出した様に呟く。
だよね、やっぱりそうなるよね。でも、あくまで私は仲介人。何かを言われても伝える事しか出来ない立場なのだ。…今は。
「…ほんとに帰れるの?」
「大丈夫ですよ、もう大分回復はしてるので。」
先程から、こんな押し問答を続けている二人。水篶さんの不安にになる気持ちは分かるけど…そこまで引き止めてると、いつか変人扱いされそう。というかもうされてそう。
「水篶さん…。ほら、相手も迷惑していますよ。大丈夫って言っているんだから大丈夫でしょう。」
「…分かった。」
もの凄く嫌そうにしながらも、何とか承諾を貰えた。こういう所から年相応な面が見えるのかなぁ…。
「じゃ、気をつけてね〜!」
はぁ…と私に向けてか溜息を一つ零し、切り替えた様に笑いながら手を振って見送った。
…少し手を振ってからしれっと私も帰ったのは水篶さんには内緒…ですからね。